日本語の面白い語源・由来(お-③)大喜利・音楽・お開き・押っ取り刀・烏滸がましい

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笑点大喜利

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.大喜利(おおぎり)

大喜利」とは、寄席の最後に行われる余興で、謎かけ・三題噺・都々逸などの言葉遊びの余興です。

大喜利は、歌舞伎の「大切(おおぎり)」に由来します。
江戸時代の歌舞伎では一日一本立てで、それを二番に分けて、一番目の最終幕を「大詰(おおづめ)」、二番目の最終幕を「大切」と言いました

幕末以後には、前幕と関係ない独立した最後の一幕を「大切」というようになりましたが、いずれもその日の最終幕が「大切」で、縁起をかついで「大喜利」と当て字もされました

寄席では当て字された「大喜利」という言葉を取り入れ、トリの演目が終わった後に行われる余興の意味で使うようになりました。

寄席での大喜利は、歌や踊りなどもありましたが、日本テレビの『笑点』では、大喜利で行われる余興のうち、出題に対し、とんちの利いた答えをする言葉遊びに絞られたことから、とんち問答形式のものが「大喜利」と認識されるようになりました。

なお、歌舞伎に「中切(中喜利)」は存在しませんが、寄席では「中喜利」と呼ばれるものがあり、その日一日の演目のうち、中盤に演じられるもののことを指します。

これは、全出演者の最後(トリ)をいう「大トリ」や、その年最後の晦日を「大晦日」というように、「大」は「最後」の意味でも使われることから、最後の大喜利に対し、中盤なので「中喜利」としたものです。

2.音楽(おんがく)

音楽

音楽」とは、音による芸術で、音の高低・強弱・長短・音色・和音などを組み合わせて演奏します人声による「声楽」と、楽器による「器楽」に大別されます

音楽は、「音を楽しむ」や「楽しい音」の意味からではありません。
音楽の「」は歌声、「」は楽器の発する音を意味します。

古くから「音楽」の語は見られますが、現代でいう「音楽」に相当する語は「楽」でした。
その「楽」に対して「音楽」は、仏教の聖衆が謡い奏でる天上の楽や法会の舞楽の意味で用いられました。

今昔物語集』などの説話では、天上の楽や、それを模した法会の楽を「音楽」といい、世俗の楽(雅楽)を「管絃」といって区別しています。

現在のように、「音楽」が人に感銘を与える音の芸術を意味するようになったのは、明治10年代以降のことです。

3.お開き(おひらき)

お開き

お開き」とは、会合や宴会などを終わりにすることで、特に婚礼などの祝宴に用います。「閉会」「散会」のことです。

お開きは、会合や宴会、特に祝宴で「終わり」「散会(散る)」「閉会(閉じる)」という不吉な表現を避けるために用いられます

本来は、武士が「退却する」「退陣する」の意味で使った忌み言葉でした。
そこから、近世には「帰る」「去る」という意味が生じ、明治以降、「散会」「閉会」の意味で「お開き」が用いられるようになりました。

4.押っ取り刀/おっ取り刀/おっとり刀(おっとりがたな)

押っ取り刀

押っ取り刀」とは、緊急の場合に取るものも取らず大急ぎで駆けつけるさまのことです。

「おっとり」という音から、「のんびり」「ゆっくり」の意味に間違われることもありますが、「押っ取り刀で駆けつける」や「押っ取り刀で飛び出す」と用いるように、急いだ状態を表します。

押っ取りは、「急いで手に取る」「勢いよくつかみ取る」ことを意味する「押っ取る」の連用形です。

押っ(おっ)」は、「おっぱじめる」や「おったまげる」の「おっ」と同じ、動詞に付いて意味を強める「押し」の音変化です。

元々、おっとり刀は急な出来事で刀を腰に差す暇もなく、手に持ったままであることをいい、刀を使用しなくなった現代では、取るものも取らずに急いで駆けつける形容として用います。

5.烏滸がましい/痴がましい(おこがましい)

おこがましい

おこがましい」とは、身の程知らず、差し出がましいことです。

おこがましいは本来「をこがまし」で、「馬鹿げている」「馬鹿馬鹿しい」という意味が転じたものです。

現代の「おこがましい」のように、身の程知らずの意味で「をこがまし」が使われ始めたのは、近世以降です。

おこがましいの「おこ(をこ)」は、「馬鹿げていること」「愚かなさま」を意味する名詞として、かなり古くから使われているため語源は不明です。

「差し出」が「差し出がましい」、「未練」が「未練がましい」となるように、「をこ(おこ)」にシク活用形容詞を作る接尾語「がまし」が付いて、「をこがまし」となり、「おこがましい」となりました。

おこがましいの「おこ(をこ)」は、漢字で「痴」のほか、「烏滸」や「尾籠」とも表記されます。

烏滸」は、後漢時代の中国で黄河や楊子江に集まるやかましい人指していました
これは、やかましいことをカラスにたとえ、水際を意味する「滸」から「烏滸(おこ)」としたもので、意味が似ていたために用いられた漢字です。

「尾籠」は当て字で、鎌倉時代以降に多く使われ、それ以前は「嗚呼」が「をこ」として多く使われていました。

のちに、「尾籠」は音読され、「びろう」という和製漢語に変化しました。