日本語の面白い語源・由来(お-④)小倉餡・お家芸・驚く・赴く・覚える・噯にも出さない

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小倉餡

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.小倉餡/小倉あん(おぐらあん)

小倉餡発祥由来の立て札

小倉あん」とは、こしあんに蜜で甘く煮た大納言小豆など大粒の小豆を混ぜ合わせたもので、単に「小倉」とも言います。

小倉あんの「小倉」は、小倉百人一首ゆかりの地でもある、京都市右京区嵯峨の「小倉山」に由来すると言われます。

小倉あんの発祥は、809年に空海が中国から持ち帰った小豆の種を、小倉の里で亀の甲せんべいを作る和三郎が栽培し、御所から下賜された砂糖を加えて煮詰めたものであったそうです。

そのため、小倉山の二尊院には「小倉餡発祥之地」と記された石碑があり、その近くの落柿舎前にも「小倉餡発祥の由来」(上の写真)が掲げられています。

なお、歌枕として知られる奈良県の「小倉山」に由来し、鹿が多いことで知られるため、小豆の粒を鹿の背にある模様に見立てて「小倉あん」と名付けられたという説もあります

2.お家芸(おいえげい)

市川團十郎の勧進帳

お家芸」とは、最も得意とする事柄のことです。

古くは「お家の芸」と言っていたものが、略されて「お家芸」となりました。
お家芸は、能・狂言・歌舞伎・浄瑠璃などの伝統芸能で、宗家や家元の家に代々伝わる独自の芸のことで、歌舞伎でいえば市川家(成田屋)の『勧進帳』がそれにあたります。

現代では、代々伝えられた芸でなく、個人が得意とする独自の芸にも「あの人のお家芸だ」と使われるようになりました。

また、得意な「芸」を言った言葉ですが、ジャンルを問わず「得意とする事柄」を表すようになり、「柔道は日本のお家芸」のように「国」を「家」に見立てた使われ方もするようになりました。

「水泳ニッポン」とか「体操ニッポン」のようにスポーツでよく使われますが、かつて「日本のお家芸」と言われた「製造業」の衰退は寂しいことです。

これは「安価な労働力」を求めて安易に海外に工場移転をしたことが原因です。今や「経済安全保障」「サプライチェーンの確保」の意味からも、「製造業の日本回帰」が喫緊の課題だと私は思います。

3.驚く(おどろく)

驚く

驚く」とは、意外なことに出くわして衝撃を受ける、心の平静を失う、びっくりすることです。

驚くの語源には、諸説あります。

「怖(おぢ)」の転「おどろ」に「く」が付いて動詞化したとする説
「怖(おぢ)」の転「おど」に、動揺する意味の「ろく」が付いて「おどろく」になったとする説
「おどろ」は「どろどろ」や「ごろごろ」などの擬音で、刺激的な物音を感じる意味からとする説
音を聞いて騒ぐことからや、「音轟く(おとどろく)」の意味といった説

驚くの漢字は、「敬」と「馬」からなります。「敬」の原字は、「羊の角+かがんだ人」で、羊の角に触れないよう、はっとしてかがんだ人を表します。

この「敬」に「馬」の「驚」は、敏感な馬が緊張することを表しています。

4.赴く/趣く(おもむく)

赴く

赴く」とは、ある方向・場所へ向かって行くこと、物事・状態がある方向に向かうこと、気が進むことなどの意味があります。

おもむくは、「おも(面)」+「むく(向く)」で顔がその方向に向くという意味に由来します。

「赴」は「走」と「卜」からなる漢字で、「卜」には「急に伏せる」「急に倒れる」という意味があり、「赴」は伏せたり転びながら急いでかけつけることを表します。

「趣」の漢字は、「取」が「指を縮めて掴む」という意味で、「走」と「取」からなる「趣」は、時間を縮めてせわしなく行くことを表します。

5.覚える(おぼえる)

覚える

覚える」とは、記憶する、学んで知る、習得する、身につける、感じる、思われるなどの意味があります。

覚えるの古語は「おぼゆ」です。「おぼゆ」は、「おもふ(思ふ)」に自発・可能の助動詞「ゆ」が付いた「おもほゆ」が縮まった語で、本来は「自然とそのことが頭に浮かぶ」という意味で使われました。「恐怖を覚える」「眠気を覚える」などの用法がこれにあたります。

そこから、覚えるは「自ら積極的に思い浮かべる」という意味で用いられるようになり「記憶する」「習得する」といった意味を持つようになりました

6.噯にも出さない/おくびにも出さない(おくびにもださない)

おくびにも出さない

おくびにも出さない」とは、ある物事を深く隠し、まったく口に出さず、素振りも見せないことです。「おくびにも見せない」「おくびにも立てない」とも言います。

おくびにも出さないの「おくび」とは、胃の中にたまったガスが口から外に出る「げっぷ」のことです。

腹の中にあるものを「おくび(げっぷ)」としてさえも出さないように、心に秘めた事を口(言葉)に出さないことにたとえ、「おくびにも出さない」と言うようになりました

おくびは漢字で「噯」や「噯気」と書きますが、通常、「おくび」の部分はひらがな表記されます。