日本語の面白い語源・由来(も-①)モンブラン・もどかしい・モノレール・蛻の殻・股引・模造紙・もんじゃ焼き

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モンブラン

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.モンブラン(ケーキ)・モンブラン/Mont Blanc(山)

(1)ケーキ

モンブラン

モンブラン」とは、「茹でた栗のクリームを山形に絞り出して盛ったケーキ」です。

モンブランは、アルプス山脈の「モンブラン」に由来する名です。

モンブランの原型は、アルプス山脈に近い、フランスのサヴォワ地方やイタリアのピエモンテ州などで食べられていた家庭菓子といわれます。

この家庭菓子は、甘い栗のペーストに泡立てた生クリームを添えたもので、イタリアでは「モンテ・ビアンコ」と呼ばれていました。

モンテ・ビアンコはアルプス山脈の「モンブラン」のイタリア語名で、モンテ・ビアンコもモンブランも「白い山」を意味します。

細い麺状の栗のクリームを絞った現在のモンブラン(フランス語では「Mont Blanc aux marrons(モン・ブラン・オ・マロン)」)は、パリの老舗カフェ「アンジェリーナ」が提供したものが初です。

イタリアのモンテ・ビアンコを発展させたモンブランがこの店で考案されたのは、パティシエの妻がイタリア人だったことからといわれます。

(2)山

モンブラン

モンブラン」とは、「フランスとイタリアの国境に位置する、アルプス山脈の最高峰(標高4810メートル)」です。

モンブランは、フランス語「Mont Blanc」からの外来語です。
フランス語で「Mont」は「山」、「Blanc」は「白」を意味し、モンブランは「白い山」の意味に由来する名前です。

フランス語では「La Dame Blanche」というの異名もあり、これは「白い婦人」を意味します。

2.もどかしい

もどかしい

もどかしい」とは、「思うようにならず苛立たしい。歯がゆい。じれったい」ことです。

もどかしいは、動詞「もどく(擬く)」の形容詞形です。
もどくは、他のものに似せる、真似するの意味と、対立して相手を非難するの意味があり、前者の意味では、その連用形を名詞化した「がんもどき」があります。

もどかしいは後者の意味の「もどく」を形容詞化したもので、「相手を非難したい気持ちだ」というのが本来の意味です。

「非難したい気持ちだ」は「非難したい気持ちではあるけれど、非難できない」という意味でもあり、思うようにならない苛立たしさに通じることから、もどかしいは苛立たしく思う感情を広く表す言葉となりました。

3.モノレール/monorail

モノレール

モノレール」とは、「高架に設置した1本のレールに車両を走らせる旅客輸送鉄道」です。大きく分けて、レールから吊り下げる懸垂式と、上にまたがらせる跨座式の2種類があります。

モノレール

モノレールは、英語「monorail」からの外来語です。
普通、鉄道が2本の鋼鉄レールを利用するのに対し、1本の走行軌条で車両を走らせることから、「mono(単一の)」と「rail(軌条)」で「monorail(モノレール)」といいます。
「mono」は古代ギリシャ語で「単独」「単一」を意味する「μόνος」に由来します。

日本初のモノレールは、1928年に大阪天王寺公園で開催された交通電気博覧会において運行した「空中飛行電車」と呼ばれる懸垂式モノレールです。

鉄道事業として日本で最初のモノレールは、1957年に開業した上野動物園内の「上野懸垂線」で、「上野動物園モノレール」や「上野モノレール」とも呼ばれます。

4.蛻の殻/もぬけの殻(もぬけのから)

もぬけの殻

もぬけの殻」とは、「セミやヘビの抜け殻。人の抜け出た後の寝床や住居のたとえ。魂が抜けた体。死骸」のことです。

もぬけは、セミやヘビが脱皮することや、その抜け殻のことで、後者は「もぬけの殻」と同義です。

もぬけの語が見られる最も古い例は、934年頃に成立した漢和辞書『和名類聚抄』の「倍美乃毛沼介(はみのもぬけ)」で、ヘビの抜け殻を指しており、語源は諸説ありますが「身抜(みぬけ)」や「衣退(もぬけ)」の意味に由来すると考えられています。

人が抜け出た寝床や住居や魂が抜け去った体を「もぬけの殻」と言うのは、虫などの脱皮にたとえた表現と思われます。

ただし、『和名類聚抄』の次に古い1008年頃の『源氏物語』では「もぬけ」が着物から人が抜け出た状態を表しており、「もぬけの衣」という形での使用も古くから見られるため、もぬけが元々は虫などの脱皮に限って使う言葉ではなく、何かしらの中身が抜け出た後に残ったものを表していた可能性もあります。

5.股引/股引き(ももひき)

股引

ももひき」とは、「ズボン状の下半身に着用する下ばき。パッチ」のことです。

ももひきの語源は、室町時代の書に「股脛巾(ももはばき)」の語が見られるため、「ももはばき」が略された「ももはき」の転とする説が有力です。

脛巾とは旅行や作業の際、すねに巻きつけて紐で結んだもののことで、股脛巾は股まである脛巾の意味です。

ももひきは、安土桃山時代に「カルサオ」と呼ばれるポルトガルから伝わった衣服が原形と考えられています。

江戸末期から昭和初期まで、ももひきは半纏や腹掛けとともに職人の仕事着として用いられました。

6.模造紙(もぞうし)

模造紙

模造紙」とは、「化学パルプを原料とする上質の紙」です。製図や掲示物の作成、印刷、包装紙などに使われます。

模造紙は、「局紙」を模造した洋紙が元になっているものです。
「局紙」とは、明治元年に大蔵省印刷局で抄造(製造)された三椏(ミツマタ)が原料の和紙のことです。

この局紙がヨーロッパへ輸出され、オーストリアの製紙会社が亜硫酸パルプを原料に模造した紙を造り、「Simili Japanese vellum(日本の上質皮紙を模造した紙)」と呼びました。

この紙が日本に逆輸入され、1913年に九州製紙が改良を加えて国産化したことから、この紙は「模造紙」と呼ばれるようになりました。

つまり、局紙を模造した紙を更に模造したものが、「模造紙」ということです。
模造紙は、愛知県・岐阜県では「B紙(ビーし)」、富山県で「雁皮(がんぴ)」、愛媛県・香川県・沖縄県で「鳥の子洋紙」など、地域によって様々な名前で呼ばれており、「模造紙」では通じない地域もあります。

7.もんじゃ焼き(もんじゃやき)

もんじゃ焼き

もんじゃ焼き」とは、「出汁でゆるく溶いた小麦粉を熱した鉄板の上で調理しながら食べる食べ物」です。

もんじゃ焼きは、江戸時代末期から明治時代に東京の下町で誕生した食べ物で、子供が集まる駄菓子屋が発祥といわれます。

当時は和紙が高価であったため、子供たちは水に溶いた小麦粉で文字を書き、覚えながら食べていたことから、「文字焼き(もんじやき)」と呼ばれ、変化して「もんじゃ焼き」になったというのが定説です。

その他、「文字焼き」が変化した説には、ヘラで文字を書くようにかき回して焼いたことからや、杓文字で落として焼くことからといった説もあります。

全く異なる説では、とらえどころがない食べ物の意味で、「なんじゃもんじゃ」に由来する説があります。