日本語の面白い語源・由来(あ-⑪)青田買い・青田売り・後の祭り・天邪鬼・相槌

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青田買い

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.青田買い(あおたがい)

青田買い

青田買い」とは、企業などが、新入社員採用期間よりも早く、卒業見込みの学生や生徒の採用を内定することです。「青田刈り」とも言います。

青田買いの「青田」とは、まだ稲が実っておらず青々とした田のことです。
青田の時期に収穫量を見積もり、先物買いをすることを「青田買い」と言いましたが、転じて優秀な人材を早期に確保する意味となりました。

また、不動産用語では先物売買の意味合いから、青田売りされている物件を買うことを「青田買い」と言います。

なお「青田刈り(あおたがり)」という言葉もありますが、これは収穫を焦り、稲が実り切る前に刈ってしまうことを意味する言葉です。

ただし、本来の意味と異なり、「青田刈り」を「青田買い」の意味で使うこともあるので混乱しないように注意してください。

2.青田売り(あおたうり)

青田売り

青田売り」とは、造成前の宅地や未完成の建物を販売することです。「売り建て」とも言います。

青田売りは、農民が経済的な困難から、まだ稲の青い時期に収穫を見越して先売りすることを意味しました

そこから転じて、工事の完了前に宅地や土地を販売する意味となりました。

青田売り

青田売りは開発許可や建築確認の後であれば違法となりませんが、それ以前に広告を出したり売買契約を結ぶことは、宅地建物取引業法で禁止されています。

3.後の祭り(あとのまつり)

後の祭り

後の祭り」とは、時機を逸して後悔の念を表す言葉です。手遅れのことです。

ただし、「祭りのすんだ翌日。また、その日、神饌 (しんせん) を下ろして飲食すること。後宴。」という意味もあります。

後の祭りの語源は以下のように、大きく分けて二説。細かく分けて四通りの説があります。

京都八坂神社の祇園祭は、7月1日から約1ヶ月間行われますが、そのうち山鉾と呼ばれる豪華な山車が沢山繰り出される17日の山鉾巡行を「前の祭り」と言い還車の行事を「あとの祭り」と言います

あとの祭りは、山鉾も出ず賑やかさがなく、見物に行っても意味がないことから、手遅れの意味になったとする説。

祇園祭と似た説では、祭りが終わった後の山車は役に立たないことから「後の祭り」と言うようになったとする説や、祭りの終わった翌日では見物に行っても意味がないことから「後の祭り」と言うようになったとする説。
どこの祭りと断定されていないが、祇園祭の説から派生した語源説もあります。

後の祭りは、葬式や法事など故人の霊を祭ることで、亡くなった後に盛大な儀式をしても仕方ないことから、後悔の念や手遅れの意味で使われるようになったとする説。

一般的には祇園祭の説が有力とされていますが、語源は話題作りの手段として作られることもあり、故人を祭る「後の祭り」が有力との見方もあります。

4.天邪鬼(あまのじゃく)

天邪鬼

あまのじゃく」とは、わざと他人の言行に逆らうひねくれ者のことです。「あまのざこ」「あまのじゃこ」とも言います。

あまのじゃくは、「天探女(あまのさぐめ)」という悪神の名前が転訛した語といわれます。
天探女は『古事記』や『日本書紀』の神話に出てくる神で、人の心の内を探って、その意と逆のことをしたり、そそのかしたりするひねくれた悪神です。

この天探女は、『瓜子姫』という昔話に登場する悪鬼の由来としても有名です。

また、仁王や四天王に踏みつけられた小さな鬼も「天邪鬼(あまのじゃく)」と言い、仏教では「あまのじゃく」を人間の煩悩の象徴としています。

両者は別々の説ですが、それぞれの名前や意味が結びつき、ひねくれ者やつむじ曲がりを「あまのじゃく」と呼ぶようになったと考えられます。

5.相槌(あいづち)

相槌

相槌」とは、相手の話に調子を合わせて頷いたり、言葉をはさんだりすることです。

あいづちは江戸時代から見える語で、漢字では「相槌」や「相鎚」のほか、「合鎚」とも書きました。

槌・鎚(つち)」は、物を打ち叩く建築用の工具です。鍛冶が刀を鍛えるとき、師が槌を打つ合間に弟子が槌を打つことを「相槌」や「相の槌」などと言いました

相槌

そこから転じて、相手の問いに答えることや、相手の話に合わせることを「相槌を打つ」と言うようになりました。