日本語の面白い語源・由来(か-⑲)鱲子・書く・貫禄・雁もどき・踵・片口鰯

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からすみ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.鱲子/鰡子/唐墨(からすみ)

カラスミ

からすみ」とは、ボラの卵巣を塩漬けにし、圧搾・乾燥した食品です。高価でサワラやタラ等の卵巣で代用品が作られるため、ボラの卵巣を使用したものは「本からすみ」と呼ばれます。

からすみは、中国から渡来した墨「唐墨(からすみ)」に形が似ていたことからの命名です。
昔は冷蔵技術がなく、常温保存されていたため、時間が経つと色が黒くなり、形だけでなく色も唐墨に似ていたと言われます。

一説には、肥前名護屋城にいた豊臣秀吉に土地の代官がこの食品を献上した際、その名を尋ねられ、とっさに「唐墨です」と答えたため「からすみ」になったとも言われます。

江戸時代、三河のこのわた・越前のウニとともに、長崎のからすみは「天下の三珍味」言われました。

「からすみ」は秋の季語で、「ぼら」も秋の季語です。

2.書く/描く/画く(かく)

書く

書く」とは、文字・記号を記す、文章にすることなどを意味します。絵画・図形などを表す場合は、「描く」「画く」を用います。

書く・描く・画くは、全て「掻く(かく)」に由来します。
かつては、土・木・石などを引っ掻き、痕をつけて記号を記したことから、「かく」が文字や絵などを記す意味となりました。

3.貫禄(かんろく)

貫禄

貫禄」とは、身に備わっている威厳、身体・人格・態度などから感じられる人間的重みや風格のことです。

貫禄の「」は、中世以降に田地に用いた単位で、収穫高を銭に換算し、表にしたものです。
室町時代には、武家の知行する石高、いわゆる「知行高(ちぎょうだか)」を表示するのに用いられました。

」は、官に仕える者に与えられる給与のことです。
つまり、貫禄は領地の大きさや給与の額など武士の値打ちを表す語で、それらの多い者が「貫禄のある人」でした。

そこから、身に備わった威厳や人間的重みや風格がある人に対して、「貫禄がある」や「貫禄がつく」と使うようになりました。

また、体が肥えた人は堂々とした印象を与えることから、太っていることを馬鹿にしたり、からかって、「貫禄十分」や「貫禄たっぷり」などとも言うようになりました。

4.雁もどき(がんもどき)

がんもどき

がんもどき」とは、油揚げの一種で、水気を切って崩した豆腐に、山芋・卵などを加えてつなぎにし、細かく刻んだごぼう・にんじん・麻の実・昆布などを混ぜて丸め、油で揚げたものです。「がんも」「飛竜頭(ひりょうず/ひろうす)」とも言います。

がんもどきの「がん」は、鳥の「ガン(雁)」のことです。「もどき」は「似て非なるもの」「匹敵するもの」を意味する「もどき」です。がんもどきは、味が雁の肉に似ていることに由来する名前です。

元々、がんもどきは精進料理で魚肉の代わりとして作られたもので、古くは、麩(ふ)やこんにゃくなどを油で揚げたものでした。

5.踵(かかと)

かかと

かかと」とは、足の裏の後部で、全身の中で皮膚が最も厚くなっています。「きびす」「くびす」「かがと」とも言います。

かかとの語源には、足を掻くところの「足掻処(あがきと)」が略転したとする説や、駆けるところの「駆処・駈処(かくと)」が音変化したとする説など役割からみる説があります。

また、足元のところを意味する「脚下処(かくかと)」から「かかと」になったなど多くの説がありますが、語源としている言葉の用例が見られないため疑問が残ります。

東日本を中心とした方言では、かかとを「あくと」や「あぐど」と言い、九州・沖縄の方言では「あど」や「あどぅ」と言います。

そのため、上記の中から選ぶとすれば、「足掻処(あがきと)」の略転が有力です。
その他、くるぶしから先の部分や足を「くはびら」といい、「くはびら」の「くは」が音変化して「かかと」になったとする説があります。
「くは」は「きびす(くびす)」の語源にも通ずることから、音変化の過程がはっきりすれば最も有力な語源と考えられます。

6.片口鰯/カタクチイワシ(かたくちいわし)

カタクチイワシ

カタクチイワシ」とは、ニシン目カタクチイワシ科の魚です。

カタクチイワシは下あごが小さく、上あごが前方に突き出ている。
その形状により、上あごだけで片方の口しかないように見えることから、片口のイワシの意味でこの名になりました。

「鰯」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・鰯船 火の粉散らして 闇すすむ(山口誓子

・鰯売る 坂逆光に 照り出さる(角川源義)

引く 外浦に出るや 芒山(河東碧梧桐