エモい古語 物語(その1)神話・歴史 衣通姫・月読命・八咫烏・言霊・天叢雲剣・反魂香

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衣通姫

前に「エモい古語辞典」という面白い辞典をご紹介しました。

確かに古語は現代の我々が普段あまり使わない言葉ですが、繊細な情感を表す言葉や、感受性豊かで微妙な感情を表す言葉、あるいはノスタルジーを感じさせたり、心を動かされる魅力的な言葉がたくさんあります。

そこで「エモい古語」をシリーズでご紹介したいと思います。

1.記紀神話

・衣通姫(そとおりひめ):禁忌とされていた同母兄・木梨軽皇子(きなしのかるのおうじ)と恋に落ちた軽大娘(かるのおおいらつめ)皇女の「古事記」での別名。衣を通して輝くほどに美しいことからこう呼ばれました。流刑になった兄を追って伊予に赴き、束の間の逢瀬のあとで二人で自害しました。「日本三大美人」の一人です。

・高天原(たかまがはら/たかまのはら):「アマテラス」(「天照大御神(あまてらすおおみかみ)が治める神々の世界。

・常世国(とこよのくに):海の彼方にあるとされる不老不死の理想郷。

・黄泉比良坂(よもつひらさか):生者の住むこの世界と死者の国である「黄泉国(よもつくに)」(根の国)との境界にある坂。「古事記」では出雲国の伊賦夜坂(いふやざか)のこととされています。

・幽宮(かくりのみや/かくれのみや):「日本書紀」に登場する、イザナギ(伊邪那岐命)が余生を過ごした場所。

・天の安河(あまのやすのかわ/あめのやすのかわ):神々がすむ高天原を流れる川。

・天の浮橋(あまのうきはし/あめのうきはし):高天原と地上との通路としてかかっていると信じられた橋。

別天神(ことあまつかみ):「古事記」の冒頭で、天地開闢の際に高天原に現れた五柱の神々のこと。神の中でも特別な存在であることからこう総称されます。

・木花開耶姫(このはなのさくやひめ):サクラの花が咲いたように美しい女神。浮気の疑いを晴らすために産屋(うぶや)に火を放ち、炎の中で出産。「木花咲耶姫」、「木花之佐久夜毘売」など表記はさまざま。

・阿加流姫(あかるひめ):「古事記」に登場する新羅(しらぎ)国王の子・アメノヒボコ(天之日矛)の妻。昼寝中の新羅の女の陰部に日の光があたって産み落とされた赤玉がアメノヒボコの手に渡り、美しい姫に変化しました。姫は毎日おいしいご飯をつくって尽くしましたが、夫のモラハラに耐えかねて「祖国は日本だ」と宣言し、小舟に乗って日本に戻りました。

・草野姫(かやのひめ):草の女神。

・天探女(あまのさぐめ):心を探ることができる女神。天命にそむいたアメノワカヒコ(天若日子)を探るために高天原から遣わされたキジ(雉)、すなわち「鳴女(なきめ)」の鳴き声を読み取って、アメノワカヒコにキジを射殺するように進言しました。

・沫那美神(あわなみのかみ):泡の女神。同じく泡の神であるアワナギ(沫那芸神)は兄であり夫であるとされます。

貝比売(きさがいひめ)、蛤貝比売(うむかいひめ/うむぎひめ)

それぞれアカガイ(赤貝)とハマグリ(蛤)を神格化した女神。貝殻を粉末にした薬で死者を蘇生できるスキルを持ちます。

・月読命(つくよみのみこと):イザナギ(伊邪那岐命)からアマテラス(天照大御神)、スサノオ(須佐之男命)とともに生まれた三貴子の一神。夜を統(す)べる月の神。

・変若水(おちみず):ツクヨミ(月読命)が持っていた若返りの水。

・火之迦具土神(ほのかぐつちのかみ/ひのかぐつちのかみ):「古事記」に登場する火の神。生まれるときに母のイザナミ(伊邪那美命)に火傷(やけど)を負わせて死なせてしまいます。「日本書紀」では「火産霊(ほむすひ)」と表記されます。

・建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ):ホノカグツチ(火之迦具土神)の岩に飛び散った血から現れた雷神(剣の神でもある)。葦原中国(あしはらのなかつくに)を平定。「建御雷神」「武甕槌神」など表記はさまざまです。

・火雷神(ほのいかづちのかみ):記紀神話でイザナミ(伊邪那美命)の遺体から生まれた八種の雷神のうちの一柱。イザナギ(伊邪那岐命)を追いかけたが桃で撃退されます。

・一言主神(ひとことぬしのかみ):吉凶を一言で言い放つ託宣神。「日本書紀」では雄略天皇とそっくりな姿で登場し、一緒に狩りを楽しみます。

・少名毘古那神(すくなびこなのかみ):ガガイモの実の莢(さや)の舟に乗って海の彼方からやって来た小さな体の神。「古事記」ではガ(蛾)の皮を、「日本書紀」ではミソサザイ(鷦鷯)の羽を着ています。オオクニヌシ(大国主命)の国造りを手伝い、役目を終えると、アワ(粟)の茎によじ登って茎の弾力で常世国へと飛んで行きました。

余談ですが、大阪市中央区の「薬のまち」道修町(どしょうまち)にある「少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)」は、「神農(しんのう)さん」として親しまれています。

主祭神の少彦名命(すくなひこなのみこと)と神農炎帝(しんのうえんてい)は、薬・医療・温泉・国土開発・醸造・交易の神ですが、薬の神として健康増進、交易の神として商売繁盛の神徳があるとされています。

・常世神(とこよのかみ):「日本書紀」に登場する、飛鳥時代に流行(はや)った新興宗教の神。常世国(とこよのくに)から来た神とされますが、親指ほどの太さで緑色で黒い斑点があるという記述から、アゲハチョウの幼虫(下の写真)だったのではないかとされます。

アゲハチョウ幼虫

・両面宿儺(りょうめんすくな):飛騨に攻め入った大和朝廷の軍に滅ぼされた異形(いぎょう)の者。「日本書紀」では宿儺と表記されます。八本の手足を持ち、頭の前後両面に顔があります。朝廷に逆らい人民に掠奪を繰り返したため誅殺されたと伝えられます。

一方で両面宿儺像を有する岐阜県の日龍峯寺(にちりゅうぶじ)では、村人に危害を加えていた龍を退散させた豪族であるという伝説が残されています。

最近ではロシアとクライナとの戦争で「プロパガンダ」合戦が盛んに行われましたが、はるか昔の日本でもあったようですね。

・八咫烏(やたがらす):古代中国の説話に登場する三本足の巨大な霊鳥。日本神話では神武天皇の道案内をしたことから導きの神とされます。

日本サッカー協会のシンボルマークおよび日本代表のエンブレムの意匠として用いられていることでも有名ですね。

日本サッカー協会八咫烏エンブレム

・鳴女(なきめ):アメノワカヒコ(天若日子)を偵察するためにアマテラス(天照大御神)から放たれ、弓矢で命を奪われたキジ(雉)。

・多邇具久(たにぐく):日本神話に登場する神で、ヒキガエルのこと。ヒキガエルは古代から神聖視されており、大地の主の神の使者だと考えられていました。「古事記」ではスクナビコナ(少名毘古那神)の正体を知りたいオオクニヌシ(大国主命)に知恵を貸す役割を果たします。

2.伝説・歴史

・可愛少女(えおとめ):いとしい少女。美しい乙女。

・可愛少男(えおとこ):いい男。いとしい男。

・まほら:素晴らしい場所。まほろば。

・天翔る(あまかける):神や霊魂などが天高く飛んでいくこと。

・天の火(あめのひ):天から降る神秘的な火。

・和魂(にきみたま):神の優しくて穏やかな側面。にきたま。神の荒々しく勇猛な側面は「荒魂あらみたま)」と呼びます。

・奇魂(くしみたま):不思議な力を持つ神霊。

・言霊(ことだま):古代、言葉に宿ると信じられていた不思議な力。「万葉集」に登場するフレーズ「言霊の幸(さき)わう国」は、「言葉の持つ力が幸せをもたらす国(=日本)」という意味。

「敷島(しきしま)の 大和の国は 言霊の 幸(さき)わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ」(意味:この日本の国は、言葉が持つ力によって幸せになっている国です。これからも平安でありますように)(柿本人麻呂

・五月蠅(さばえ):陰暦五月ごろの群れて騒がしいハエ。記紀神話では、アマテラスが天岩戸(あまのいわと)に隠れたときの神々の動揺ぶりや邪神が群れ騒ぐさまの形容に用いられました。「五月蠅なす(さばえなす)」は、「騒ぐ」「荒ぶる」にかかる枕詞。ここから「うるさい」に「五月蠅い」の字を当てるようになりました。夏の季語。

なお、「五月蠅い(うるさい)と八釜しい(やかましい)は夏目漱石の当て字」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

・神のまにまに(かみのまにまに):神の意志の通りに。「まにまに」は、ままに、の意。「汝(な)がまにまに」は、あなたの好きなように、という意味。

・アラハバキ:東北・関東で信仰されてきたが、「古事記」「日本書紀」「風土記(ふどき)」などには一切登場しない出自不詳の太古の神。縄文時代に信仰されていたという説があります。「荒脛巾」「荒覇吐」など、漢字表記はさまざま。

・佐用姫(さよひめ): 朝鮮に派遣される恋人との別れを悲しみ、船に向かって「領巾(ひれ)」(肩に掛けるスカーフのようなもの)を振り続けて石になってしまったと伝えられる豪族の娘。肥前国松浦郡で語り継がれている「日本三大悲恋物語」の一つで、「万葉集」にも詠われています。「松浦佐用姫(まつらさよひめ)」とも言います。

・菟原処女(うないおとめ):「大和物語」では摂津国に住むとされた娘。二人の男に求婚され、選びかねた末に、生田川に身を投げ、二人の男もあとを追う。「万葉集」などでも詠われました。

・鈴鹿御前(すずかごぜん):伊勢国と近江国の国境にある鈴鹿山にすむ天女。室町時代以降は鈴鹿山の女盗賊「立烏帽子(たてえぼし)」と同一視され、鬼や「天の魔焔(まえん)」と記されることもあります。ある伝承では、もともと悪路王の妻だったが、朝廷の命令で自分を討ちに来た坂上田村麻呂と恋に落ち、悪路王を討ち取る手助けをしたということです。

・依玉姫(よりたまひめ):岡山県の育霊(いくれい)神社にまつわる伝説に登場するネコ好きの姫。城が攻められた際、姫とネコは近くの祠(ほこら)に隠れたが、姫の食糧調達のために里に下りたネコが敵兵に見つかって殺され、ネコの死骸を見た姫も自害してしまいました。

・恋山(したいやま):出雲国風土記の「和邇の恋山(わにのしたいやま)」に登場する島根県の山。タマヒメ(玉日女命)という美しい女神に恋焦がれて川をさかのぼってきたワニが、女神に巨石で川を塞がれても、恋慕い続けたことから名付けられました。

・菌大明神(きのこだいみょうじん):滋賀県栗東市の菌(くさびら)神社に祀られる神。飢饉で苦しんでいた村人が神に祈ったところ、一夜にしてキノコが生えて飢えから救ったと伝えられます。

・斥候/窺見/間諜(うかみ):大化改新の詔(みことのり)に登場する、敵の様子を探る者。スパイ。物見(ものみ)。

・土蜘蛛(つちぐも):大和朝廷に従わなかった土着勢力の総称・蔑称。このような朝廷にあらがう人々は「まつろわぬ民」とも呼ばれました。

・阿弖流為(あてるい):八世紀末~九世紀初頭の朝廷による蝦夷(えみし)平定に対抗し、ゲリラ戦で朝廷軍と戦った蝦夷の族長。坂上田村麻呂に滅ぼされた蝦夷の族長として伝説に登場する悪路王も阿弖流為だとされています。

・ニライカナイ:琉球王国の神話に登場する、海の彼方の理想郷。

・四方四季の庭(しほうしきのにわ):四季が同時に存在する想像上の庭。人間界と異界の時間の流れの違いを象徴するとされ、「陰陽五行説」に基づいて東に春、南に夏、西に秋、北に冬の景色が配されます。中世の「御伽草子(おとぎぞうし)」では、浦島太郎がたずねた竜宮城に四方四季の庭があったとされます。

3.剣などのアイテム

・十種神宝(とくさのかんだから):「先代旧事本紀(くじほんぎ)」に「天璽瑞宝十種(あまつしるしみずたからとくさ)」という名で登場する十種類の宝物。鏡二種、剣一種、勾玉四種、比礼(スカーフのようなもの)三種からなる。

「沖津鏡(おきつかがみ)」「辺津鏡(へつかがみ)」「八握剣(やつかのつるぎ)」「生玉(いくたま)」「死返玉(まかるかへしのたま)」「足玉(たるたま)」「道返玉(ちかへしのたま)」「蛇比礼(おろちのひれ)」「蜂比礼(はちのひれ)」「品物之比礼(くさぐさのもののひれ)」。

・布瑠の言(ふるのこと):「先代旧事本紀(くじほんぎ)」でニギハヤヒ(饒速日命)が十種神宝を授かった際に教えられた死者蘇生の言霊。

「一二三四五六七八九十(ひふみよいむなやここのたり)、布瑠部(ふるべ)、由良由良止(ゆらゆらと)、布瑠部(ふるべ)」

・天の鳥船(あまのとりふね/あめのとりふね):「古事記」に登場する、鳥が飛ぶように速く走る船。

・天の磐船(あまのいわふね/あめのいわふね):「日本書紀」に登場する、空中を飛んで高天原と地上を行き来する堅固な船。

・天の羅摩船(あまのかかみぶね/あめのかかみぶね):スクナビコナ(少名毘古那神)が乗ってきたガガイモの実のさやの舟。

・天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ/あめのむらくものつるぎ):「日本書紀」でスサノオ(素戔嗚尊/須佐之男命)が退治したヤマタノオロチ(八岐大蛇)の尾から出てきた神剣。草薙剣(くさなぎのつるぎ)のもとの名。草薙剣は「三種の神器」(さんしゅのじんぎ)の一つで、三種の神器にはほかに、「八咫鏡(やたのかがみ)」「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」があります。

天沼矛/天の瓊矛(あまのぬほこ(ぼこ)/あめのぬほこ(ぼこ)):イザナギ(伊邪那岐命)とイザナミ(伊邪那美命)の国生みで使われた矛。玉で飾られた矛という意味。

・天の逆鉾(あまのさかほこ/あめのさかほこ):宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島連峰の名峰・高千穂(たかちほ)峰の頂上に突き立てられている矛。国生みに使われた天沼矛だと伝わります。

・天鹿児弓(あまのかこゆみ/あめのかこゆみ):「日本書紀」で、アメノワカヒコ(天若日子)が授けられた弓。アマテラス(天照大御神)から国譲りの命を受けてオオクニヌシ(大国主命)のもとへ派遣されたアメノワカヒコはオオクニヌシの娘と恋に落ちたことから、アマテラスが偵察のために放ったキジ(雉)の鳴女(なきめ)をこの弓で殺してしまい、天から投げ返された矢で自らも死に至ります。「古事記」では「天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)」。

・天羽々矢(あまのはは(はば)や/あめのはは(はば)や):アメノワカヒコ(天若日子)が授けられた矢。

・八塩折(八入折)の酒(やしおりのさけ):何度も繰り返して醸成した強い酒。「古事記」ではスサノオ(素戔嗚尊/須佐之男命)がヤマタノオロチ(八岐大蛇)に飲ませて退治しました。

・布都御魂(ふつのみたま):タケミカヅチ(建御雷之男神)が葦原中国(あしはらのなかつくに)を平定したときに使った神剣。荒ぶる神を鎮める力を持ちます。

・十束剣(とつかのつるぎ):日本神話に登場する長剣の総称。拳十個分の長さの剣という意味。「十拳剣」「十握剣」などとも書きます。

・天羽々斬(あまのはは(はば)きり/あめのはは(はば)きり):スサノオ(素戔嗚尊/須佐之男命)がヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治したときに用いた神剣。「はは」は大蛇のこと。

・天之尾羽張(あまのおはばり/あめのおはばり):「古事記」で、イザナギ(伊邪那岐命)が妻イザナミ(伊邪那美命)の死の原因となった我が子・ホノカグツチ(火之迦具土神)を斬り殺すときに用いた神剣。別名・伊都之尾羽張(いつのおはばり)。

・七星剣(しちせいけん):北斗七星をあしらった上古の剣の名。聖徳太子の佩刀(はいとう)とされる四天王寺所蔵のものが知られています。

・七支刀(ななさやのたち/しちしとう):石上(いそのかみ)神宮におさめられている古代の鉄製剣。左右三本ずつ、六本の枝刃があります。百済(くだら)の使者が「七子鏡(ななつこのかがみ)などとともに献上した刀とされます。

・雷切(らいきり):雷神を斬ったと伝えられる名刀。戦国武将・立花道雪所有のものが有名。

・祢々切丸(ねねきりまる):日光・二荒山(ふたらさん)神社に祀られている大太刀。里に下りてきて人々を困らせていた妖怪・祢々をひとりでに斬ったことからこの名がついたとされます。

・骨食(こっしょく/ほねくい):源頼政(みなもとのよりまさ)の鵺(ぬえ)退治伝説で、従者の猪早太(いのはやた)が鵺にとどめを刺した短刀の名前。

・骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう):鎌倉時代につくられたとされる日本刀。斬る真似をしただけで骨まで砕いてしまいそうなほど鋭いことから名付けられてということです。

・血吸(ちすい):酒呑童子(しゅてんどうじ)を斬ったとされる刀。童子切(どうじぎり)とも呼ばれます。

・篠の雪(ささのゆき):ササ(笹)の上の雪がすぐ落ちるように、首や胴をすぐに落とせるという意味で名付けられた刀の名。

・干将、莫耶(かんしょう、ばくや)中国春秋時代を記した歴史書「呉越春秋」に登場する、呉の刀工の干将が妻・莫耶とともに鍛え上げた一対の双剣。莫耶の髪を炉に入れてつくったとされ、陽を「干将」、陰を「莫耶」と呼びます。

・岩透(いわとおし):武蔵坊弁慶がふるったとされる太刀の名。

・氷の刃(こおりのやいば):氷のように冷たく研ぎ澄まされた刀。氷の剣(つるぎ)。「抜けば玉散る氷の刃」は、研ぎ澄まされた剣が輝くさまを表現する剣劇の活動写真の弁士の決まり文句。

・活人剣(かつにんけん):元来、人を殺傷するための剣が、人を活かすものになるということ。また、その剣の道。

・相星眼(あいせいがん):剣術で双方が剣の先を相手の眼に向けて構えること。

・音無しの構え(おとなしのかまえ):音を立てない姿勢。

・無間の鐘(むげんのかね):静岡県遠州地方に伝わる遠州七不思議の一つ。つけば大金持ちになれる代わりに「無間地獄(むげんじごく)」に落ちるという鐘。

「無間地獄」とは仏教用語で「大罪(五逆罪)を犯した者絶え間ない苦しみを受ける地獄」のことで、「阿鼻地獄(あびじごく)」とも言います。

・真澄鏡(まそかがみ/ますみのかがみ):くもりのない澄みきった鏡。和歌では「まそかがみ」で「見る」「日」「清し」などにかかる枕詞となります。

・芭蕉扇(ばしょうせん):バショウの葉でつくる団扇(うちわ)。「西遊記」では雲や雨、霊水などを呼び寄せることができる魔法のアイテムとして登場します。

・雲に飛ぶ薬(くもにとぶくすり):「万葉集」に登場する、飲めば雲までも飛べるという仙人の薬。中国の説話集「列仙全伝」(二)に掲載された故事より。

・雲に吠ゆ(くもにほゆ):(イヌが雲に飛ぶ薬を飲んで天に上り雲の中で吠えたという「列仙全伝」(二)のエピソードから)大はしゃぎする。有頂天になる。

・反魂香(はんごんこう):焚くと煙のなかに亡くなった人のたましいを呼び返すことができるといわれる伝説上の香。白居易の「李夫人」という漢詩に描かれ、日本に伝わりました。

・夜光の璧(やこうのたま/やこうのへき):古代中国で、夜でも光り輝くといわれた玉。随侯が助けたヘビから授かったと伝えられます。ガラス製だったと考えられます。