エモい古語 物語(その2)怪異 あやかし・天逆毎・書籍姫・六鳥・百々目鬼・鬼門・蠱毒

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百鬼夜行

前に「エモい古語辞典」という面白い辞典をご紹介しました。

確かに古語は現代の我々が普段あまり使わない言葉ですが、繊細な情感を表す言葉や、感受性豊かで微妙な感情を表す言葉、あるいはノスタルジーを感じさせたり、心を動かされる魅力的な言葉がたくさんあります。

そこで「エモい古語」をシリーズでご紹介したいと思います。

1.あやかし

あやかし

・あやかし:不思議で妖しいこと。妖怪。

・奇霊(くしび):<形容動詞>神秘的で不思議なさま。動詞「奇霊(くしぶ)」から

・物の怪(もののけ):人に取り憑き、病気にしたり命を奪ったりするとされる死霊・生き霊(いきりょう)・妖怪の類。平安時代の文献に頻出します。

・隠身(かくりみ):神などの人の肉眼では見えない存在。

・化生の者(けしょうのもの):妖怪。化け物。

・魔魅(まみ):人をたぶらかす魔物。また、そのような人のたとえ。

・夢魔(むま):夢の中に現れて苦しみをもたらす魔物。転じて恐い夢。

・魑魅(すだま/ちみ):山林の精気から生じたという人面獣身の妖怪。

・魍魎(もうりょう):山・川・木・石などの精霊。

・生き霊(いきすだま):生きている人の怨霊(おんりょう)。生き霊(いきりょう)。

・地霊(ちれい):大地に宿る神霊。

・鬼火(おにび):暗い夜に浮遊する正体不明の怪しい火。各地でさまざまな名前で報告されており、九州の八代海や有明海に見られる不知火(しらぬい)、高知城下や海上に現れる遊び火などが知られています。

・狐の嫁入り(きつねのよめいり):多くは行列をなして現れる怪火。狐火(きつねび)。また、天気雨「日照雨(そばえ)」を指すこともあります。冬の季語。

・不祥雲(ふそうぐも):凶事の前触れとなる雲。

・天逆毎(あまのざこ):江戸時代の百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」に記された反抗の女神。なんでもあべこべにしないと気が済まない性格で、獣のような高い鼻、長い耳と牙を持つ。神様を投げ飛ばすほど怪力。思い通りにならないと荒れ狂う。天逆毎姫(あまのさこのひめ)。天邪鬼(あまのじゃく)。

・宇治の橋姫(うじのはしひめ):京都の宇治橋を守る女神。平安時代は京の都から遠く離れた宇治に住む遠距離恋愛中の恋人のたとえとして和歌に詠まれましたが、「源平盛衰記」(「平家物語」の異本)では恋敵を殺すために呪術で鬼になった女性とされています。

・刑部姫(おさかべひめ):兵庫県の姫路城の天守閣に棲んでいるとされる女性の妖怪。十二単(じゅうにひとえ)を着た美しい姫説、老婆説があります。身長が6メートルに伸びる、多くの化け物を従えている、天井を床にしてさかさまに歩くなどの特徴があります。「小刑部姫」「長壁姫」とも書きます。

・書籍姫(しょせきひめ/ほんひめ):東京・四谷の全勝寺の境内に関東大震災で崩壊するまで墓があった正体不明の読書好きのお姫さま。墓に耳をつけると朗読している書籍姫の声が聞こえてきたということです。墓前のお堂にある本は誰でも自由に借りられましたが、期限内に返却しないと毎晩書籍姫が夢に現れて催促するという都市伝説もあったとか。

・葛の葉狐(くずのはきつね):「信太の森(しのだのもり)」の伝説に登場する白いキツネ。女性に化けて人間と恋をし、陰陽師・安倍晴明を産んだとされます。浄瑠璃や歌舞伎などの題材に多く取り上げられています。

・玉藻前(たまものまえ):全身が金色の毛におおわれた九尾(きゅうび)の妖狐が化けた美女。平安末期に鳥羽上皇の寵姫であったとされ、正体を見破られて栃木県の那須温泉近くで殺されて大きな岩になったとのことです。岩になってもなお近づく者の命を奪う毒気を吐き続けたことから、「殺生石(せっしょうせき)」と呼ばれるようになりました。

・夜叉姫(やしゃひめ):岐阜の夜叉ケ池の名前の由来となった伝説に登場する、日照りに苦しむ村人を救うため池の龍神に嫁いだ領主の娘。

・白龍(はくりょう):白い龍。または白く泡だっている渓流や滝などの流れのたとえ。

・五頭龍(ごずりゅう):鎌倉の深沢の沼に棲んでいたとされる五つの頭を持つ龍。災いを起こして人民を苦しめていましたが、江の島に降り立った美しい天女に恋をして改心し、人々に尽くすようになりました。死後も龍口山(りゅうこうざん)となり、天女を慕うように江の島を見守り続けているということです。

・九頭龍(くずりゅう):九つの頭を持った龍。密教を守護する神とされます。

・海龍王(かいりゅうおう):海にすむ龍王。

・件(くだん):亻(にんべん)+牛の字の通り、牛の体に人の顔を持つ妖怪。生まれてすぐに予言をし、数日で死ぬとされます。

・風狸(ふうり/かぜたぬき):中国および日本の妖怪。風のように飛び、殺しても風を口に受けると生き返ります。人間に捕らえられると上目遣いで憐れみを乞うようなしぐさを見せます。

・羽犬(はいぬ):福岡県筑後市に伝わる、翼のあるイヌ。人や家畜を襲って豊臣秀吉に退治された羽の生えた犬説と、秀吉の九州遠征についてきた羽が生えたように跳びまわる飼い犬説があります。

・玄狐(げんこ):北海道松前町の「玄狐稲荷(げんこいなり)」に伝わる妖術をつかう黒いキツネ。

・夜刀神(やとのかみ/やつのかみ):ツノの生えたヘビ。「常陸国風土記」では谷地にすみ、開墾を妨害。

・六鳥(ろくちょう):極楽浄土にいるとされる六種類の鳥。「白鵠(びゃっこう)」「孔雀(くじゃく)」「鸚鵡(おうむ)」「舎利(しゃり)」「迦陵頻伽(かりょうびんが)」「共命(ぐみょう)」

・迦陵頻伽(かりょうびんが):極楽浄土にいるとされる、上半身が美女で下半身が鳥という想像上の生き物。非常に美しい声で鳴きます。

・共命鳥(ぐみょうちょう):極楽浄土にいるとされる、頭が二つある人面鳥。それぞれの頭に自我が宿っており、争いの果てに死んでしまったと伝えられます。「命命鳥(みょうみょうちょう)」。

・寒苦鳥(かんくちょう):インドの雪山にすむという想像上の鳥。夜は寒さに震えながら「明日は必ず巣をつくらん」と鳴き続けて過ごし、朝になったら寒さを忘れて遊びほうける。後回しにしがちな怠け者の象徴。冬の季語。

・陰摩羅鬼(おんもらき):中国および日本に伝わる、充分な供養を受けていない死体が化けた怪鳥。

・鵺/鵼(ぬえ):「平家物語」で、頭はサル、胴体はタヌキ、手足はトラ、尾はヘビの合成獣で、鵺(トラツグミ)のように鳴くと書かれた妖怪。鳥の妖怪ともされます。得体のしれないもの、つかみどころのないもののたとえに使われることがあります。「夜鳥」とも書きます。

・以津真天(いつまで):「太平記」で「いつまでも、いつまでも」と口から火を吐きながら鳴くと書かれた怪鳥。「今昔画図続百鬼」で「以津真天」と名付けられました。

・夜雀(よすずめ):夜、山道を歩いているときにスズメのような鳴き声をあげながらついてくる妖怪。

・迦羅求羅虫(からくらむし):非常に小さいが、風を受けるとたちまち大きくなって全てのものを飲み込むという仏教における想像上の虫。「伽那久羅虫(かなくらむし)」とも言います。

・付喪神(つくもがみ):作られてから百年経った道具に魂が宿って妖怪になったもの。

・暮露々々団(ぼろぼろとん):付喪神の一種で、古びてぼろぼろになった布団が妖怪になったもの。

・塵塚怪王(ちりづかかいおう):ごみの付喪神をまとめる王。

・虚舟(うつろぶね):江戸時代に常陸国に漂着したと伝えられる謎の舟。曲亭馬琴の「兎園小説」に「虚舟の蛮女(ばんじょ)」として異国の女性とUFO型の舟の図解付きで収録されました。

曲亭馬琴・虚舟

2.鬼

・鬼魅(きみ):鬼と化け物。

・屍鬼(しき):死体に憑く悪鬼。呪法(起尸鬼呪をとなえる法)によって操作され、人々を害する。「起尸鬼(きしき)」「起屍鬼(きしき)」「伝屍鬼(でんしき)」とも言います。

・魅鬼(みき):人をたぶらかして惑わす鬼。

・牛鬼(ぎゅうき/うしおに):しばしば海辺に現れ、人間を襲うとされる牛の姿をした妖怪。

・目一つ鬼(まひとつおに):目が一つの人食い鬼。奈良時代の「出雲国風土記」に登場し、日本に現存する文献で確認できる鬼の中では最古とされます。

・百々目鬼(どどめき):常に銭を盗むために腕に百の眼が生じてしまった女の妖怪。鳥山石燕(とりやませきえん)の「今昔画図続百鬼」に描かれています。栃木県宇都宮市に伝わる鬼・百目鬼(どうめき)に着想を得たものと言われます。

・悪毒王(あくどくおう):壱岐の鬼伝説に登場する鬼の首領。

・外道丸(げどうまる):丹波国の大江山にすんでいたとされる鬼・酒吞童子(しゅてんどうじ)の幼名。近隣の娘たちから恋文が殺到するほどの美少年でしたが、見向きもせずに寺で修行に励んでいたところ、返事が返ってこないことを悲観した娘のひとりが命を絶ってしまいます。そのことを知った外道丸が恋文の詰まったつづらを開けると、煙に取り巻かれて鬼になったと伝えられます。

・茨木童子(いばらきどうじ):酒吞童子の手下。羅生門で源頼光四天王のひとり渡辺綱に片腕を切断されますが、女性の姿に変身して綱の伯母になりきり、腕を取り戻したと伝えられます。摂津国の伝承では、生まれながらにして牙があり大人以上に眼光鋭く、親が怖がって茨木村のあたりに捨てたところを、酒呑童子に拾われたということです。

・星熊童子(ほしくまどうじ):酒吞童子の手下で、大江山四天王のひとり。

・鬼人衆(きにんし):鬼人たち。

・鬼無里(きなさ):長野県の北部にあった村の名前。鬼になった美女・紅葉(もみじ)を滅したという伝説が地名の由来となっています。

・無告の鬼(むこくのおに):自分の無念を誰にも告げられぬまま死んだ者の霊。

・鬼眼睛(きがんぜい):死人のようなすさまじい目つき。

3.占い・呪い

・妖言(およずれごと):根拠なく人々を惑わせる言葉。不吉な作り話。

・未来記(みらいき):未来のことを予言、または空想した書。聖徳太子に仮託されたものが有名。

・足占(あうら/あしうら):古代の占いのひとつ。目標の位置まで「あの人に逢える」「逢えない」などと一歩ずつ交互に繰り返し、目標に達した時の言葉で占う、などの方法がありました。

・夕占(ゆうけ/ゆううら):夕方、道端に立って往来の人の言葉を聞いて占う古代の占法。

・占問橋(うらとうはし):橋を行き来する人の言葉を聞いて吉凶を占うこと。

・夢解き(ゆめとき):夢の吉凶を判断すること。また、夢判断をなりわいとする人。「夢判じ(ゆめはんじ)」。

・誓い寝(うけいね):「好きな人に逢いたい」などと神に祈って寝て、夢に現れるかどうかで結果を占う古代の占術。

・審神者(さにわ):古代の祭祀において、神の言葉を解釈して人々に伝える者。

・呪禁師/咒禁師(じゅごんし):古代の律令制で典薬寮(くすりのつかさ)に所属し、まじないをしてもののけを祓う「呪禁(じゅごん)」を行う職員。優秀な者は呪禁博士となり、呪禁生に呪禁を教授しました。

・市子/巫女(いちこ):神楽を演奏する舞姫。または霊を呼び寄せ、その思いを語らせる職業(主に女性がなる)の女性。「口寄せ」。

・巫(かんなぎ):神に仕え、舞やお祈りをして神の言葉を人に伝える人。通常は女性がなりますが、男性の場合は「覡」と書きます。「巫覡(ふげき)」。

・呪(かしり):呪文を唱えて神に祈り、人を呪うこと。

・蠱業(まじわざ):呪いまじなうこと。

・天の逆手(あまのさかて):「古事記」に登場する呪いの柏手(かしわで)。普通の柏手とは逆の打ち方をするとされていますが、具体的な動作は未詳。

・阿知女法(あちめのわざ):神や精霊を招く呪術で、神楽歌のひとつ。二人の歌人が本方(もとかた)と末方(すえかた)に分かれ、「阿知女、おおおお」と「おけ」を交互に唱えます。「阿知女作法(あじめのさほう)。

・陰陽道(おんみょうどう):古代中国の「陰陽五行説」(万物を陰と陽の働きによって説明する陰陽説と、万物の根源を木・火・土・金・水の五要素においた五行説を組み合わせた思想)に基づいて、天文・暦数をつかさどり、吉凶を占うことを目的とした学問。日本には六世紀ごろに伝来し、大宝律令のもと陰陽寮が官庁として設けられました。平安期以降、占いだけでなく呪術や祭祀活動も行う呪術宗教として体系化され、民間の陰陽師も現れました。

・陰陽師(おんみょうじ):陰陽道に基づいて吉凶を占い、災いに対処するための呪術作法を行う者。天皇・貴族の陰陽道諸祭や占いに従事した平安時代の安倍晴明や、「義経記(ぎけいき)」に登場する鬼一法眼(きいちほうげん)が有名。

・声聞師(しょうもじ/しょうもんし/しょうもんじ):中世において各地で猿楽や占いなどの陰陽師系の呪術的芸能に携わった者。「唱門師」とも書きます。

・式神(しきがみ):陰陽師が術を用いて使役する鬼神。

・管狐(くだぎつね):竹筒のなかで飼われ、持ち歩かれたとされる想像上の動物。飼い主の問いに答えるほか、予言などの妖術に用いられます。

・九字護身法(くじごしんぼう):「臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・陣(じん)・列/裂(れつ)・在(ざい)・前(ぜん)」の九字の呪文と九つの印によって身を守るまじない。中国の道教で行われていたものが、日本の陰陽道や仏教の密教、特に修験道の一派に伝わりました。九字の切り方や印の結び方は宗教・宗派によってさまざま。手刀で縦四本、横五本の格子状に宙を切る方法は早九字護身法、左右の手を使って印を一字ずつ結ぶ方法は切紙九字護身法と呼ばれます。

九字護身法

・急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう):もともとは中国漢代の公文書の末尾に「急いで律令のごとくに行え」との意味で添えられた言葉。後、悪魔祓いの呪文の終わりに添える言葉として陰陽師などが使うようになりました。

・鬼門(きもん):陰陽道で鬼が出入りし集まるとされる「艮(うしとら)」、すなわち北東の方角。鬼門の正反対にあたる「坤(ひつじさる)」の方角、すなわち南西は「裏鬼門(うらきもん)」と呼ばれ、鬼門とともに不吉とされました。

・熊王神/九魔王神(くまうじ):陰陽道においてその日の旅立ちや船出にはよくないとされる方角。

・白き虹(しろきにじ):白く見える虹。陰陽道では戦が始まる前兆とされました。

・鳴弦(めいげん):弓の弦を手で引き鳴らして妖魔を退散させる呪法。「弦打(つるうち)」「弓弦を鳴らす(ゆづるをならす)」とも言います。

・魂結び(たまむすび):衣服の一部を糸で結ぶなどして、魂が体から離れるのをとどめる呪術。

・魂呼ばい(たまよばい):死者の出た家の屋根の上で名前を呼ぶなどして死者の魂を呼び返すこと。「魂呼び(たまよび)」。

・反魂の秘術(はんごんのひじゅつ):「撰集抄」に平安~鎌倉時代の僧・西行が使ったと記された人体錬成術。山奥での修行中に友達がほしくなった西行は、人骨を集めて反魂の秘術を施して人間をつくりましたが、心のないゾンビのような存在に仕上がったため捨ててしまったと伝えられます。

反魂の秘術

・隠形術(おんぎょうじゅつ):自分の体を隠す呪術。体を隠すことができるという丸薬は「隠形薬」と呼ばれました。

・魘魅/厭魅(えんみ):呪法で死者の体を起こして人を殺させること。

・蠱毒(こどく):数多くの毒虫などを狭い容器に閉じ込め、たがいに共食いをさせ、一匹だけ生き残った「蠱」を飲食物に混ぜて人を呪い殺す古代中国の呪術。