日本語の面白い語源・由来(て-④)鉄線・定家煮・ディスカウント・テンペラ・天王山・貂・丁寧・テレコ

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テッセン

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.鉄線/テッセン(てっせん)

テッセン

テッセン」とは、中国原産のキンポウゲ科の蔓性多年草です。花は白または紫。観賞用に栽培されます。クレマチス。鉄線花。

テッセンは、蔓が針金(鉄線)のように強いことから付いた名です。

テッセンが中国から日本に渡来したのは、寛文年間(1661~1673年)と言われていますが、1474年頃の『文明本節用集』に「鉄線花 テッセンクヮ」とあることから、既に室町時代には渡来していたと考えられます。

テッセンはクレマチスの仲間で、「テッセン」を「クレマチス」と呼んだり、反対に「クレマチス」を「テッセン」と呼ぶこともありますが、本来は中国原産種のみを指して「テッセン」といいます。

「鉄線」「鉄線花」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・てつせんは 花火の花の たぐひかな(北村季吟)

・御所拝観の 時鉄線の 咲けりしか(正岡子規

・鉄線の 花さき入るや 窓の穴(芥川龍之介)

・てつせんの 花のさきなる 濁世かな(松澤 昭)

2.定家煮(ていかに)

定家煮

定家煮」とは、魚(特に鯛)を塩と酒もしくは焼酎で煮た料理です。

定家煮は江戸時代に流行した料理で、鎌倉初期の歌人の藤原定家の名に由来しますが、藤原定家が料理の考案者という訳ではありません。

この料理に「定家」の名が付くのは、定家の「来ぬ人を待つほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身も焦がれつつ」という歌の歌意からか、藤原定家がいかにも好みそうだというところからといわれ、当時の人気がうかがえる料理名です。

3.ディスカウント/discount

ディスカウントストア・ドン・キホーテ

現在「ドン・キホーテ」や「コストコ」などのディスカウントストアが日本全国にたくさんあります。

ディスカウント」とは、割引、値引きのことです。

ディスカウントは、英語「discount」の外来語です。

「count(カウント)」は「数える」、「dis(ディス)」は打消しの接頭語。
つまり、「カウントしない(数えない)」という意味です。
そこから、ディスカウントは「値引き」や「割引」の意味になりました。

4.テンペラ/tempera

テンペラ画

テンペラ」とは、顔料を卵やにかわ・はちみつ・いちじくの樹脂などで練った不透明な絵の具、またそれで描いた絵のことです。

ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」が有名ですね。

テンペラは、イタリア語「tempera」からの外来語です。
「tempera」は「正しく混ぜ合わせる」を意味するラテン語「Temperare」に由来します。

古くは、顔料と媒剤を適切に混ぜ合わせて絵の具を作ることを総称し、「テンペラ」と言いました。

テンペラは、中世末からイタリア・ルネサンス初期の代表的な絵画技法でしたが、油絵の出現により衰退しました。

現在、不透明水彩絵の具に「テンペラ」の名称がありますが、これはカゼインを使ったもので、普通は「カゼインテンペラ」といって呼び分けられます。

5.天王山(てんのうざん)

山崎合戦の地

天王山」とは、勝負を決める大事な局面、勝敗の分岐点、天下分け目のことです。

天王山は、京都府南部、乙訓郡大山崎町にある海抜270メートルの山の名前です。

天王山
天正10年(1582年)の「山崎の戦い」の際、古くから水陸交通の要地となっていた天王山を先に占領した羽柴秀吉(豊臣秀吉)が明智光秀を破りました。

その故事から、勝負を決める分岐点を「天王山」、そのような勝負を「天王山の戦い」と言うようになりました。

6.貂/黄鼬(てん)

貂

テン」とは、イタチに似た体が細い食肉目イタチ科の哺乳類です。夜行性で小動物や果実を食べます。毛皮がよいので知られ、特にキテンは最高級とされます。

テンは、中国語の「貂(チョウ・テウ)」に由来します。
中国語の「貂」は地方によって、また朝鮮語音で「トン」と発音することから、日本で「トン」が訛り「テン」となりました。

漢字「貂」の「豸」は「のそのそと這う動物」を表し、「召」は「しなやかな曲線をなす」という意味があります。

テンは敏捷な動きをするので「豸」は適切でありませんが、単に動物を表したものと考えられます。

「黄鼬」と表記するのは、「黄色のイタチ」とたとえたものです。

「貂」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・貂の尾の 金色代田 明りかな(井口弥江子)

・一瞬の 光芒引きて 貂走る(金升富美子)

・貂鳴くや 芥子(からし)色なる雲の徒(あだ)(小形さとる)

・十薬や 貂の振り向く 裏鬼門(高橋好温)

7.丁寧(ていねい)

丁寧

丁寧」とは、細かいところまで気を配ること、注意深く念入りであること、言動が礼儀正しく、心がこもっていることです。叮嚀。

丁寧は、金属製の楽器の名前に由来します。
昔、中国の軍隊で、警戒や注意を知らせるために鳴らす楽器を「丁寧」といいました。

そこから、注意深くすることを「丁寧」と言うようになり、細かい点まで注意が行き届いていることや、礼儀正しく手厚いことも意味するようになりました。

8.テレコ

テレコ

テレコ」とは、互い違いにすること、また食い違いになることです。あべこべ。主に、関西で用いられます。

テレコは、「手を加える」という意味の「手入れ」に、接尾語の「こ」が付いた「手入れこ(ていれこ)」が変化した語です。

元は、歌舞伎で二つの異なる筋を一つにまとめ、多少の関連をもたせて一幕おきに交互に展開することを「てれこ」と言いました。

そこから転じて、互い違いになることを「てれこ」と言うようになりました。
「こ」は「交互」の略と解されることもありますが、接尾語と考えたほうが自然です。

この言葉はカタカナ表記されることが多いため、「テープレコーダー」を略した「テレコ」が語源で、A面とB面を間違えて入れることから「あべこべ」の意味になったとも言われますが、「テレコ(テープレコーダー)」よりも古くからある言葉なので間違いです。

9.テポドン/大浦洞

テポドン

テポドン」とは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が開発する弾道ミサイルのコードネームです。

テポドンは、舞水端里(ムスダンニ)の旧名「大浦洞(テポドン)」に由来します。

この地に弾道ミサイルの発射基地があることから、CIA(アメリカ中央情報局)によって「テポドン」と命名されました。

テポドン

北朝鮮ではこのミサイルを「テポドン」と呼ばず、「白頭山(ペクトゥサン)」が正式名称となっています。

白頭山は、中国との国境に位置する海抜2,744メートルの高峰で、頂上には火口湖の天池があります。