「批判的精神」と「ピサ(PISA)型学力」についてわかりやすくご紹介します

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PISA型学力

大学時代に、教養部の教授から「批判的思考を持て。たとえば『新聞にこう書いてあるからです』というのは、自分の考えや意見のない受け売りであり、大学生はそのように新聞や本に書いてあることを盲目的に信じてはならない」という話を聞き、なるほどと納得した記憶があります。

ノーベル賞受賞者の本庶佑教授の「疑う心を持て」という話や、上野千鶴子東大名誉教授の「メタ知識」に通じる話です。

1.批判的精神とは

「批判的思考」は、「批判的精神」と置き換えてもよいと思います。哲学者の岩崎武雄氏(1913年~1976年)は「批判的精神」という本の中で、「正しく考えて正しい判断が下せれば、われわれはいろいろの事態に遭遇した場合に、適切な行動を取ることが出来る」と述べています。

「全てのことに対して、まずは疑いを持つ」「批判的な心構えを持つ」ことが大切だと示唆しています。また同時に「肯定のための否定」すなわち「あらゆることを疑いつつも、全ての意見から学ぼうとする謙虚な態度」も必要だと説いています。最後に正しい判断を妨げるものとして、①権威を無批判に信じ込んでしまうこと②過信に陥らないこと③常識を無批判に受け入れてしまわないことの三点を挙げています。

①の「権威」の中で、最も恐いのは新聞やテレビなどの「マスコミ」です。また、歴史上の有名な人物や、特定の分野で有名な「権威者」の言葉が常に正しいとは限りません。

デカルトの「我思う。故に我在り(Cogito ergo sum)」や、昨年ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑教授を指導した西塚泰美教授の教えも同様のことを言っているのだと思います。

ただ、人によって考え方や信念、「プリンシプル」が違いますので、その判断の結果は様々に分かれて「対立」を生むことになるのは致し方ありません。

2.「ピサ(PISA)型学力」とは

「ピサ(PISA)型学力」とは、OECD(経済協力開発機構)が測る学力のことで、PISAとはOECDが実施する学力調査「国際学習到達度調査」の略称です。

世界72の国と地域の15歳男女約54万人を対象に、「読解力」「数学的リテラシー(応用力)」「科学的リテラシー」の3分野について調査しています。

学校で習ったことをどの程度理解しているかではなく、知識や経験を活用して、実生活の様々な場面で直面する課題について、自分で積極的に考える能力のことです。

2015年に実施されたPISAの結果で、日本は「科学的応用力」が2006年の調査以降で最高の2位、「数学的応用力」も7位から5位に上昇しています。一方で、前回4位だった「読解力」は8位に落ちています。

<2019/12/4追記>2018年のPISAの調査結果公表

日本は「科学的応用力」が前回の2位から5位へ、「数学的応用力」も5位から6位に落ちました。衝撃的なのは、前回8位だった「読解力」がさらに下がって15位まで落ちていることです。なお今回も前回に引き続き「パソコンを使ったテスト形式」だったそうです。

原因については一概には言えませんが、次のようなことが指摘されています。

①(ほぼ)毎日「ネット上でチャットをする」「一人用ゲームで遊ぶ」比率は最高

②逆に「コンピュータを使って宿題をする」「学校の勉強のためにインターネット上のサイトを見る」など勉強目的の利用比率は最低

③日本の高校1年生の約8割は、授業でパソコンやタブレットなどのデジタル機器を利用しておらず、授業でのデジタル機器利用率はOECD加盟31カ国中で最低

④日本の生徒は、上記のような事情もあり、パソコンを使ったテスト形式に不慣れだったこと

⑤新聞を読んだり読書する習慣を持つ生徒が減り、活字離れが進んでいること

「知識教育」に加えて「ピサ(PISA)型学力」が注目されるようになったことは良いことだと私は思います。ただし、これが「知識教育軽視」につながらないように注意する必要があります。


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