北朝鮮の金正恩委員長はソ連のスターリンとよく似た独裁者になって来た

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スターリン

2019年2月27日~2月28日に開かれた「第二回米朝首脳会談」の決裂後の北朝鮮の金正恩委員長の動向を見ていると、ソ連のスターリンを髣髴とさせる独裁者となって来ました 。

1.スターリンとは

ヨシフ・スターリン(1878年~1953年)は、グルジア地方(現在のジョージア国)出身のソ連の政治家です。ウラジーミル・レーニン(1870年~1924年)率いるボルシェビキ派(ロシア共産党)による「十月革命」(1917年)に加わり、レーニンの死後の後継者争いではレフ・トロツキー(1879年~1940年)を制して書記長に就任し、権限を集中させ「独裁体制」を確立しました。

その後、「スターリン粛清」と呼ばれる大規模な粛清(反対派の逮捕・処刑)を行いました。「粛清」は、以前から毎年1千人~2万人程度ずつ行われていましたが、1937年には353千人、1938年には328千人の「大粛清」が行われています。

党指導者を目指してスターリンに対抗していた者は全て公開裁判(モスクワ裁判)で死刑宣告を受けています。スターリン自身の失政の責任を被告人である対抗者達の陰謀によるものと決めつけ、大粛清を国際的に正当化する手段として外国ジャーナリストに公開しました。

彼は、トロツキー派の「世界革命論」を否定して、「一国社会主義論」による国内体制維持を優先する路線を示しました。彼は、また人間不信で、猜疑心の強いパラノイア(偏執病)のようなところがあり、残忍で冷酷無比な人物であったようです。

スターリンの死後、ソ連の最高指導者となったニキータ・フルシチョフ(1894年~1971年)は、スターリンについて「彼はどこでも、誰に対しても、あらゆる事柄に関しても、敵・スパイ・裏切者の姿を見出した」と述べています。

彼はまた「プロパガンダ」により、彼自身への「個人崇拝」を作り上げました。彼の彫像が大量に造られ、ありとあらゆる場所に設置されました。スターリンを神のごとく賛美する詩集や、「スターリン小伝」という本には「最も偉大な統領」といった美辞麗句が大量にちりばめられています。

2.金正恩委員長とは

金正恩委員長(1984年?~ )は、ソ連の支援を受けて「朝鮮民主主義人民共和国」を樹立した金日成主席(1912年~1994年)の孫で、父は金正日総書記(1941年~2011年)の三男です。

祖父の金日成の派閥は、当初北朝鮮政府及び北朝鮮国内の共産主義者の中では圧倒的に少数派で弱小勢力でしたが、絶え間ない党内闘争の中で次第に勝ち抜き、「金王朝」とも呼ばれる独裁体制の基礎を築きました。

三代目に当たる金正恩委員長は、生まれながらに指導者を約束されていたわけではありません。暗殺された長男の金正男(1971年~2017年)や次男の金正哲(1981年~ )との後継者争いに勝って三代目となりました。

3.金正恩の粛清

金正日総書記の死後、金正男の後見役であった張成沢や、金正日の元側近で自分の後見人たる部下達を次々と粛清したようで、彼らは表舞台から完全に姿を消しました。

このような状況は、スターリンの粛清と似ているように私は思います。

その後、目立った粛清はなかったように思いますが、「第二回米朝首脳会談」が失敗に終わった後の2019年5月に、当時の対米交渉担当者の金革哲(国務委員会米国担当特別代表)らが、決裂の責任を問われて処刑されたとの韓国紙・朝鮮日報の報道がありました。ただし、事実かどうかは不明です。後日のアメリカCNNの報道によれば「拘束されているが生存している」とのことです。

また、粛清ではありませんが、6月3日から始まったマスゲーム・芸術公演「人民の国」(当初10月まで開催予定)が、金正恩の批判を受けて10日から休演になったとの報道がありました。マスゲームは、経済制裁で外貨収入が減る中、外国人観光客誘致の重要手段として北朝鮮でよく行われるものです。

朝鮮中央通信によれば、金正恩は初日に観覧後、創作メンバーを呼びつけ、「誤った創作・創造気風、無責任な働きぶりを深刻に批判(叱責)したそうです。

アメリカのラジオ放送「自由アジア放送」(FRA)は、公演中止の根本原因は次のような事情だったと報じています。真偽のほどはわかりませんが、多分こちらの方が真相のようです。

「北朝鮮当局は、『人民の国』公演参加者の60%程度を地方の学生らを充当したが、この学生らにきちんと食事を提供できなかった。栄養失調で風邪や腸炎などにかかる学生が続出し、練習に支障が出た。その結果、公演の完成度が金正恩の期待するレベルに届かなかった」

また、つい最近、憲法を改正して、自分の名前を明記して「絶対統治を完成させた」との報道がありました。第59条の「先軍革命路線を貫徹して革命の首脳部を防衛する」としていた「国家武力」の使命について、「偉大な金正恩同志を首班とする党中央委員会を決死擁護する」と修正したとのことです。このような修正は前代未聞で、「民主主義人民共和国」とは名ばかりの独裁専制君主国家にしたということでしょう。

これは、多分中国の習近平主席が憲法を改正して「習近平思想」を明記させることで、自分の名前を憲法に盛り込むことにしたのを真似たのだと私は思います。

4.板門店での電撃的米朝首脳会談

6月30日の板門店での「電撃的米朝首脳会談」は、トランプ大統領が選挙を意識した「外交成果をアピールするための単なるパフォーマンス」「茶番劇」で、「対話の仕切り直しに合意しただけ」の全く中身のない会談だったと私は思います。

北朝鮮では、「金正恩委員長が、過去を清算し未来に向けた歴史的な米朝首脳会談を行った」と大々的に伝えていますが、これは、何ら積極的な対策を講じていない金正恩委員長に誤ったメッセージを与える恐れがあります。金正恩委員長を利するだけの愚策だったと思います。

それともう一つ、米朝首脳会談の仲介役を自認しながらも、米朝首脳から冷ややかな目で見られてきた韓国の文在寅大統領に「花を持たせた」だけでしょう。

5.日朝首脳会談について

安倍首相は、日朝首脳会談の実現に非常に意欲を見せており、「無条件で虚心坦懐に対話する」としていますが、相手が本当の意味で「虚心坦懐に」応じるかは大いに疑問です。

トランプ大統領のように「前のめりになり過ぎない」よう、また決して北朝鮮に「譲歩し過ぎない」よう安倍首相には強く望みたいと思います。拉致問題の完全解決がないまま、過去の清算として賠償や経済協力などの資金を前倒しで与えたり、経済制裁の緩和をするだけに終わることのないようにお願いしたいものです。



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