マイナンバーカードの実質義務化はメリットよりデメリットの方が大きい!

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マイナンバーカード

政府は2024年秋をめどに、「マイナンバーカードと健康保険証との統合」によって健康保険証を廃止すると発表しました。「マイナンバーカードの実質義務化」です。

さらに「運転免許証との一体化」についても、2024年度末の予定を前倒しする案が検討されています。

河野デジタル担当大臣が、この施策を強力に推進しようとしているようです。「デジタル社会のパスポート」と政府が喧伝するマイナンバーカードを国民に行き渡らせるため、河野氏が勇んで打ち上げたのが「マイナ保険証」の義務化宣言です。

しかし、この「マイナンバーカードの実質義務化」は、メリットもありますが、デメリットの方が大きいと私は思います。

1.「マイナンバーカードの実質義務化」のメリット

(1)国民の利便性向上

住民票、印鑑登録証明書などの公的な証明書をコンビニで取得できます。

しかし、このような行政手続きが簡単になる程度です。

(2)行政の効率化

行政が国民のあらゆる個人情報を番号だけで把握できるようにすることです。

(3)公正・公平な社会の実現

税金や社会保険料の徴収漏れをなくすことです。

2.「マイナンバーカードの実質義務化」のデメリット

(1)本来「任意」であるはずの「マイナンバーカード」の「強制」になる

国民皆保険制度を採る日本では、すべての国民にカードの取得を「強制」することを意味します。カードの取得は法的に「任意」であるにもかかわらず、医療機関の受診に欠かせない保険証を「人質」にとって、強権的にマイナンバーカードを取得させようとするものです。

普及が進まないマイナンバーカードをめぐって、政府は、6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、現行の健康保険証を24年度以降に「原則廃止」する方針を盛り込みましたが、具体的な時期までは決めていませんでした。

国民の反発や医療現場の混乱を考慮しての努力目標ともいえましたが、「河野宣言」は、こうした難題を一顧だにせず、「原則廃止」の「原則」を外し「期限」も24年秋と区切りました。

8月の内閣改造で就任した河野氏は、岸田文雄首相に「骨太の方針」の具体化を指示され、腰の重い厚生労働省の尻をたたき、現行の健康保険証廃止の早期実現を強く迫ったそうです。

「マイナンバーカードを、少しでも早く、すべての国民に持たせたい」という政府の願望を、強硬策で実現しようというわけです。

(2)個人情報がマイナンバーカードに集中することによるセキュリティ面での不安

保険証や運転免許証の一体化だけでなく、銀行口座情報も一体化する計画があると聞いたことがあります。

コロナウイルスによる被害への特別定額給付金には、マイナンバーカードと紐づけられた給付が一部では行われました。しかしマイナンバーカード自体は個人の口座と紐づいてはいないために給付が遅れているのではないかという政府の判断によって、今後マイナンバーカードと個人の口座を紐づけることができるように準備が始まっているとのことです。

個人の収入や資産の財産情報、取引口座などの金融情報、税の取り立てのための税務情報、病歴や投薬履歴の医療情報、学歴をはじめとする教育情報などが対象となる可能性があります。

そこまで個人情報を集中することに、セキュリティ面での不安や恐怖を感じない人はいないのではないかと私は思います。

(3)個人情報流出の危険性の増加

マイナンバーカードを通じて個人情報を取り扱う官公署や医療機関などが増加することに伴い、個人情報流出の危険性が増加します。

官公署や医療機関の過失による個人情報流出だけでなく、故意に個人情報を漏洩する人間が現れる可能性は否定できません。取り扱う場所が多くなればなるほど、その可能性は高くなります。

(4)サイバー攻撃の脅威

個人情報が集中したマイナンバーカードは、サイバー攻撃の格好の標的になる恐れがあります。

サイバー攻撃を受けた所では、保険や運転免許業務に支障をきたすことになり、大混乱に陥る可能性があります。

(5)マイナンバーカードの盗難や紛失による悪用の懸念の拡大

今のマイナンバーカードは、家の中の大事な物を入れておく場所(タンスや金庫)に置いていれば、盗難や紛失の恐れは少ないです。

しかし保険証や免許証兼用になると、「常時携帯」する必要があるため、外出時に持ち歩くことになり、盗難や紛失の危険性は高まります。

マイナンバーカードを盗難・紛失すれば、マイナンバーカードの偽造・変造などの悪用の懸念が拡大します。

マイナンバーカードを悪用した「特殊詐欺」に使われる恐れもあります。

(6)デジタル機器の故障によって全国的に取扱不能になるリスク

何でも「デジタル化すればよい」というものではないと私は思います。故障などの不具合があった場合、その影響で、保険の取扱いや免許の更新手続きが出来なくなるなどの悪影響が全国に及ぶリスクも考えられます。

(7)全ての医療機関でデジタル機器対応が可能なのか疑問

全ての医療機関が「マイナ保険証」に対応できるデジタル機器を完備するには、相当な準備期間が必要なはずで、医療機関の負担や混乱も増加することになります。

小規模な医院や薬局では、「すべての医療機関が23年4月までにマイナ保険証の対応体制を取るのは無理な話で非現実的」「マイナ保険証に対応できないので閉院するしかない」といった悲痛な声もあります。

過疎の代表でもある島根県で実施されたアンケートでは、「保険証の原則廃止」に6割の医師が「反対」で、「賛成」は9%に過ぎなかそうですです。大都市圏でも、同様の調査結果が相次いでいます。

(8)全ての警察署や交番でデジタル機器対応が可能なのか疑問

全ての警察署や交番が「マイナ免許証」に対応できるデジタル機器を完備するには、相当な準備期間が必要なはずで、警察署や交番の負担や混乱も増加することになります。

(9)赤ちゃんや要介護の高齢者はカードの取得や更新手続が困難

赤ちゃんや寝たきりの要介護の高齢者の写真をどうするのかや、更新手続(5年で暗証番号変更、10年で写真撮り直し)をどうするのかなど多くの困難が予想されるにもかかわらず、これに対する明確な説明はありません。

(10)マイナンバーカードの盗難や紛失で再発行依頼する場合、本人確認書類がない

現在のところ、再発行の際に必要な本人確認書類としては、「1点でよいもの」として運転免許証、パスポート等、官公署が発行した顔写真付きの証明書、「2点必要となるもの」として健康保険被保険者証、年金手帳、介護保険被保険者証、社員証、学生証等が、自治体のホームページ等で例示されています。

今であれば、健康保険証や運転免許証を提示すれば「本人確認」できますが、これらが一体化されてしまうと、「パスポート」を持っている人でもない限り、「1点でよい本人革新書類」がないことになります。

3.「マイナンバーカード」の普及状況は50%強

行政庁が国民各個人にコード番号を付し、行政の合理化と能率化を図ろうとする制度(国民総背番号制)構想が1970年代にできました。

情報化社会の到来が現実味を帯びてきた1970年2月、政府は行政管理庁を中心に〈情報処理高度化運営方針〉を作成するとともに〈事務処理用統一個人コード設定の推進〉を図ることとしたのです。

しかしこれは、国民のプライバシーを侵害する国民背番号制であるとして反発を招き、国会でも追及が行われました。1972年11月、全電通などの提唱で〈国民総背番号制に反対し、プライバシーを守る中央会議〉が結成され、結局「国民総背番号制」は頓挫しました。

マイナンバーカードは、2016年1月に交付が始まってから6年余りが経ちます。

総務省は10月19日、カードの交付枚数が6305万枚となり、人口に占める割合が5割を超えたと発表しました。

しかし、交付率が進んだのは、カードを取得するともらえる「マイナポイント」(第一弾=最大5000円分、第二弾=最大2万円分)の誘因策によるところが大きく、カードの利便性が高まったからではありません。

実際、カード利用のメリットを実感する場面は多くありません。コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書を取得したり、税金の確定申告の電子申請サービスを利用できる程度しか使い道がないのが実情です。  少々の「アメ」を目当てにカードを取得した人は少なくありませんが、2万円程度の給付に踊らされない人が半分もいるというのが現実です。

4.「マイナ保険証」の利用はわずか3%

デジタル庁が1~2月に行ったアンケート調査によると、カードを取得しない理由の第1位は「情報流出が怖いから」(35%)、次いで「申請方法が面倒だから」(31.4%)、「メリットを感じないから」(31.3%)と続きます。

笛や太鼓を鳴らしても、政府が期待した以上にカードの取得は広がらず、「22年度中にほぼ全国民へ行き渡らせる」という目標の達成は絶望的といえます。

2021年10月から本格運用が始まった「マイナ保険証」に至っては、登録件数は約2500万件で普及率は2割程度、利用できる医療機関も9月時点で約6万5000施設と3割強にとどまり、実際に利用した人となると3%に過ぎないともいわれます。

保険証をマイナンバーカードと一体化させねばならない強い理由があるわけではなく、カードの取得を「強制」する方策として保険証の廃止を打ち出したとしか思えません。



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