新エネルギー基本計画は高い発電コストで国民負担が増大し日本経済をダメにする

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新エネルギー基本計画

2011年3月11日の「東日本大震災」による東京電力の「福島第一原子力発電所事故」以降、「原発反対」の世論の高まりの中で、「再生可能エネルギー」が注目を集めるようになりました。

この流れを引き継ぐ形で、経済産業省は「新エネルギー基本計画」の素案をこのほど公表しました。

2030年における電源構成は、「再生可能エネルギー」を36~38%と大幅に引き上げる目標としました。今後、「太陽光発電」のさらなる導入量拡大に向けた政策の立案が焦点になりそうです。

しかし、コストが高く供給量も不安定であるなどデメリットも多い「再生可能エネルギー」を主電源として電力の安定供給を図ろうとすれば、「火力発電」と「原子力発電」によるバックアップが不可欠ですが、その対応策は明確になっていません。

1.「再生可能エネルギー」

(1)「再生可能エネルギー」とは

再生可能エネルギー(renewable energy)とは、太陽や地球物理学的・生物学的な源に由来し、利用する以上の速度で自然界によって補充されるエネルギーのことです。

「太陽光発電」や「風力発電」はすでに馴染み深いものになっていますが、そのほかにも地熱・バイオマス・波力・潮力・流水・潮汐などによる発電があります。

(2)「再生可能エネルギー」のメリット・デメリット

①メリット

・温室効果ガスが発生しない

・エネルギーを自給できる

②デメリット

・電力供給量が不安定

・発電コストが高い

・エネルギー変換効率が低い

・自然破壊につながる

2.「新エネルギー基本計画」とは

電源構成

(1)「新エネルギー基本計画」とは

日本のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに向けた素案が、2021年7月21日に経済産業省が開催した有識者会議(総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会)で公表されました。

2030年における電源構成」は、「再生可能エネルギー」を36~38%と大幅に拡大し、さらに原子力や水素などを加えた「温室効果ガスを排出しない非化石電源電源構成の約6割を賄う方針を掲げています。

3~4年に一度の見直しが行われるエネルギー基本計画ですが、今回の焦点は「温室効果ガスの2013年度比46%削減達成に向けた道筋です。

素案では、「徹底した省エネ」と「非化石エネルギー(脱炭素電源)の導入拡大」の2つが戦略の大きな柱となっています。

省エネについては、経済成長率や人口の増減を織り込み、かつ「省エネの野心的な深掘り」によって、エネルギー需要を2013年度の363百万KLから2030年度には約280百万KLまで削減すると想定しています。

このうち30%を電力で賄うとしており、これは2013年度から5ポイント多くなっています。つまり、エネルギー需要の「電化」を進めると同時に、電力を生み出す電源の非化石化を進めるという狙いです。

3.「新エネルギー基本計画」の問題点

今回発表された「新エネルギー基本計画」は、達成不可能であるとともに、高い発電コストで国民の負担が増大し、日本経済をダメにする恐れのある愚策だと私は思います。

かつて太平洋戦争中に、無謀で大失敗に終わり「史上最悪の作戦」と呼ばれた「インパール作戦」がありましたが、これに匹敵するような悪手です。

(1)温室効果ガス削減は中国やアメリカがまずやるべきこと

温室効果ガス排出量

最近は「温暖化対策」や「脱炭素(カーボンニュートラル)」が当たり前のような風潮ですが、莫大な税金の無駄遣いである「温暖化対策」は、する必要がないと私は考えています。

もし「温暖化対策」が必要だとしても、日本が率先してやることではなく、まず大量に温室効果ガスを排出している中国やアメリカに大幅に削減させるのが筋だと思います。

(2)供給量が不安定な再生可能エネルギーのバックアップ電源が必要

「太陽光発電」にしても、台風を含む雨や曇り日はもちろん、夜間も発電できません。「風力発電」にしても、風のない日や風が弱い時は発電できません。したがって、毎日24時間、1年365日安定的に供給することは不可能です。

そのため、バックアップ電源として「火力発電」と「原子力発電」が不可欠です。しかし現在「原子力発電」は稼働停止しているものが多く、2019年の電源構成実績は6%にとどまっています。この計画で「原子力発電」は20~22%の目標となっていますが、新増設や建て替えは明記されていません。どうやって20~22%に引き上げるのでしょうか?

そうなると「火力発電」が重要な役割を担うことになりますが、火力発電は電力供給が不足するからと言って、すぐに対応することはできません。

(3)高い発電コストは日本の電力料金の値上げで国民の負担に跳ね返る

発電コスト比較

「温暖化対策」や「脱炭素」と言った世界の風潮に乗せられて「再生可能エネルギー」を推進する政府は、国民負担の増大が不可避であることをきちんと説明していません。これは国民を騙し討ちにするやり方です。

欧州でも気候変動対策に端を発する物価上昇、いわゆる「グリーンフレーション」の危険性に対し、警戒感が高まっています

(4)「太陽光発電」のソーラパネル設置や「風力発電」の風車設置は自然破壊

太陽光パネルの破損

「再生可能エネルギー」は、「クリーンエネルギー」というイメージが強いのですが、「太陽光発電」のソーラパネル設置は山をはげ山にすることで、土砂崩れなどのリスクもあり、耐用年数到来後のパネル放置で有害物質流出のリスクもあります。

(5)土地集約的なメガソーラーや風車設置の適地は少なく反対運動もあり行き詰まっている

ソーラーパネル無断設置

(6)原子力発電の電源構成比率の目標達成は事実上困難

「原子力発電」の20~22%の目標を達成するには、現在停止中の原発を含めて27基全てを稼働させ、40年の寿命を60年に延長して80%稼働する必要があり、事実上困難です。

(7)従来から省エネを徹底している日本でエネルギー需要をさらに18%削減するのは困難

これは日本のエネルギー需要を1980年頃の水準に戻す計画です。

日本はすでにコスト削減のために省エネを徹底してきたことに加え、コロナ収束後の経済回復でエネルギー重要の増加がも見込まれる中で、実現は困難です。

「乾いた雑巾を絞れ」と言うような無理難題です。

(8)「2050年カーボンニュートラル」から逆算して机上の計算で出した46%削減目標

昨年、菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、今年4月の気候変動サミットで「2030年までにCO2排出を46%削減する」と約束したため、最初から答の出ている計算問題を作らなければなりませんでした。

地球温暖化を1.5℃で止めるという目標を決め、そこから2050年ネットゼロ、2030年46%が決まりました。

できるかできないかを熟慮することなく、まず目標を掲げ、それを実現するために何が必要かを考えるという「本末転倒」の話です。

菅首相の無定見なパフォーマンスの結果、このようなことになってしまったのです。

(9)カーボンニュートラルのコストが明記されていない

IEA(国際エネルギー機関)の「ネットゼロシナリオ」では、「2050年に250ドル/トンの炭素税」というコストが明示されています。

ところが、日本の「新エネルギー基本計画」には、コストが全く書かれていません。あと9年でエネルギー消費を18%も減らすには、2030年に130ドル/トンの炭素税が必要になります。

これは消費税に換算すると約10%です。ガソリンなどの化石燃料には100%以上の税をかけないと、消費は18%も減らせません。

これは「CO2排出を削減するインセンティブのない計画」です。

(10)法的拘束力のない努力目標なので誰も従わない可能性がある

この「新エネルギー基本計画」は、法的拘束力のない努力目標なので、経済合理性に従えば誰も従わない達成不可能で現可能性ゼロの「インパール作戦」のようなものです。

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