1.蛙の目借時(かわずのめかりどき)
「猫町3丁目アパート屋根裏工房」さんのブログに「蛙の目借時」の面白いイラストと文章が載っていましたので転載させていただきます。
「蛙の目借時」は「春」の季語です。「めかり時」「目借る蛙」「目借時」とも言います。
「蛙の目借時」とは「暖かくなって睡魔に襲われる頃」のことです。春の暖かさは眠気を誘いますが、特に苗代(なわしろ)のできる頃に蛙の声を聞いていると、うつらうつらと眠くなるものです。
この「めかる」とは元来「妻狩る」の意味で、蛙やその他の生物が相手を求めて鳴き立てたりすることです。それを時候に掛けて「目借(めかり)」と洒落て、「蛙に目を借りられて眠くなる」意としたものです。古風な俳諧趣味のある季語のひとつです。
例句としては、次のようなものがあります。
・物差に師の警策や目借時 吉田冬葉
・水いとゞうまし蛙の目かり時 増田龍雨
・夜の雲に一粒荘は目借時 飯田蛇笏
・黒板にチョークの音や目借時 福川悠子
2.貝寄風(かいよせ)
「貝寄風」は「春」の季語です。「子季語」には「貝寄」があります。
大阪四天王寺の「聖霊会(しょうりょうえ)」(旧暦二月二十二日)の頃に吹く季節風のことです。四天王寺の聖霊会では、供華の筒花を住吉の浜に吹き寄せられた貝殻で作ることから、この頃に吹く西風を貝寄風と呼ぶようになったのです。
例句としては、次のようなものがあります。
・貝よせや散り敷くばかり桜貝 車庸
・貝寄せや阿倍野の梅の花も散る 紅秋
・貝寄する風の手じなや若の浦 芭蕉
・貝寄や南紀の旅の笠一つ 飯田蛇笏
3.曲水(きょくすい)
「曲水」は「春」の季語です。「子季語」には「曲水の宴(えん/うたげ)」「流觴(りゅうしょう)」「羽觴(うしょう)」「盃流し」があります。
「曲水」とは「陰暦三月上巳の日(最初の巳の日)のち三月三日に宮中で行われた行事。庭園の水の流れのほとりに座り、流される盃が自分の前を通り過ぎる前に詩歌を吟じ、出来なければ盃の酒を飲み、また下流に流すという行事」です。
現在は京都の城南宮や太宰府天満宮などで行われています。
例句としては、次のようなものがあります。
・曲水の水のみなかみや鴻の池 井原西鶴
・曲水に秀句の遅参気色あり 加藤暁台
・曲水の詩や盃に遅れたる 正岡子規
・曲水や草に置きたる小盃 高浜虚子
4.竹婦人(ちくふじん)
「竹婦人」は「夏」の季語です。「子季語」には「竹夫人」「抱籠(だきかご)」「添寝籠(そいねかご)」「竹奴(たけやっこ)」があります。
「竹婦人」とは「寝苦しい夜に抱きかかえて寝る竹を編んだもの」です。円筒状で丈は1mから1m半くらいで風通しが良く涼しいそうです。
現代ではあまり使われていないのではないかと思います。私は腰が痛い時、「(竹婦人のような)抱き枕が肩こりや腰痛に良い」と勧められて買って試してみました。
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例句としては、次のようなものがあります。
・情薄きものの一つや竹婦人 安斎桜子
・抱籠や妾かかへてきのふけふ 宝井其角
・天にあらば比翼の籠や竹婦人 与謝蕪村
・有明の月照しけり竹婦人 尾崎紅葉
5.天瓜粉(てんかふん)
「天瓜粉」は「夏」の季語です。「子季語」には「天花粉」「汗しらず」があります。
「天瓜粉」とは、黄烏瓜(キカラスウリ)の根から作った白色の澱粉です。子供の汗疹(かんしん)(「あせも」のこと)、ただれなどを防ぐのに用います。現在は滑石を主原料にして作っています。ベビーパウダーもその一種です。
私も子供の頃、よく「あせも」ができましたので、風呂上りによく天瓜粉をはたいてもらったことを懐かしく思い出します。
例句としては、次のようなものがあります。
・生まれきてこの世に十日天瓜粉 長谷川櫂
・天瓜粉子供の頃の夕方よ 杉本零
・夕月や子の顔白き天瓜粉 星野麦人
・天瓜粉ところきらはず打たれけり 日野草城