日本語の面白い語源・由来(め-②)麺麻・綿密・女々しい・莫大小・メロドラマ・滅相もない・目途

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メンマ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.麺麻(めんま)

メンマ

メンマ」とは、「中国産の麻竹(まちく)のタケノコを乳酸発酵させた加工食品」です。ラーメンのトッピングや酒の肴にします。支那竹(シナチク)。

メンマは、丸松物産創業者 松村秋水が戦後に考案した名前です。
日本では元々「支那竹」と呼んでいましたが、台湾政府から「台湾産なのに支那竹とはどいういうことだ」と抗議を受け、「麺(ラーメン)の上に載せる麻竹」の意味で「メンマ(麺麻)」と命名しました。

丸松物産は商標登録しようとしましたが、当時著名だった整髪料の「メヌマポマード」と名前が類似しているとして認められませんでした。

1968年に桃屋が商品名として採用し宣伝したことで一般にも広く普及し、「メンマ」は「支那竹」にかわる一般名称になっていきました。

メンマの語源には、中国語で麺の具を意味する「麺碼児(ミエンマール)」が変化したという説もあります。

しかし、中国語で料理の具材を意味する「菜碼」という言葉はありますが、麺の具材を「麺碼児」と称した例はありません。

そもそも、ラーメンの具にメンマ(支那竹)を使うのは、日本の中華そばが発祥であるため、メンマが中国語に由来することは考えられません。
中国語で「メンマ」は「干笋(カンスン)」といいます。

2.綿密(めんみつ)

綿密

綿密」とは、「詳しく細かいさま。隅々まで注意が行き届き、手抜かりのないこと」です。緻密。

綿密の「綿」は細かいことを表し、「密」は隙がないことを表します。
現代では、細かいという意味に重点を置いた使用が多いですが、古くは、配慮が行き届いていることを特に表しました。

3.女々しい(めめしい)

女々しい

女々しい」とは、「柔弱である。いくじがない。未練がましい」ことです。多くは男性についていいます。雄々しいの対義語です。

女々しいは、「女」を表す「め」を重ね形容詞化した語です。
主に、ふるまいなどが女性のようであることをいった言葉ですが、次第に「柔弱である」「未練がましい」の意味で、「女々しい」と使うようになりました。

「め(女)」という語は、古くは女性一般を意味していましたが、平安時代以降、女性一般を表す語には「をんな(女)」が使われるようになり、「め(女)」は女性の蔑称として用いられるようになりました。

女々しいのように、「女」を形容詞化した言葉には「女らしい」があります。
「女々しい」も「女らしい」も「女性的である」という意味ですが、「女らしい」は持つべきと考えられている女性の特質を備えていることをいい、「女々しい」と正反対の評価をした形容です。

4.莫大小/メリヤス/目利安(めりやす)

メリヤス

メリヤス」とは、「機械編みによって編んだ編み物および布地」です。伸縮性・柔軟性に富み、肌着などに用いられます。

メリヤスは、「靴下」を意味するスペイン語の「medias(メジアス)」、ポルトガル語の「meias(メイアシュ)」が転訛した語です。

メリヤスの発祥は古代エジプトで、中世に西欧へ伝わり、靴下の素材として重宝されました。
日本にメリヤスが伝来したのは、16世紀後半から17世紀後半といわれます。

漢字の「莫大小」は、「莫」が「ない」という否定を表す字で、メリヤスは伸縮性があることから、「大きくもなく小さくもない」「大小を問わない」という意味の当て字。
「目利安」は音からの当て字で、他に「女利安」とも表記されました。

5.メロドラマ/melodrama

メロドラマ

メロドラマ」とは、「恋愛を主なテーマとした、感傷的・通俗的な内容のドラマ・映画・演劇」です。

メロドラマの「メロ」は、「メロメロにする」の「メロ」ではなく、「歌」を意味するギリシャ語「mēlos(メロス)」、「ドラマ」は「劇」を意味するギリシャ語「drama」です。

フランス語経由で英語に入った「melodrama」が、日本に入って「メロドラマ」となりました。

メロドラマ
18世紀後半から19世紀初めにかけ、ヨーロッパの舞台劇で、劇中に感情を表現したり、観客の感情を揺さぶるため、音楽を伴奏として使用する手法が流行しました。それが本来のメロドラマです。

世界初のメロドラマは、1775年、ジャン=ジャック・ルソーの『ビグマリオン』といわれます。

メロドラマは、音楽の伴奏が入る娯楽的な大衆演劇を言いましたが、音楽的要素が薄れ、大衆受けする感傷的な内容のドラマといった意味が強くなり、今日では扇情的・衝撃的な内容のドラマを「メロドラマ」と呼ぶようになりました。

6.滅相もない(めっそうもない)

滅相もない

滅相もない」とは、「とんでもない。あるべきことではない」ことです。

滅相とは仏教語で、物事や生物の移り変わりを四段階に分けた四相の一つです。
四相では、事物がこの世に出現することを「生相」、存在・持続することを「住相」、変化することを「異相」、消えて無くなることを「滅相」といいます。

滅相の業が尽きて命が終わる段階の意味から、「とんでもない」という意味の「滅相な」が生まれ、「滅相な」どころではなないという意味で「滅相もない」と使われるようになりました。

7.目途/目処(めど)

目途

めど」とは、「目当て。目標。物事の見通し」のことです。

めどの語源は、植物の「メドハギ(蓍萩)」の古名「メド」からと考えられています。

易占いで使う細い竹製の棒を「筮竹(ぜいちく)」といいますが、昔は筮竹にメドハギが使われており、この棒を「メド」や「メドギ(メドキ)」と呼び、更に「メド」は「占い」の意味でも用いられました。

占いは将来の指針となるところから、「めど」が「目当て」や「目標」の意味になったということです。

ただし、「メドハギ」の語源が「めど(目処)」からとも考えられるため、特定は困難です。

その他、めどの語源には、漢字で「目処」と表記するとおり「目指すところ」の意味からや、針の糸を通す穴「めど(針孔)」を狙うところからといった説もあります。

漢字の「目途」は、本来「もくと」と読み、「めど」とは読みません。
「め(訓読み)」+「と(音読み)」という湯桶読みの言葉で、後ろを濁らせることはなじまないことから、「目途」を「めど」と読むことは、常用漢字表の音訓による使い方から外れています。

「目処」を「めど」と読むのは、常用漢字表にない読み方となるため、新聞ではひらがな表記で「めど」とするか、同じ意味の「目途(もくと)」を使っています。

しかし、「もくと」は聞き慣れない言葉で、読者は「目途」を「めど」と読んでしまうことから、慣用的に「目途」が「めど」の当て字とされるようになりました。