日本語の面白い語源・由来(め-①)目抜き通り・愛逢月・明太子・メロン・メダル・メークイン・メンチカツ

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目抜き通り

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.目抜き通り(めぬきどおり)

目抜き通り

目抜き通り」とは、「市街の中でも中心になる、人通りの多い通り。繁華街」のことです。

目抜き通りの「目抜き」は、刀の「目貫(めぬき)」(下の画像)に由来します。

目貫
目貫とは、刀剣の柄を固定させるために差し込んだ金具のことで、目釘穴を貫いて固定することからの名です。

室町後期以降、目貫には獅子・竜・虎・家紋などの装飾が施され、装飾金具としての役割が強くなっていきました。

目貫は華やかで目立つ装飾だったことから、中心的であることや目立つことの意味でも使われるようになりました。

意味に合わせて、漢字も「目抜き」と表記されるようになり、街の中心になる通りのことを「目抜き通り」と呼ぶようになりました。

ただし、「目抜き」の漢字表記は江戸時代初期からですが、それ以降も「目抜き」と「目貫」の使用は混在しており、大正時代に「目抜き通り」の意味として「目貫」と書かれた例も見られます。

2.愛逢月(めであいづき)

愛逢月

愛逢月」とは、「旧暦7月の異称」です。文月。

愛逢月は、七夕に由来する月の名です。
牽牛(彦星)と織女(織姫)が互いに愛して会う月を意味します。

3.明太子(めんたいこ)

明太子

明太子」とは、「スケトウダラの卵巣を塩漬けにし、唐辛子を加えて漬け込んだ食品」です。博多の名産。

明太子の「明太」は、「スケトウダラ」を意味する朝鮮語「ミョンテ(明太)」に由来します。

これが日本に入って「メンタイ」と発音され、メンタイ(スケトウダラ)の卵の意味で「子」を加えたのが「明太子」です。

元々、明太子は「たらこ」を意味し、唐辛子に漬け込んだ食品は「辛子明太子」と呼んでいました。

しかし、タラの子(卵)の意味では「たらこ」で事足ります。
また、「明太(めんたい)」は聞き慣れない言葉で加工食品の印象があることから、単に「明太子」と言った場合でも、加工した食品の「辛子明太子」を指すようになりました。

朝鮮語の「ミョンテ」は、中国語で「スケトウダラ」を意味する「ミンタイユィ(明太魚)」に由来します。

ロシア語でも「スケトウダラ」を「ミンタイ」と呼ぶことがあるため、ロシア語を語源とする説もあります。

4.メロン/melon

メロン

メロン」とは、「球形の果実を食用とする芳香と甘味が強いウリ科の一年草」です。

メロンは英語「melon」からの外来語で、ギリシャ語の「mēlopepōn」に由来します。
mēloは「りんご」、pepōnは「ウリ」で、mēlopepōnは「りんごのようなウリ」を意味します。
この語がラテン語で短縮されて「mēlon」となり、フランス語を経由して英語に入りました。

メロンはキュウリの仲間で、植物的にはマクワウリと同系です。
そのため、マクワウリの漢名「甜瓜(てんか)」を用いて「西洋甜瓜」といったり、単に「甜瓜」ということもあります。

「メロン」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・メロン熟る 亡き父在(ま)さば 誕生日(林翔)

・氷水 メロン振りかく 目分量(高澤良一)

・温室は メロンを作る 夏の雨(山口青邨)

・熟れメロン 妻に執刀 ゆだねたり(児玉寛幸)

5.メダル/medal

メダル

メダル」とは、「表彰や記念などのために贈る金属製の小さな記章。硬貨やチケットの代わりに用いられる金属製の円板」です。

メダルは英語「medal」からの外来語で、フランス語では「médaille」といい同源です。
「medal」はラテン語「medalia」に由来し、古代ローマの小額銀貨「デナリウス(denarius)」の半分の価値の硬貨を指した語です。

「medalia」は「メタル(metal)」と同源で、ラテン語で「金属」や「鉱山」を意味する「metallum」に由来します。

6.メークイン/May queen

メークイン

メークイン」とは、「長楕円形で凹凸が少ないじゃがいもの一品種」です。煮崩れにしくいため、カレーやシチューなどの煮込み料理に適しています。

メークインは、「5月の女王」を意味する英語「May queen」からの外来語です。
「メークイン(5月の女王)」と名付けられた由来には、中世時代の春の村祭り(メーデー)で、村娘の中から選ばれる女王にちなんだとする説。
春においしくなり、男爵いも(アイリッシュコブラー)よりも形がスマートなところからといった説や、これに春の祭りで選ばれる女王と掛けた説があります。

メークインはイギリスで栽培された品種で、1900年に登録され、日本へは大正時代にアメリカ経由で輸入されました。

国内で初めてメークインが栽培されたのは、北海道檜山郡厚沢部町の道立試験場といわれ、厚沢部町新町の農業協同組合構内には「メークイン発祥の碑」が建てられています。

「メイクイーン」や「メイクイン」などと表記されることもありますが、品種の正式名は「メークイン」です。

7.メンチカツ

メンチカツ

メンチカツ」とは、「豚や牛のひき肉と玉ねぎのみじん切り、調味料を混ぜて練り合わせ、小判形や球形にして、小麦粉・溶き卵・パン粉を付けて油で揚げた料理」です。ミンチカツともいいます。

メンチカツは日本で生まれた洋食で、この名前も和製英語です。
「メンチ」は、ひき肉を意味する英語「mince(ミンス)」が「ミンチ」となり、さらに転じた語で、ひき肉を意味します。

「カツ」は、英語「cutlet」に由来する「カツレツ」の短縮形です。
それぞれ変化した後の「メンチ」と「カツ」を合わせた語が、「メンチカツ」です。

メンチカツの語源は、はっきりしないとした説がないと言われることもあります。

それは東京浅草の洋食店で「ミンスミートカツレツ(minced meat cutlet)」として販売されていたものが起源なので、その「ミンスミートカツレツ」が変化や省略によって、「メンチカツ」になったという複雑な変化説を持ち出すからです。

上記の通り、「メンチ」と「カツ」は別々に成立した語で、「メンチ」はひき肉の意味として単独でも使われます。

料理の起源と料理名の由来が同じところにあると決めつけるからおかしいのであり、変化の過程がはっきりした言葉を組み合わせただけなので、むしろ語源の中では単純過ぎる方です。