日本語の面白い語源・由来(う-⑨)鵜呑み・海千山千・打って付け・団扇・上前をはねる

フォローする



鵜呑み

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.鵜呑み(うのみ)

鵜飼・長良川

鵜呑み」とは、食物を噛まずに丸飲みすること、物事の真意・内容をよく理解せず受け入れることです。「丸暗記」などはその例です。

鵜呑みの語源は、以下の通り二説あります。
ひとつは、鵜飼でも見られる鵜が魚を丸飲みする姿から、食物を噛まずに丸飲みすることを「鵜呑み」と言うようになり、よく理解せずに受け入れることの比喩として用いられるようになったとする説
もうひとつは、「うんのみ(にする)」という語が変化して「鵜呑み」になったとする説で、「うん」は何でも「うんうん」と肯定して聞いてしまうことが語源とする説

上記のうち、鵜が丸飲みする説が定説となっていますが、1603年の『日葡辞書』には「うのみ」と「うんのみ」の両語が見られ、上方では「うんのみ」が一般的でした。

また、「うんのみ」の方が古く、後に鵜が丸飲みする解釈が付けられ、「鵜呑み」の語が成立したとも考えられます。

ただし、「うん」が肯定の「うん」とは断定できず、鵜が丸飲みすることと肯定の「うん」をかけて生まれた可能性もあり、正確な語源は未詳です。

2.海千山千(うみせんやません)

海千山千

海千山千」とは、世の中で様々な経験を積み、物事の裏表を知り尽くしてずる賢いこと、またそのような人のことです。

海千山千は、「海に千年、山に住んだ蛇は竜になる」という言い伝えを人間の経験にあてはめたものです。

その言い伝え自体は古いですが、「海千山千」という形での用例は昭和になってからです。

また、竜になるという言い伝えには「立派な(竜になること)」といった意味が含まれていますが、海千山千は世の中を知り尽くしたことで、ずる賢くなった者を指すため、褒め言葉としては用いられません。

なお海千山千の同意句には、「海に千年山に千年」「海千河千」があります。

3.打って付け(うってつけ)

打って付け

うってつけ」とは、物事がぴったり合っていること、またそのさまのことです。

うってつけは、文字通り「打って付ける」ことで釘を打ち付けて木をぴったりくっつけることを表しました

具体的な動作を表す言葉から、現代で用いられる「うってつけの仕事」のように抽象的な概念を表すようになったのは、江戸時代後期頃です。

ただし、現代では「うってつけの」と用いられますが、かつては「うってつけな」という形容動詞が用いられていました。

4.団扇(うちわ)

団扇うちわ

うちわ」とは、あおいで風を起こす道具です。竹を細く削った骨に、紙や絹などを貼って柄をつけたもので、形は多くが円形です。

うちわの語源は、「打ち(うち)+羽(は)」の「打ち羽」です。
打つ」は叩くような動作をすることからと考えられ、「」は文字通り「羽」です。
「打つ」というのは、蚊やハエなどの虫を追い払うために打っていたことからとも言われますが、実際にそのような目的で用いられ、その用途が一般的であったか、またその目的から「打つ」に繋がったか定かではありません。

漢字の「団扇」は中国語で、「うちは(打ち羽)」に対応する字として当てられました。
平安中期の辞書『和名抄』には「団扇」を「うちは」、貴人の顔を隠す扇の「翳」を「は」、「扇」を「あふぎ」とする記述があり、この頃から円形のものを「うちは」と呼び始めました。

中世には「打輪」の表記も見られるほか、「団」の一字でも「うちわ」を意味しました。

5.上前をはねる/上前を撥ねる(うわまえをはねる)

上前をはねる

上前をはねる」とは、賃金や代金の一部を仲介者が自分のものにすることです。

上前をはねるの「上前」は、「上米(うはまい)」が転じた語です。
上米とは、江戸時代に神領などで年貢米を通すために課した通過税のことで、転じて、仕事や売買の仲介者が取る手数料を意味します。

「上前」は「上米」の音と意味から変化した言葉で、「撥ねる(はねる)」は「はじきとばす」の意味のほか、「人の取り分の一部をかすめとる」という意味で用いられる語です。

上前をはねるの同意句には「上米をはねる」があり、類句には「頭をはねる」や「ピンハネする」があります。