日本語の面白い語源・由来(せ-⑤)発条・雪辱・青春・瀬戸際・絶倫・川柳・川寿・関の山・切磋琢磨

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時計のゼンマイ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.発条/撥条/ゼンマイ(ぜんまい)

ゼンマイ

ぜんまい」とは、薄く細長い鋼を渦巻状に巻いた弾力性に富むバネです。時計や玩具などの動力に使います。

ぜんまいは、渦巻き状の巻いたその形状が、シダ植物の「ゼンマイ(薇)」(下の画像)の若葉に似ていることから名付けられました。

ぜんまい
漢字の「発条」と「撥条」は「ばね」とも読むように、「発」「撥」が「はねる」を意味し、「条」は細長いものの意味で、弾力性のある線状の金属を表しています。

ゼンマイ式の時計が作られたのは、1450年頃のヨーロッパといわれ、日本へは1612年にスペイン領メキシコの総督ドン・ルイス・デ・ベラスコから徳川家康へ、目覚まし付きのゼンマイ式置時計が贈られています。

2.雪辱(せつじょく)

雪辱

雪辱」とは、試合などに負けて受けた恥を、次に勝つことによって消し去り、名誉を取り戻すことです。

雪辱の「辱」は「辱められる(はずかしめられる)」を意味し、「雪」は「雪ぐ(そそぐ)」「すすぐ」「洗い清める」を意味します。

そこから、恥をそそぐことを意味するようになり、前回負けた相手に勝ち、受けた恥をそそぐことを「雪辱する」「雪辱を果たす」と言うようになりました。

雪辱の誤用には、「屈辱を晴らす」と混同した「雪辱を晴らす」が多く見られます。

「屈辱」は恥ずかしい思いをさせられることなので、それを晴らすことは良いのですが、「雪辱」は恥を拭い去ることなので、それを晴らすことは恥を自ら受け入れたいという意味になってしまいます。

3.青春(せいしゅん)

青春

青春」とは、年の若い時代、青年時代のことです。

青春は、陰陽五行説に由来します。

陰陽五行説には、「木・火・土・金・水」の五行があり、各々に対応する「方位」「色」「時」「神」があります。

五行の「木」は、「東」「青」「春」「青竜」に対応し、春の色は「青」であることから、「春」の異称が「青春」となりました。

「朱夏」「白秋」「玄冬」も、陰陽五行説に対応する色に基づいた季節の異称です。

春の異称「青春」が、年の若い時代を指すようになったのは、夢や希望に満ち溢れていることから、人生の春にたとえられたものです。

季節の異称の中で「青春」のみが人生の時期を表しているのは、「青二才」や「青臭い」のように、「青」に「未熟」の意味が含まれていることも影響していると思われます。

4.瀬戸際(せとぎわ)

大峰山・谷覗き

瀬戸際」とは、勝負・成否・生死の分かれ目のことです。剣が峰。

「瀬戸」は「狭門(せと)」の意味で、両側の陸地が接近して海が狭くなっている所です。「瀬戸内海」の瀬戸もこれに由来します。

古くは「せど」とも言い、「瀬戸」と表記されるようになったのは近世以降です。

「際」は境界となるところ、境目の部分を意味する言葉で、瀬戸際は「狭い海峡と海との境目」が本来の意味です。

そこから、重要な分岐点・物事の分かれ目などを「瀬戸際」というようになりました。

5.絶倫(ぜつりん)

絶倫」とは、技術や力量が人並みはずれて優れていること(また、そのさま)です。抜群。

絶倫の「倫」は、「仲間」「類い(たぐい)」を表します。

その「倫」に「絶」が付いた「絶倫」は、仲間から飛び抜けて優れていることを表し、人並みはずれて優れている意味となります。

これに「精力」を付けた「精力絶倫」の形で多用されたことから、現代では「絶倫」のみでも精力的な意味が含まれるようになりました。

6.川柳(せんりゅう)

川柳

川柳」とは、季語や切れ字などの制約はなく、口語を用い、滑稽・風刺・機知などを特色とした十七字の短詩のことです。

点者 柄井川柳(からいせんりゅう)の名前に由来します。

川柳は、江戸中期に口語詩として流行した雑俳で、俳句の「前句付け」の付け句が独立したものです。

前句付けの名高い点者であった柄井が、付け句の独立性を重視したことにはじまり、柄井の撰による句は「川柳点」と呼ばれました。

そこから、このような十七字の短詩も「川柳点」と言うようになり、短詩そのものは「川柳」と呼ばれるようになりました。

なお、川柳については「俳句と川柳の違い、季語の歴史や季語の進化をわかりやすく紹介!」「川柳と狂歌の違いとは?川柳の難しさと面白さもあわせてご紹介します。」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください

7.川寿(せんじゅ)

川寿

川寿」とは、数え年で111歳のことです。また、その祝い。

「川」の字が「111」に見えることから、111歳を呼ぶようになったものですが、111歳には「皇寿」を用ることの方が多いようです。

川寿の祝い方は、基本的に還暦と同じですが、百歳を超えた祝いには基調色が決まっていないため、川寿には特に決まった色があるわけではありません。

なお、「年齢の異称をわかりやすくご紹介します」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください

8.関の山(せきのやま)

関の山

関の山」とは、一生懸命やって成し得る限度、精一杯のところのことです。

関の山の「関」は、三重県の関町(2005年1月11日に市町合併し、現在は亀山市)のこと。
「山」は、祭りの「山車」のことです。

八坂神社の祇園祭に出される関の山(山車)は、大変立派なものでした。
そのため、関の山以上の贅沢な山は作れないないだろうと思われ、精一杯の限度を「関の山」と言うようになりました。

9.切磋琢磨(せっさたくま)

切磋琢磨

切磋琢磨」とは、学問や道徳に努め励むこと、仲間同士で励まし競いあって向上することです。

切磋琢磨の出典は、中国最古の詩集『詩経』の「衛風(えいふう)・淇奥(きいく)」によります。

「切」は骨や象牙を切ることで、「磋」はそれらを研ぐこと。
「琢」は玉や石を打ち叩くことで、「磨」は磨くことを意味します。

『詩経』ではこれらの語を用いて「切するが如く磋するが如く、琢するが如く磨するが如く」と、細工師の技工や完成した細工品にたとえて、衛の武公を讃えました。

そこから、切磋琢磨は学問や精神・人格を磨き、向上することを意味するようになりました。
「切磋」のみ「琢磨」のみで用いることもあります。