日本語の面白い語源・由来(う-⑧)腕・内股膏薬・馬・歌・有象無象

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腕

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.腕(うで)

腕相撲

」とは、肩から手首までの部分のことです。

古くは、肘から手首までを「うで」、肩から肘までを「かいな」と区別していました。
この位置からすると手(手のひら)の上にあたるので、腕の語源は「うて(上手)」の意味と考えられます。

『和名抄』や『名義抄』には「太々無岐」「タダムギ」とあり、古くは「タダムギ」とも呼んでいたようです。

漢字の「腕」は、中国で主に手首の付け根を指す字です。
「宛」は屋根の下に二人の人が丸く屈むさまを表しており、肉月に「宛」の「腕」で丸く曲がる手首を表しています。

2.内股膏薬(うちまたこうやく/うちまたごうやく)

内股膏薬

内股膏薬」とは、その時次第であっちについたり、こっちについたり、節操のないことです。

内股膏薬の「膏薬」は、練って作った外用薬のことです。
股の内側に膏薬を貼ると、右側についたり左側についたりすることから、方針や信念もなく、節操のない人のたとえとして「内股膏薬」と言うようになりました。

内股膏薬の同意句には、「二股膏薬(ふたまたこうやく)」「股座膏薬(またぐらこうやく)」があり、類句には「日和見主義(ひよりみしゅぎ)」があります。

3.馬(うま)

馬

」とは、奇蹄目ウマ科の哺乳類です。顔が長く、たてがみがあります。力が強く、速く走ります。

『日本書紀』には、馬は百済より献上されたことが記されており、「うま」は漢字「馬」の呉音「ma」に由来します。

「ma」の頭字音「m」が強調されて「mma」と発音し、「ウマ」「ムマ」と表記されたと考えられます。

「ムマ」の表記は、「梅」が「ムメ」と表記されていたのと同じく、「ウ」が鼻音であるためです。

「馬」をモンゴル語では「mori(muri)」、満州語で「morin」、朝鮮語で「mar(mus、mat)」、支那語で「ma(mak)」、トルコ語で「mare」と言います

「うま」の語源を、これら言語のいずれかに断定しようとする説もありますが、発音が「ma」で共通していると見るのが妥当です。

英語で「メス馬」を「mare」と言うが、元々、馬はオス・メスの区別がありませんでした。
これは、古代高地ドイツ語の「marah」と同源で、印欧基語で「馬」を表す「marko-」に由来します。

「馬」を表す言葉が世界的に「ma」の発音で共通するのは、遊牧騎馬民族の言葉を元に広まったためと考えられており、どの国の言語が起源と特定できるものではありません。

4.歌/唄/詩(うた)

歌

うた」とは、メロディーやリズムをつけて、言葉を声に出すもの、またその言葉(歌)。
はやりうた・長唄・小唄・地唄・端唄などの総称(唄)。
五・七・五・七・七の三十一音から成る和歌。短歌。やまとうた(歌)。
近代詩・現代詩(詩)などの意味があります。

うたは「うたふ(歌う)」の語幹で、「うたふ」は手拍子をとって歌謡することから「打ち合ふ(うちあう)」を語源とする説が有力とされています。

その他、うたの語源には「うたふ(訴)」の語根とする説や、思を写すことから「うつす(写)」の約転など数多くの説があります。

5.有象無象(うぞうむぞう)

有象無象

有象無象」とは、群がり集まった取るに足らない者たち、種々雑多なつまらない連中のことです。

有象無象は、仏教用語の「有相無相(うそうむそう)」に由来します。
有相無相とは、現象と真理、姿や形を持つものと持たないもの全てを意味する言葉で、「相」は姿や形を意味します。

「有相無相」から「有象無象」に転じた理由は、「相」が一般に理解しがたい言葉で、「像」の方が「形」を表す語として分かりやすいため「像」になりました。「像」に変わったことで、「ぞう」と発音するようになり、「象」が当てられたとされます。

あらゆる全てのものの意味から、多く集まったつまらない連中を意味するようになったのは、「有象無象」に転じた以降のことです。

「うぞうむぞう」が「うじゃうじゃ」や「うじょうじょ」などの語感と似るようになったことと、元の意味からの派生と考えられます。

「有象無象」に転じる以前は、「有像無像」と表記した例も見られますが、現代では誤りとされます。