1.すべての論文は嘘だと思って読みなさい
2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)教授は、受賞の喜びを語った記者会見の中で、自らの研究に対する姿勢を問われると、好奇心と「簡単に信じないこと」の重要性を強調した上で、「(科学誌の)ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割」と語り、自分の目で確かめることの重要性を説きました。
この考え方は、本庶教授が大学院時代に指導を受けた西塚泰美教授から、「すべての論文は嘘だと思って読みなさい」と教えられたことが、根底にあります。「疑ってかかることが科学の出発点である」とよく言われますね。2014年に「新潮45」という雑誌に寄稿した「STAP論文問題私はこう考える」でも、同様の考え方を披露されています。
2.我思う、故に我在り
「我思う、故に我在り」というのは、デカルトが「方法序説」の中で提唱した有名な命題ですね。ラテン語で「Cogito ergo sum(コギト・エルゴ・スム)」と言います。
これは、「私はあらゆることを疑ってみた。しかし、どんなに疑っても、疑っているこの私がいる(存在する)ことは、どうしても疑う余地がない」という意味です。
3.それでも地球は動く
「地動説」を唱え、「天文学の父」と呼ばれたガリレオ・ガリレイが、ローマ教皇庁による「異端審問」にかけられ、執拗に「天動説」を認めるよう強要された時、「それでも地球は動く」とつぶやいたと言われています。彼は天文学においては天才的でしたが、他の世渡り上手な学者たちに比べると、「世渡り下手だった」(頑固に自説を曲げなかった)ため、多くの敵を作り、彼らによって異端審問に追い込まれたり、軟禁状態にされたりしたそうです。
4.この世の中には「嘘」がいっぱい
私は以前書いたブログで、「新聞記事の嘘」、「報道写真の嘘」、「偉人の伝説の嘘」、「美談の裏話。物事には必ず表と裏がある!」「過去の日本の否定と再評価の節操の無さ」など色々の嘘について紹介して来ました。
我々は、書物やマスメディアによって知らず知らずのうちに「洗脳」「マインドコントロール」されることがないように、あらゆることを常に自分の頭で考える習慣・物事を疑い表面的なことよりも本質を見極める習慣を身につけるとともに、それを根気強く続ける必要があります。
学術論文が、「ネイチャー」や「サイエンス」のような海外の有名な権威ある学術誌に掲載されていると、素人目にはいかにも「真実」らしく見えてしまいますが、本庶教授は、こういう「思い込み」を戒めている訳です。
また最近は「偽(粗悪)学術誌」が増えているそうです。これは、インターネット専用の学術誌で「ハゲタカジャーナル」と呼ばれており、本社所在地は中国が多いそうです。日本から5,000本を超える論文が投稿されていますが、「研究者が業績の水増しに使っている恐れがある」との懸念が出ています。
高い掲載料を支払っても、「海外学術誌への論文掲載本数」を増やして、自らの「研究成果」に箔を付けようというのでしょうか?
2013年に開催された「Entomology-2013」という学会(カンファレンス)は、昆虫学分野の権威ある学術誌「Entomology2013」(ハイフン無し)に名前を似せた「偽学会」だったそうです。
「科学」の世界に限らず、我々も、新聞やテレビ、インターネットなどで接する様々な情報については、「真実(本当のこと)」と頭から信じ込まないで、自分の頭でよく考えて真贋を見極める必要があります。
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