日本語の面白い語源・由来(め-⑤)目高・目安・名刺・目白押し・目から鱗が落ちる・メリハリ・メロメロ

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目高

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.目高(めだか)

目高

メダカ」とは、「体長約3センチのダツ目メダカ科の淡水魚」です。細長く、目が大きいのが特徴です。

メダカは、目が大きく、体の先の高い位置に目があるように見えることから付いた名です。
そのため、漢字でも「目高」と書きます。

メダカを食べると、目が出るや目が良くなるなど、地方によってさまざまな俗信がありますが、いずれもこの魚の目に印象付けられた言い伝えです。

メダカは約五千もの地方名があり、最も方言の多い言葉として知られています。

「目高」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・笹の葉に 目高の鼻の 流れよる(石橋秀野)

・目高泳ぐ 貌(かお)三角に 宿酔(ふつかよい)(岸風三樓)

・苗代へ 分るる水の 目高哉(正岡子規

・群に入る 目高素早く 幸福に(金子兜太)

2.目安(めやす)

目安

目安」とは、「おおよその基準。見当。目印。目当て。目標」です。

目安は、形容詞「めやすし」の語幹が名詞になった語です。
「めやすし」の語構成は「目(め)」+「安し(やすし)」で、見ていて安心していられるという意味から、平安時代には「見苦しくない」「見やすい」の意味で用いられました。

鎌倉時代頃から、そろばんの位どりの印、秤の目盛りなど、見てすぐにわかるものを「目安」と呼ぶようになり、目当てや基準の意味で用いられるようになりました。

室町時代以後、読みやすく箇条書きにした文書や訴状も「目安」と言うようになったことから、訴状一般を指すようになりました。

将軍吉宗が設置した「目安箱」が政治の指針となったことから、見通しや基準の意味になったとする説もありますが、「目安箱」は「目安」の持つ「訴状」という意味から名付けられたものなので、この説は間違いです。

3.名刺(めいし)

名刺

名刺」とは、「氏名・住所・職業・身分などを印刷した小形の紙」です。

名刺の歴史は古く、中国では唐の時代から見られます。
当時のものは紙ではなく、竹木を削って姓名を刻んだもので「刺」と言いました。

そこから、名札のようなものを「名刺」と呼ぶようになり、日本でもこの語を用いるようになりました。「名札」や「名紙」ではなく、「名刺」と表記するのはそのためです。

江戸時代以前の日本の名刺は、和紙に墨で手書きされたもので、印刷名刺は開国前後といわれます。

4.目白押し(めじろおし)

目白押し

目白押し」とは、「多くの人が込み合って並ぶこと。物事が集中してあること」です。

目白押しは、小鳥のメジロの習性から生じた言葉です。

目白押し
鳥のメジロは、秋から冬に群れをなして木に止まる習性があり、メジロが押し合いへし合い木に止まることを「目白の押し合い」と言っていました。

そこから、大勢が一列に並んで押し合う子供の遊びを「目白押し」と言うようになり、多人数が込み合って並ぶことも言うようになりました。

また、込み合って並ぶ意味から、「今年は話題作が目白押し」と言うように、物事が集中してあることも意味するようになりました。

5.目から鱗が落ちる(めからうろこがおちる)

目から鱗が落ちる

目から鱗が落ちる」とは、「何かがきっかけとなり、急に視野が開けて、物事の実態が理解できるようになることのたとえ」です。目からウロコ。

目から鱗が落ちるは、キリストの奇跡により盲目の男の目が見えるようになったという、新約聖書『使徒行伝』第九章の「直ちに彼の目より鱗のごときもの落ちて見ることを得」から生まれた言葉です。

本来、目から鱗が落ちるは、誤りを悟り、迷いから覚める意味で使われていました。

6.メリハリ

メリハリ

メリハリ」とは、「緩るめることと張りること。音の高低。抑揚。物事の強弱や緩急をはっきりさせること」です。

メリハリは「メリカリ」が転じた言葉です。
「メリカリ」とは邦楽用語で、低い音を「減り(めり)」、高い音を「上り・甲(かり)」と呼んだものです。

「減り」は「減り込む」など、一般的にも使われる語ですが、「上り・甲」は邦楽以外で使われることがなく、現代では、主に尺八などの管楽器で「浮り(かり)」が使われているくらいです。

そのため、一般では近世頃より「かり」に変わって「張り」が使われるようになり、「メリハリ(減り張り)」という語になりました。

現代では音の高低よりも、「仕事にメリハリをつける」「メリハリボディ」など、強弱や緩急をはっきりさせる意味での使用が多くなっています。

7.メロメロ

メロメロ

メロメロ」とは、「肉体的・精神的にだらしないさま。態度などにしまりがないさま」です。

メロメロは、鎌倉時代から見られる語で、現代よりも多様な用いられ方をしていました。
鎌倉時代の語源辞書『名語記』には、薄い物を剥ぐ様子を表す語として「めろめろとはぐる」とあり、江戸時代の浄瑠璃では「めそめそ」に当たる意味で用いられています。

明治に入ってからは、炎が燃え広がるさま表す「めらめら」と同義で使われています。
現代では主に、異性や孫に対し「メロメロになる」と使い、態度にしまりがなくなる様子を表します。

これは燃え広がる「めらめら」の意味から夢中になる意味が生じ、「デレデレ」と似たニュアンスで「メロメロ」が使われるようにったことからと思われます。

メロメロの語源には、英語で「円熟したさま」や「豊潤なさま」を意味する「mellow」が転じたとする説もありますが、鎌倉時代に使われている「めろめろ」が英語に由来するとは考え難いものです。