日本語の面白い語源・由来(へ-①)ベテラン・平家蛍・ペンギン・紅花・辟易・へっちゃら・扁桃腺

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ベテラン

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.ベテラン/veteran

ベテラン

ベテラン」とは、「長年の経験を積み、その道に熟達している人」のことです。

ベテランは、英語「veteran」からの外来語です。
veteranは、「古い」「年老いた」を意味するラテン語「vetus」に、接尾語の「an」が付いた語です。

英語では「退役軍人」「古参兵」の意味で「veteran」を使うことが多いため、ベテランを「経験が豊富な人」の意味で使うのは日本のオリジナル表現で、「経験を積んだ兵士」の意味から転じたとするものもあります。

しかし、英語でも「熟練者」の意味で使われており、日本独自の表現ではありません。

2.平家蛍(へいけぼたる)

平家蛍

ヘイケボタル」とは、「体長は約8mmのホタル科の昆虫」です。体は黒く、淡紅色の前胸中央に太い黒の縦帯があり、尾端に発光器を持っています。

ヘイケボタルはゲンジボタルに似ていますが、小形で発光も弱いことから、源平合戦で敗北した平氏にたとえた名です。

ゲンジボタルの由来は諸説ありますが、ヘイケボタルについては、ゲンジボタルとの対比による命名と考えて間違いありません。

ちなみに、私の故郷である高槻市では「ゲンジボタル」と「ヒメボタル」を観察できる場所があります。

ホタルにまつわる思い出話。ゲンジボタルとヒメボタル」「高槻市摂津峡でホタルが見られます。子供もきっと喜びます。家族連れでどうぞ!」「山口誓子と高槻市の摂津峡にあるホタルの句碑」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

3.ペンギン/penguin

ペンギン

ペンギン」とは、「南半球に分布するペンギン目ペンギン科の鳥の総称」です。直立して歩き、翼はひれ状で、泳ぐことはできますが飛ぶことはできません。

ペンギンは、英語「penguin」からの外来語です。
penguinは、ウェールズ語の「Pen Gwyn」に由来し、penは「頭」、gwynは「白」で、Pen Gwynは「白い頭」を意味します。

特に頭が白い訳ではないペンギンに「白い頭」という名が付けられたのは、元々、Pen Gwynは北半球の絶滅種「オオウミガラス」を指す語で、ペンギンがオオウミガラスに似ていたことから、ちなんだものといわれます。

その他、ペンギンの語源にはラテン語で「太った」を意味する「pinguis」に由来する説もあり、学者によって見解が異なります。

4.紅花(べにばな)

紅花

紅花」とは、「夏に鮮やかな黄色のアザミに似た花をつけ、日が経つと赤色に変わるキク科の二年草」です。花は染料、種子は食用油の原料となります。紅の花。

紅花の語源は、文字通り「紅の花(べにのはな)」の意味ですが、花の色を表した名ではなく、この花から紅色の染料をとることに由来します。

「紅花」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・摘む女 わが世をいのれ 紅の花(池西言水)

・眉掃きを 俤(おもかげ)にして 紅粉の花(松尾芭蕉)

・鏡なき 里はむかしよ 紅の花(二柳)

・神子村や 椿の下の 紅のはな(高桑闌更)

5.辟易(へきえき)

辟易

辟易」とは、「うんざりすること。閉口すること」です。

辟易は中国の歴史書『史記』に出てくる表現に由来します。
「辟」は「避ける」、「易」は「かえる」の意で、「辟易」は「道を避けて場所をかえる」の意味でした。そこから、「相手を恐れて逃げ去る」の意味に転じました。

日本でも、辟易は「勢いに押されてたじろぐ」「逃げる」の意味で使われていましたが、相手に対して何もできなくて困るところから、近世後期に、嫌気がさしてうんざりすることや、閉口することの意味で使われるようになりました。

6.へっちゃら

へっちゃら

へっちゃら」とは、「少しも気にせず平気なさま。容易にできるさま」です。

へっちゃらは、同じ意味の「へいちゃら(平ちゃら)」が変化した語です。
へいちゃらは「平気」の「平」に、「軽さ」や「適当さ」のニュアンスを表現するために「ちゃら」が添えられたものです。

この「ちゃら」は元々①「でまかせ」や「嘘」、②貸し借りをなしにすること。差し引きゼロ。帳消し、③なかったことにすること、を意味し、「おべんちゃら」や「ちゃらんぽらん」などにも使われている語ですが、「へっちゃら(へいちゃら)」の「ちゃら」の場合、そのような具体的な意味までは含まれていません。

7.扁桃腺(へんとうせん)

扁桃腺

扁桃腺」とは、「咽頭の粘膜の中で発達したリンパ組織の集合体・扁桃の俗称」です。病原体の侵入を防ぐ役目を果たします。

扁桃には、口蓋扁桃、舌扁桃、咽頭扁桃、耳管扁桃の4種類あり、単に「扁桃(扁桃腺)」と言った場合は口蓋扁桃を指し、これが扁桃の語源にもなっています。

口蓋扁桃は、口を開けた時に両側に見えるもので、その形がアーモンドの種子に似ていることから、アーモンドの別称「扁桃」の名が付けられました。

団塊世代の私が子供の頃は、身体検査で「扁桃腺肥大」と指摘されると切った方が良いと言われ、姉は切りましたが、かえって風邪をひきやすくなりました。ちなみに私も「扁桃腺肥大」といつも指摘されていましたが、手術が嫌で切りませんでした。

近年は「扁桃腺肥大」でも、切除はあまり推奨されなくなったようです。