日本語の面白い語源・由来(へ-②)勉強・ぺーぺー・へっぴり腰・蛇・ペットボトル・蛇苺・ペンション

フォローする



勉強

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.勉強(べんきょう)

勉強

勉強」とは、「学問や技芸を学ぶこと。経験を積んで学ぶこと。物事に精を出すこと。努力すること。商品を値引きして安く売ること」です。

勉強は「勉め強いる」と書くように、本来は気が進まないことを仕方なくする意味の言葉でした。

商人が頑張って値引きをする意味の「勉強」は、江戸時代から使われており、学問や技芸を学ぶ意味の「勉強」よりも古いものです。

明治以降、知識を得るために努力することが美徳とされるようになったことから、「勉強」は「学習」とほぼ同じ意味で使われるようになり、一般的に「学習」を意味するようになりました。

2.ぺーぺー/ぺいぺい/ぺえぺえ

ペーペー

ペーペー」とは、「地位の低い者、技量の劣っている者をあざけっていう語」です。自分を卑下しても言います。下っ端。

ペーペーは、「ぺいぺい」の変化した「ぺえぺえ」がカタカナ表記されるようになった語です。

「ぺいぺい」は、漢字で「平平」とも書かれました。
地位の低い者や技量の未熟な者は、抜きん出るところがないことから、「へいへい(平平)」と表されたものと思われ、役職のない社員を「平社員」というのも同様の表現です。

また、下っ端の者は「へいへい」と媚びへつらうところからとも考えられます。
のんびりとした様を表す「へへやか」と関連付ける説もありますが、「ペーペー(ぺいぺい)」の使用は明治時代頃からで、「へへやか」は平安・鎌倉時代からです。

その間、「へへやか」から「ぺいぺい」へ変化した跡も見られず、下っ端の意味に変化した跡も見られないため、全く関係ない語と考えるのが妥当です。

3.へっぴり腰(へっぴりごし)

へっぴり腰

へっぴり腰」とは、「自信のない態度。びくびくした態度。及び腰」のことです。

へっぴり腰の「へっぴり」は、「へひり」の促音添加した語です。
「へひり」は「屁をひる(おならをする)」の意味で、漢字では「屁っ放り腰」と表記します。

恐る恐る高い所で作業したり、自信なくバッターボックスに立つ時など、中腰で尻を後ろに突き出した不安定な姿勢になります。

その姿勢は、おならをする時のような姿勢であることから、自信のない態度やびくびくした態度を「へっぴり腰」と言うようになりました。

4.蛇(へび)

ヘビ

ヘビ」とは、「熱帯・亜熱帯に多い有鱗目ヘビ亜目の爬虫類の総称」です。円筒形で細長く、鱗で覆われ、体をくねらせて前進します。カエル・ネズミ・小鳥や鳥の卵を捕食します。有毒種と無毒種があります。ながむし。くちなわ。かがち。

ヘビの語源には、「ハヒムシ(這虫)」の略など這うように動く様子からとする説。
ヘビは脱皮をすることから、「ヘンミ(変身)」の転とする説。
小動物を丸呑みするところから、「ハム(食む)」の転といった説があります。

ヘビが体をくねらせて前進する姿は特徴的であり、脱皮を意味する「ヘンミ」が「ヘミ」「ヘビ」へと変化する過程で、「ビ(尾)」の意味が加わったとも考えられます。

また、「ハブ」や「ハミ(マムシ)」は、「ハム(食む)」からと考えられているため、「食む」を語源とする説も十分に考えられます。

古く、「ヘビ」はヘミ」と呼ばれており、「ヘミ」が変化して「ヘビ」になったと考えられています。

しかし、ヘビの方言には、「ヘミ」「ヘブ」「ヘベ」「ハビ」「ハベ」「ハム」「ハメ」「バブ」「パプ」「ヒビ」などのほか、これら二音の中間に「ン」を挟んだ「ヘンビ」「ヘンミ」など数多くの呼称があり、どの語が元で多くの方言が生じたか定かではありません。
そのため、ヘビの語源もどの説が正しいとは言い切れません。

ヘビの漢字「蛇」の「它」は、頭の大きいヘビを描いた象形文字で、元々は「它」のみで「ヘビ」を表しました。

しかし、「かれ」「それ」などの第三人称に「它」が転用されたため、「虫」を加えて「蛇」と表すようになりました。

「蛇」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・草の葉の 蛇の空死(そらじに) したりけり(小林一茶

・樹々深し 蛇の落たる 傘の上(三宅嘯山)

・蛇穴を いでゝ耕す 日に新た(飯田蛇笏)

・蛇が殺されて居る 炎天をまたいで通る (尾崎放哉

5.ペットボトル/PET bottle

ペットボトル

ペットボトル」とは、「軽くて割れにくく、ジュースや醤油などの液体を入れる容器として多く用いられるPET製の瓶状の容器」です。

ペットボトルの「ペット」は愛玩動物の意味ではなく、ポリエステルの一種である「ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate)」のことで、略して「PET」と言います。

ポリエチレンテレフタラート製の容器なので「PET bottle(ペットボトル)」と呼ばれるようになりました。

英語では「plastic bottle(プラスティックボトル)」と呼ぶため、「ペットボトル」は和製英語であるとか、「PET」は「ピー・イー・ティー」としか発音しないなどと言われます。

しかし、「plastic bottle」が一般的な呼称というだけで、「PET bottle(ペットボトル)」が和製英語でもなければ、「PET」を「ペット」と呼ばない訳でもありません。

6.蛇苺(へびいちご)

蛇苺

ヘビイチゴ」とは、「道端や畦(あぜ)、原野に自生するバラ科ヘビイチゴ属の多年草」です。クチナワイチゴ。毒イチゴ。

ヘビイチゴは漢名の「蛇苺」に由来します。

中国ではヘビが食べるイチゴと考えられていたことや、このイチゴを食べる小動物をヘビが狙うこと、ヘビの出そうな場所に生えることなどから、「蛇苺」と呼ばれるようになりました。

ヘビイチゴの別名「クチナワイチゴ」の「くちなわ」は、ヘビの異名です。
「毒イチゴ」は、果実の赤く熟した色やヘビとの連想から付いた名で、果実に毒が含まれている訳ではありません。

ただし、ヘビイチゴの果実はあまり味がしないので、無毒ですが食用とされず、料理にも向いていません。

「蛇苺」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・蛇いちご 半弓提げて 夫婦づれ(服部嵐雪)

・雨のせて 川の明るさ 蛇苺(岡本眸)

・蛇苺 ふるき社(やしろ)の 女坂(浅田伊賀子)

・流水に 真紅うつらず 蛇苺(山口誓子

7.ペンション/pension

ペンション

ペンション」とは、「西洋風の民宿」です。

ペンションは、フランス語「pension」からの外来語で、英語も「pension」です。
元々「pension」は「年金」を意味する語で、年金生活者が自宅の空き部屋を学生寮や下宿式のホテルにしたため、比較的安価で泊まれる宿泊施設を「pension」と呼ぶようになりました。

上記のように、ヨーロッパでは低価格で泊まれる宿を指して「ペンション」と呼び、建てられる場所も様々です。

日本では「西洋風民宿」や「小さいホテル形式の民宿」を指すようになったため、その大半はリゾート地や観光地に建てられ、高級なペンションも多く存在します。