日本語の面白い語源・由来(あ-⑬)阿弥陀くじ・あばよ・朝飯前・秋・挨拶

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阿弥陀くじ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.阿弥陀くじ(あみだくじ)

阿弥陀くじ

アタリ、ハズレ、あるいは順番などを決める際に便利な「あみだくじ」。

人数分の線を引けば必ず全員が別のゴールに行き着き、かつ「どこに行くかな~」と指で線をなぞるときのゲーム性を秘めたあみだくじは、盛り上がりと平等性と簡易性が相まって、年代を問わず広く人々に親しまれている最もポピュラーなくじの1つです。

あみだくじ」とは、線を引いた片端に当たりや外れの印、金額や賞品などを書いて隠し、各自が選択して引き当てるくじのことです。現在は、平行線の間に横線を入れ、はしご状にすることが多くなっています。「アミダ」とも言います。

もともとは、人数分の線を引き、一端にそれぞれ異なる金額を書いて隠し、各自が引き当てた金額を出させ、集めた金で茶菓子などを買い、平等に分配する仕組みでした。現在では、用途は広がっており、何かの順番を決めたり、何かで言い争った場合に○を引き当てた方が勝ちとしたりして、幅広く利用されています。

あみだくじは、比較的新しい言葉ですが、この形式のくじは室町時代から行われていました。
当時のあみだくじは、放射線状に線が引かれたもので、その線が阿弥陀如来の後光に似ていたことから「阿弥陀の光」と呼ばれていました

阿弥陀如来の後光

その「阿弥陀の光」から「あみだくじ」という名に変わったのですが、現在は放射線状ではなく、線を平行に引くのが一般的です。

2.あばよ

柳沢慎吾

俳優の柳沢慎吾が決め台詞として用いていることでも知られます。

あばよ」とは、別れの挨拶として相手に掛ける言葉ですが、不良っぽい言い方でもあり、「さようなら」よりくだけたぞんざいな言い方です。

あばよの語源には、「さらばよ」の略「また逢はばや(またあはばや)」の転「ああ、あれは」という感動を示す語「あは」に、助詞の「よ」がついたものなど諸説あります。

最も注目されている語源は、「あんばいよう(按配よう)」の略語とする説です。
「あんばい」は「体調」の意味で近世から使われており、「あばよ」も近世から使われている言葉であるため、意味と語形の両面から、この説が妥当とされています。

また、幼児語の「あばあば」に由来する説もありますが、大人が使う「あばよ」の語源が幼児語にあるとは考えられません。

余談ですが、私が中学生の時の担任の先生が、大学で「やくざ社会の隠語の研究」の一環で、ヤクザの親分の家に一時寄宿していたことがあったそうです。

その先生が「ごいしょうか」という侠客言葉(隠語)を教えてくれました。これは「暇乞いしようか」という意味だそうです。

最近の若者言葉に「あざす」というのがありますが、これは「有り難うございます」を省略したものだそうです。

よく似た例に「おす/おっす(押忍)」があります。

これは、親しい間柄の若い男性同士が道などで出会った時に交わす挨拶語、武道家や応援団の掛け声風な挨拶語ですが、「おはようございます」を省略したものだそうです。

3.朝飯前(あさめしまえ)

朝飯前

朝飯前」とは、きわめて簡単なこと、非常に容易なことです。

朝飯前は文字通り、朝飯を食べる前のことです。朝飯を食べる前は、空腹かつ時間もないため、簡単な仕事しかできません。特に、江戸時代中頃までは食事が一日二回だったため、朝飯前には力が入りません。

そのようなことから「朝食前でも仕上げられる簡単な仕事」という意味で、「朝飯前」と言われるようになりました

「朝飯前」と同様に簡単なことを意味する表現で「お茶の子さいさい」があります。「さいさい」とは、調子を取るために入れる囃子詞(はやしことば)です。

「お茶の子」とはお茶と一緒に出される、簡単に食べられる茶菓子という意味や、一部の地方では朝食前に食べる茶粥のことを指すという説などがあります。そこから、「お茶の子さいさい」は「朝飯前」と同じ意味を持つと考えられています。

4.秋(あき)

秋

」とは、四季のひとつで、夏と冬の間の季節です。太陽暦では9月から11月まで、旧暦では7月から9月までです。

二十四節気」では立秋から立冬まで、天文学上では秋分から冬至までを言います。

秋の語源には、空の色が「清明(あきらか)な時期」からとする説
穀物などの収穫が「飽き満ちる(あきみちる)季節」からとする説
紅葉などに使われる「紅(あか)」が転じたとする説などあります。

ほかにも、草木の葉のアキマ(空間)が多いの意〔類聚名物考・俚言集覧〕、アク(開)の義。またはオキ(大)の転。穀物のみのりが大であるの意〔東雅〕、春の有に対し、ナキ(無)の義〔日本釈名〕という説もあります。

5.挨拶(あいさつ)

挨拶

挨拶」とは、人に会ったり別れたりするとき、儀礼的に取り交わす言葉や動作、儀式や会合などで述べること、またその言葉です。

「挨」は押す、「拶」は迫る意で、本来は禅家で門下の僧に押し問答して、その悟りの深浅を試すことを表す語でした。

禅宗でこれを「一挨一拶(いちあいいっさつ)」と言ったことから、一般に問答や返答のことば、手紙の往復などを挨拶と言うようになりました。

余談ですが、「挨拶」の漢字の覚え方は、「ム矢くタ」です。

前に「挨拶や感謝の言葉の大切さと、親しき中にも礼儀ありについて考える」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。