「タマムシ」にまつわる思い出話

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玉虫

「玉蟲や妹が箪笥の二重ね」これは村上鬼城の俳句です。

タマムシの羽を箪笥に入れておくと、着物が増えるという言い伝えがありますね。幸運を招く縁起の良い虫で、「吉丁虫(きっちょうむし)」という異称もあります。

鎌倉時代から江戸時代にかけて出来たおとぎ話は「御伽草子(おとぎぞうし)」と呼ばれています。その中に「玉虫の姫君」に思いを寄せる蝉や螽斯(キリギリス)の物語である「玉虫の草子」があります。

「玉虫を恋いし恋いしと思うまに 身はうつせみとなるぞ悲しき」なかなか風流ですが、夢破れた蝉の悲しい気持ちを表す歌ですね。

皆さんは、法隆寺にある「玉虫厨子」のことはお聞きになったことがあるでしょう。確か、中学の教科書にも載っていたように思います。

この「玉虫厨子」は、飛鳥時代の仏教工芸品で、金銅金具の下の装飾には、大量(はっきりした枚数はわかりませんが、約6,600枚だったようです)のタマムシの羽が使用されていましたが、長い年月の経過で現在はほとんど失われているそうです。

なぜ大量のタマムシの羽を使ったのか、仏教の工芸品なのに殺生な気もしますね。螺鈿(らでん)の代わりだったのでしょうか?

さて、私が最初にタマムシと出会ったのは、お寺の板敷でたまたま見つけたものです。茶色いその虫は、形はタマムシに似ているけれども、色は焦げ茶色で汚い印象しかありませんでした。家に帰って図鑑で調べると、「ウバタマムシ(姥吉丁虫)」でした。寺の松の木にいたのでしょう。

光沢ある緑と赤の縦縞のあるタマムシ、これは「ヤマトタマムシ(大和玉虫)」と呼ばれています。英語では、「jewel beetle(宝石のような甲虫)」です。

私は子供の頃は、見たことがありませんでしたが、最近5年間で4回も遭遇したことがあります。一回目は吹田市の片山公園、二回目は伊丹市の昆陽池公園、三回目は摂津峡公園でした。いずれも、樹林近くの道を歩いていると、突然羽を煌めかせて林の中から飛んできたのです。羽を広げているのでかなり大きく見えました。最初は、「トノサマバッタ(殿様飛蝗)」か、大きなハチかなと思い、咄嗟に避けようとしました。タマムシの食草は、欅(ケヤキ)や榎(エノキ)の葉ですが、最近欅の街路樹が多くなったことが、タマムシの増えた原因かと思われます。

四回目は自宅の前を掃除していた時、敷石の所で見つけました。手で触っても動かないので死んでいるのかと思ってゴミ袋を取りに家に入って戻って来ると、いなくなっていました。「死んだふり」(擬死状態)をしていたのだと気付きました。クワガタムシが捕まえられそうになると「死んだふり」をするのは、昆虫採集の経験で知っていましたが、タマムシもそうだと初めて知りました。

皆さんの中で興味のある方は、夏の暑い日の午後に欅の街路樹のある付近を歩いて、木の上の方を見ていたら、タマムシが飛び回っているのに出会えるかもしれませんよ。



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