雲は最も日常的で身近な自然だが、眺めていると太古の昔に立ち返る気分になる

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雲

1.雲は最も日常的で身近な自然

昔の人は、雲は山で生まれると考えていたようです。確かに山ではよくガスが発生し、それが地上から見ると雲に見えるというのは実感としてわかります。一方、海面の水蒸気を含んだ暖かい空気が上昇し、冷やされることによっても雲は出来ます。「台風」はその典型的なものでしょう。

雲は、太陽や月や星とともに、我々にとって最も日常的で大昔から変わらない身近な自然と言えます。特に秋は様々な美しい雲が見られる季節ですね。

2.雲の種類は10種のみ

雲の種類

大気中の水滴や小さな氷がまとまって空に浮かんで雲となるわけですが、様々な特徴を持った雲があります。

と言っても、雲の種類はたった10種類しかありません。高い所に出来るものから順番に、①巻雲②巻積雲③巻層雲④高積雲⑤高層雲⑥乱層雲⑦積雲⑧層積雲⑨層雲、そして最後に下の方から天高く発達する⑩積乱雲です。

巻雲は「すじ雲」、巻積雲は「うろこ雲」「いわし雲」「さば雲」、巻層雲は「かすみ雲」、高積雲は「ひつじ雲」、高層雲は空一面を覆う乳白色の雲、乱層雲は「あま雲」、積雲は青空にぽっかり浮かぶ綿菓子のような雲で、雲の代表選手です。層積雲は「くもり雲」「まだら雲」、層雲は山登りで霧の中にいるような時の雲、積乱雲は「入道雲」です。

3.雲を詠んだ和歌

7世紀後半から8世紀後半にかけて編まれた万葉集には、4500首以上の和歌が収められていますが、その中に「雲」を詠んだ歌は200首もあるそうです。3首ほどご紹介します。

三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや(額田王)

大君は神にしませば天雲の雷(いかづち)の上に庵(いお)りせるかも(柿本人麻呂)

ここにして家やもいづく白雲のたなびく山を越えて来にけり(石上卿)

4.すじ雲が出ると雨が近い

巻雲

最近、テレビの天気予報を見ていたら、気象予報士が「すじ雲や飛行機雲が出ると近く雨が降ります」と解説していました。それから注意して雲を見ていると、青空にきれいなすじ雲が出ている晴天の日がありました。今日はこんなに良い天気なのに、本当に明日は雨になるのだろうかと半信半疑でしたが、結果は気象予報士の言った通り翌日雨になりました。

5.昔の絵巻物の「雲」

源氏物語絵巻雲入り

ところで、昔の絵巻物では、上から見下ろした構図の時、「源氏物語絵巻」のように「吹抜(ふきぬき)屋台」と言って、建物の屋根と天井を取り払った描き方もありますが、「洛中洛外図屏風」のように、上の方に「(金)雲」がかかったような描き方もあります。

洛中洛外図屏風

これは、「画面の区切り」や「遠近法」の役割を持たせる大和絵独特の技法です。「春日権現験記絵巻」のように「霞」を入れる場合もあります。これは「すやり霞」と呼ばれます。

すやり霞

6.神棚の上に貼る「雲」

神棚の雲

他の地方ではどうかわかりませんし、関西でも家によってやり方が違うかも知れませんが、私の古い家では、神棚の上に当たる天井には「雲」と書いた紙を何枚も貼っていました。これは「雲字」と言いますが、「雲板」というのもあるそうです。新しい今の家でも、それは引き継いでいます。神様の上を通ると罰が当たるということで、そこには「雲」があることにしているのでしょう。

7.行雲流水

「行雲流水」という言葉があります。これは空行く雲や流れる水のように、深く物事に執着しないで、自然の成り行きに任せて行動するたとえです。

私は子供の頃、夏休みに入道雲がみるみる大きくなっていく様子を面白く眺めていることがありました。また、冬に風邪を引いた時、寝床からガラス障子を通して、空の雲が形を変えながら流れて行くのをじっと見つめていた記憶があります。

8.雲を眺めていると太古の昔に立ち返る気分になり癒される

また、摂津峡などに行って芥川の流れの音を聞きながら水面を見つめていると、空の雲を眺めていた時とよく似た「静かな内省的な気持ち」になったものです。「暖炉の火」や「蝋燭の火」あるいは「どんど焼き」やキャンプの時などに「燃える火」を見つめている時も似たような気持ちになります。

同じく身近な自然でも、太陽や月や星はじっとしているからかさほど惹かれません。

雲や水の流れや燃える火は、太古の昔の我々の祖先も同じように見ていたと想像するからか、何か人間を「太古(原始)の昔の気持」に立ち返らせ、「瞑想的な気分」にさせるように思います。そしてとても「癒される」ような気持ちになります。果たしてこれは私だけでしょうか?

秋の雲 うろこ雲とひつじ雲を見分ける方法