「稲の花」や「麦の花」とは?

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稲の花

前に「桐の花」や「松の花」の記事を書きましたが、私も70歳を過ぎても自然のことについて知らないことがいかに多いかに愕然とすることがあります。

夏目漱石が大学予備門の頃、正岡子規と郊外を散歩していて、田んぼの稲を見て「あれは何という植物だい?」と子規に尋ねたので、「あれは、僕たちが毎日食べている米が出来る稲という植物じゃないか」と教えてやったのですが、漱石が稲を知らなかったことに驚いたという話は有名です。

漱石は「明治」になる前年の1867年に江戸の牛込に生まれた「都会人」なので、田んぼを見たことがないか、あってもそこで稲が作られていることに気付かなかっただけでしょう。「見れども見えず」だったわけです。

1.稲の花

稲花

田んぼを見たことはあっても、稲に近づいてじっくり見る人は滅多にいませんので、農家の人以外で稲の花を見たことのある人はほとんどいないと思います。

ある写真家のブログを見ていると、稲の開花の撮影がなかなか大変なことがよくわかりました。撮影のために家の前の田んぼに長時間しゃがんでいても、いつまで経っても発見できなかったということです。曇りや低温の日は開花せず、天候条件や温度、時間帯が重要だそうです。4日間苦労を続けた結果、条件の合った日に田んぼに出て、稲の開花に立ち会えたそうです。開花の瞬間を見た時は感動したそうです。

平年であれば、稲の花が咲き穂が出る時期は、梅雨明けして晴れの日が多くなる高温で猛暑の頃です。稲はもともと高温を好む植物で、一年で最も暑い頃に開花受粉する性質があるのです。

稲は自分の花粉で受粉する「自家受粉」の植物なので、同じ穂の中で開花受粉が成立します。稲の花をよく見ると、すでにお米の殻が出来ていて、その中に雌しべ・雄しべが見えています。

稲の開花

2.麦の花

麦の花

田んぼは、ほとんどの人が見たことがあると思いますが、麦畑は少ないので見たことがある人も少ないはずです。したがって、麦の花を見たことがある人はほとんどいないと思います。私も、実際の麦の花を見たことはありません。

麦は4月ごろ穂が出て、それから5~6日たつと花が咲きます。開花して実が熟すのに35日くらいかかります。

余談ですが、「麦花(むぎばな)」という植物があります。これは「馬酔木(あせび)」の別称です。

3.稲の花や麦の花を詠んだ俳句

俳句の季語に「稲の花」や「麦の花」があるということは、このような目立たない花にも俳人の目が注がれている証拠です。細やかな自然観照の賜物だと思います。

①稲の花

「稲の花」は「秋」の季語です。

・湯治二十日山を出づれば稲の花(正岡子規)

・どの家も飯食ふ昼や稲の花(高浜虚子)

・物買て宿を出れば稲の花(寺田寅彦)

・夕影に稲の花水鯉育つ(飯田蛇笏)

・隣村の相撲太鼓や稲の花(会津八一)

・南無大師石手の寺よ稲の花(正岡子規)

・手品師の田舎回りや稲の花(会津八一)

②麦の花

「麦の花」は「夏」の季語です。

「麦の花」を詠んだ俳句は、さすがに花が地味なせいか残念ながら見当たりませんでした。

麦にまつわる俳句としては、「麦の秋」(または「麦秋」)や「麦畑」が多いようです。



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