「蝶(チョウ)」にまつわる面白い話

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菜の花に止るモンシロチョウ

蝶(チョウ)と言えば、モンシロチョウやアゲハチョウを思い浮かべる方が多いと思いますが、日本にもさまざまな面白い蝶がいます。また、蝶にまつわる面白い話もあります。

1.モンシロチョウは「桜」の花には止まらない

童謡・唱歌の「ちょうちょう(蝶々)」の歌詞に、次のようなフレーズがあります。

ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ 菜の葉にあいたら 桜にとまれ

桜の花の 花から花へ とまれよ遊べ 遊べよとまれ

ここで歌われている蝶は、春の季節なのでモンシロチョウだと思います。しかし、モンシロチョウは桜の花には止まりません。

モンシロチョウとタンポポモンシロチョウとハルジオン

もちろん、花の蜜を吸うために、タンポポやハルジオンなどの草花に止まることはあります。

モンシロチョウは生態的に見て、キャベツや菜の花などアブラナ科の植物の葉に卵を産み付けるために飛び回りますが、樹木である桜の花に止まることはありません。ソメイヨシノには卵を産み付ける葉がまだなく、桜の葉はモンシロチョウの幼虫の食草でもないからです。

キャベツに産卵するモンシロチョウ

この歌は、「小学唱歌」として1881年に作られました。元の歌詞は次の通りです。

蝶々 蝶々 菜の葉に止れ 菜の葉に飽いたら 桜に遊べ

桜の花の 栄ゆる御代に 止れや遊べ 遊べや止れ

戦後の1947年以降は、上の方の歌詞に変更されました。元の歌詞は戦前の天皇制や天皇崇拝を連想させるので、GHQから変更を指示されたのでしょう。

前に「蛍の光には3番・4番の歌詞がある!戦後、歌詞が抹消・改作・改変された唱歌」という記事に書きましたように、「ちょうちょう」のような例が他にもいくつかありました。

元の歌詞は、「桜の花の栄ゆる御代」を引き出すための枕言葉として「桜に遊べ」を持って来たと思われます。しかし、戦後の歌詞の改変では、「桜」を「キャベツ」や「菜の花」と同列のように扱っていますので違和感があるのです。

元の歌詞を作った人は「春と言えば桜→桜と言えば日本」という単純な連想だったのでしょうが、歌詞を変更した人も、モンシロチョウの生態を全く知らない人だったのでしょう。

2.オオムラサキやルリタテハは樹液に集まる蝶

オオムラサキルリタテハ

蝶は全て「草花の蜜を吸う」と思っている方も多いと思いますが、「樹木の樹液」を吸う蝶もいます。国蝶のオオムラサキ(上の左の画像)やルリタテハ(上の右の画像)のような雑木林に生息する蝶です。

「樹液」とは、樹皮などから分泌される液のこと、甘酸っぱい発酵酒のような匂いがします。カブトムシやカナブン、スズメバチなども好んで樹液に集まります。

この「樹液酒場」(餌場)でのオオムラサキの生態は勇ましく、スズメバチなど他の昆虫を翅で蹴散らしながら樹液を吸う姿がよく見られます。

樹液に集まる昆虫

余談ですが、ルリタテハは成虫のまま越冬します。

越冬するルリタテハ

3.アゲハチョウは柑橘類の葉に産卵する

花の蜜を吸うアゲハチョウ蜜を吸うアゲハチョウ

アゲハチョウも、モンシロチョウなどと同様に花の蜜を吸うためにいろいろな花に止まります。

しかし、産卵するのは必ずミカンや山椒(さんしょう)などの柑橘類です。これは幼虫の食草が柑橘類の若葉であるためです。

モンシロチョウが必ずアブラナ科の植物の葉に産卵するように、アゲハチョウが柑橘類の葉に産卵するのは、幼虫が食べる葉をちゃんと心得ているわけで、考えてみれば「昆虫の不思議な能力」です。

アゲハチョウジャコウアゲハ

4.モンキチョウは成虫で越冬する

モンキチョウとタンポポモンキチョウ

モンシロチョウとよく似た蝶にモンキチョウがいます。ところでモンシロチョウは春から夏にかけてしか見かけませんが、秋になってもモンキチョウを見かけたことはありませんか?

それもそのはずです。モンキチョウは成虫のまま越冬する蝶なのです。ルリタテハと同じですね。

越冬するモンキチョウ

5.「完全変態」する蝶は「輪廻転生」や「不死・不滅」の象徴でもある

前に「堤中納言物語の「蟲愛づる姫君」は自然科学を愛する理系少女だった」という記事を書きましたが、蝶は姫君が感嘆したように、「卵→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫の蝶」と華麗に変身(完全変態)するので、古来「輪廻転生」や「不死・不滅」「復活」の象徴とされてきました。

(1)輪廻転生(りんねてんしょう)

蝶は抜け出した魂を極楽浄土に運んでくれるとして神聖視され、輪廻転生の象徴でもあるそうです。

ちなみに「輪廻転生」とは、「人が生まれ変わり死に変わりし続けることを表す仏教語です。「輪廻」とは、「車輪がぐるぐると回転し続けるように、人が何度も生死を繰り返すこと」です。「転生」は「生まれ変わること」です。「転生輪廻」とも言います。

(2)不死・不滅

蝶の変化の様子が神秘的で、「不死・不滅」の象徴であったことから、武士に好まれました。蝶の文様は、「平家物語」や「源平盛衰記」にもよく出てきます。

ちなみに平清盛(1118年~1181年)の家紋は「丸に揚羽蝶(まるにあげはちょう)」です。平氏一門も「蝶紋」を多用しました。

丸に揚羽蝶

織田信長(1534年~1582年)の家紋は「織田木瓜(おだもっこう)」が有名ですが、彼は7つの紋を使用しており、平氏の流れを汲む者と称して「替紋」に「揚羽蝶紋」を使用していました。

(3)復活

西洋でも、人間の生と死と復活のシンボルとしてとらえられており、使者の魂が宿るとされているそうです。

ギリシャ語で蝶は「psyche(プシュケ)」と言いますが、これはギリシャ神話に登場するエロス(キューピッド)に愛される美少女の名前が由来です。この名前のもとは霊魂(プシュケー)を人格化したもので、魂や不死を意味しています。

ギリシャ神話の中でプシュケは、さまざまな苦難を乗り越えてアフロディテ(ヴィーナス)の息子エロスとの結婚を認められ、永遠の命を得て女神となります。

この物語は彫刻や絵画でもよく取り上げられています。

アモルとプシュケアモルとプシュケ寄り添うプシュケとアモル円形プシュケとアモルの彫刻蝶の翅を持つプシュケプシュケとエロスの接吻プシュケとエロスのキス



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