金子みすゞの詩「星とたんぽぽ」から、目に見えないものと昼の星について考える

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金子みすゞ

山口県が生んだ薄幸の女流詩人金子みすゞに「星とたんぽぽ」という詩があります。

青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。

ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきにだ゙ァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。

私はテレビで「非破壊検査株式会社」のCMでこの詩を知りましたが、含蓄の深い詩です。

ところで、非破壊検査株式会社という会社は、プラントや社会インフラ等の事故を未然に防止するため、「物を壊すことなく」その欠陥や劣化の状況を調べ出す検査を行う会社ですが、ぴったりのCMを考えたものだと感心します。

1.金子みすゞとは

金子みすゞ(1903年~1930年)は、大正末期から昭和初期にかけて活躍した女流童謡詩人です。詩人で作詞家の西條八十(1892年~1970年)は、彼女を「若き童謡詩人の中の巨星」と称賛しました。

複雑な家庭環境に育った上に、結婚後も夫の女性問題などで苦しみ、離婚することになったものの、夫から娘の親権を強硬に要求されたことから、娘を自分の母親に託すことを懇願する遺書を書いて、26歳の若さで自殺しました。

2.目に見えないもの

金子みすゞは、「星とたんぽぽ」という詩の中で「目に見えないけれども、確実にあるもの」として、「昼の星」と「たんぽぽの根」を例に挙げました。

タンポポの根は、私が子供の頃引き抜いて遊んだので知っていますが、とても長い根を地中に張っています。

この詩には「見えないもの」や「弱者」へのやさしいまなざしが感じられます。

(1)大切なもの・善

善意・好意・感謝・愛情・友情・心遣い・正義感・縁の下の力持ち・黒子など

(2)有害なもの・悪

偏見・差別意識・悪意・妬み・嫉妬・害意・猜疑心・ばい菌など

(3)中立のもの・価値観の範疇外

空気・風・光線・時間・電波・音波・X線・インターネット・重さ・引力・磁力・義務・権利・権力など

3.「昼の星」にまつわる面白い話

(1)老子

北原白秋の詩集「水墨集」の中に「老子」という詩があります。

青の馬に白の車を挽かせて、
老子は幽かに坐つてゐた。
はてしもない旅ではある、
無心にして無為、
飄々として滞らぬ心、
函谷関へと近づいて来た。
ああ、人家が見える、
馭者は思はず車を早めたが、
何をいそぐぞ徐甲よと、
老子の微笑は幽かであつた。
相も変らぬ山と水、
深い空には昼の星、
道家の瞳は幽かであつた。

記憶があやふやですが、確か高校時代に習った漢文の老子の中にも「深い空には昼の星」というのがあったように思います。深い森の中では、光の乱反射を起こす塵が少ないため、わずかに見える「深い空」に瞬く星が見えたのでしょう。

(2)金星

私は見たことがないのですが、金星なら昼間でも肉眼で見えるそうです。ただ「明けの明星」や「宵の明星」ほど鮮明には見えないように思います。

金星の最大の明るさは「ー4.7等級」ですが、真昼に肉眼で見ることができる天体の最小の明るさが「ー4.0等級」なので、金星の見える位置をしっかり把握していれば誰でも見ることができるとのことです。金星は一等星(0.5等~1.4等)との差が5等級あるので、明るさは100倍です。

なお、アフリカの人々は目が良いと聞いたことがありますが、砂漠にすむ人々も、視力が7.0以上と非常に目が良いそうです。公害のない空気の澄んだ砂漠なら、夜は降るような星空でしょうし、昼間でも金星以外の星も見えているのかもしれません。

(3)俳句

俳句には、深い井戸を覗くと見える「昼の星」を詠み込んだものがあります。深い井戸の底に昼の星が見えるのは、老子が深い森で空を見上げると昼の星が見えたのと同じ理屈で、光の乱反射を起こす塵が少ないためです。

①高浜虚子

爛爛(らんらん)と昼の星見え菌(きのこ)生え

この句は、虚子が3年余り滞在した長野県小諸を去る直前に、長野の俳人達が大挙して沢山の松茸を持参して別れを告げに来たそうです。

その時の句会の席上、一人の俳人が「深い井戸を覗いた時、昼間なのに底に溜まっている水に星が映り、途中の石積みの石の間にキノコが生えていた」という体験談を話したそうです。

その話にインスピレーションを得て、虚子は上記の俳句を作ったそうです。

②牧島松風

卯の花や噴井(ふけい)に潜む昼の星