今年6月に、言論と表現の自由に関する国際連合のデービッド・ケイ特別報告者が、「日本メディアの独立性に懸念を示す新たな報告書」をまとめたとの報道がありました。「日本の報道が特定秘密保護法などで委縮している可能性があるとして、同法の改正や、放送番組の政治的公平性を定めた放送法4条の撤廃などを求めた2017年の勧告について、履行されていない」と指摘しているとのことです。
これに対して、菅官房長官は直ちに反論し、「極めて遺憾。記述は不正確かつ根拠不明のものを多く含んでおり、受け入れられない」と述べました。この反論は当然だと私は思います。
1.デービッド・ケイ特別報告者とは
デービッド・ケイ氏は、1990年にカリフォルニア大学バークレー校法学部卒業の弁護士で、2014年8月から言論と表現の自由に関する国連の特別報告者を務めています。
彼は2015年にも来日していますが、2016年4月に来日した際、日本における報道の自由について懸念を表明しました。2016年の報告書では、「沖縄の普天間基地移設反対に関する抗議活動へのデモ規制」を問題視しています。
しかし、デービッド・ケイ特別報告者は「私の報告は沖縄はメインではなく一部に過ぎない。沖縄の普天間基地移設反対デモの実地調査はしておらず、今後も行く予定はない」としているのは、問題だと思います。
一部の左翼的な人々へのヒアリングなどに基づき、先入観を持って偏向した報告書を作成した懸念があります。
2.日本メディアの独立性の実態
一度日本に来て、じっくり各メディアの報道を見れば、「日本メディアの独立性に懸念」という結論が出るはずがないことは明らかです。私から見れば、公共放送たるNHKでも政権批判的な報道がたびたび行われていますし、民間放送に至っては「言いたい放題」「そこまで言っていいんかい?」と言いたくなるような報道番組さえあります。
もし、中国や北朝鮮のように、日本メディアに独立性がなければ、戦前の新聞やラジオのように政府発表(大本営発表)を礼賛して(垂れ流して)、国民を欺くだけの「プロパガンダ放送」しか存在しえないはずです。
そういう現実からわざと目を背けて、誤った内容の報告を「国連報告」として出すのは、法学者としての公正な信義に悖る行為だと私は思います。
3.国連報告の「一人歩き」の危険性
私は、国連人権委員会が、朝日新聞の吉田清治記者による「捏造記事」の誤った情報に基づいて行った「従軍慰安婦」に関する誤った報告書(「クマラスワミ報告書」と「マクドゥーガル報告書」)を「撤回」するよう、日本政府は国連に対して改めて強く求めるべきだと思いますが、いまだに実行されていません。
朝日新聞に至っては、社長名の「捏造記事の謝罪発表」の後は、国連を含む国際社会に対して、「従軍慰安婦問題は捏造記事に基づく誤解であること」の説明も行動も起こしていません。
このような誤った国連報告は、一旦出されると「一人歩き」する危険が極めて大きく、日本の国益を著しく損なう恐れがあります。