1.訪日外国人にかかる病院でのトラブルの増加
訪日外国人の増加を背景に、日本の医療機関で外国人患者が在留期間を延ばそうと無理な書類作成を依頼したり、診療費を支払わなかったりするトラブルが相次ぎ、現場が対応に苦慮しているそうです。
外国人労働者の受け入れ拡大を狙いとした改正出入国管理法が2018年に成立し、2019年4月から施行されました。これによってさらに外国人患者の増加が予想されますので、早急な対応策が必要です。
2.トラブルの実態
(1)診療費の未収
厚生労働省が今年3月末にまとめた調査結果によると、昨年10月の1カ月間に外国人患者の受け入れ実績があった全国1965病院のうち、18.9%の372病院で診療費の未収金が発生しました。1病院当たり平均8.5件で、金額は平均42.3万円に上り、中には100万円を超える病院もあったそうです。
留学や仕事で長期在留する外国人は、日本の公的医療保険への加入が義務付けられていますが、観光や親族訪問目的の訪日外国人は全額自己負担です。
在留外国人の未収金が平均2万円強なのに対し、訪日外国人の未収金は平均5万円弱と2倍以上です。
(2)無理な要求
親族訪問で来日中の外国人が受診に訪れ、「『1日でも検査入院が必要』と書いてほしい」と、在留資格の延長時に入管に提出する書類の作成を求めてきた事例があったそうです。
入院の必要は全くなく、違法な「虚偽の診断書作成依頼」です。病院が拒絶しても、その外国人は執拗に食い下がったそうです。
(3)在留外国人に「なりすまし」
訪日外国人が、知人の在留外国人になりすまして、その保険証を悪用する事例も発生しているそうです。
3.トラブルへの対応策
(1)診療費の未収については、キャッシュレス決済や前払いの徹底が必要です。
(2)無理な要求については、断固として拒絶する姿勢が必要で、場合によっては警察に通報することも必要になって来るでしょう。
(3)在留外国人になりすますケースについては、写真付きの在留カードの提示を求め、窓口での本人確認の徹底が必要です。
今年4月から施行された外国人労働者の受け入れ拡大を狙いとした改正出入国管理法は、詳細な点が煮詰まっていない法案なので、上記のようなトラブルを防止するためにも、さまざまな外国人の患者を想定して、今後早急に詳細な法整備と対応マニュアルを定める必要があると思います。
また、「日本語と外国語に堪能な人材」の育成も急務です。「平成時代」以前に比べてその必要性は格段に高まっています。