浅野内匠頭が吉良上野介を斬った理由は?「松の廊下刃傷事件」の真相を探る!

フォローする



刃傷松の廊下

1.浅野内匠頭とは

一般には官名から「浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)」と呼ばれる「浅野長矩(あさのながのり)」(1667年~1701年)は、播州赤穂藩の第3代藩主です。彼は幼少期に父母を亡くし、1675年に満7歳で家督を継いでいます。1680年には従五位下に叙せられ、祖父長直と同じ「内匠頭」の官職を与えられています。

ちなみに「内匠頭」とは「内匠寮(うちのたくみのつかさ)の長官」のことで、従五位下相当の官名です。内匠寮の職掌は天皇家の調度品や儀式用具などの製作です。

14歳で山鹿素行に入門して「山鹿流兵学」を学んでいます。

1683年には、霊元天皇の勅使として江戸に下向する花山院定誠・千種有能の饗応役を拝命しています。その時に勅使饗応指南役として付いたのが吉良上野介でしたが、この時は饗応役を無事に勤め上げています。そして、その直後に阿久里と正式に結婚しています。

ちょうどこの頃、大石内蔵助の大叔父で浅野家の親戚でもある大石良重(1619年~1683年)が亡くなっています。良重は幼少の藩主長矩の良き補佐役であるとともに、若くして筆頭家老となった内蔵助の後見人として、赤穂藩政を実質的に取り仕切って来た老臣です。

良重が亡くなると、国許では良重に次ぐ老臣で末席家老の「大野知房(生没年不詳)」(通称「大野九郎兵衛(くろべえ)」)に実権が移って行きます。彼は忠臣蔵で「不忠臣」の代表格とされる人物です。藤井又左衛門と安井彦右衛門という江戸家老も、凡庸な人物だったのではないかと想像されます。少なくとも賄賂好きな吉良上野介への付け届けなどの配慮も不足していたのでしょう。

浅野長矩の性格は、おべっかを使うのが嫌いな清廉無私・謹厳実直にして短気、わがままで学究肌、一途な気質だったと言われています。また「痞(つかえ)」という持病があったそうで、これは曇天や雨が病状を悪化させる「気象病」のようです。

2.「松の廊下刃傷事件」の発生原因

吉良上野介が浅野内匠頭側からの賄賂が無い(あるいは少ない)ことを根に持った執拗ないじめ・嫌がらせが最大の原因であることは想像に難くありません。浅野内匠頭のプライドが極限まで傷つけられ、精神的に追い詰められたのでしょう。

ただ、「松の廊下刃傷事件」を避ける方法はなかったのでしょうか?事件を防げなかった要因としては次のようなことが考えられます。

(1)江戸家老の補佐力不足

賄賂を要求する吉良上野介の態度は決して好ましいものではなく、ましてや賄賂を贈らないことを理由に間違ったことを教えたり、必要な情報を知らせなかったりするのは言語道断ですが、江戸家老としては当時の習慣に従って、主君の意に反してでも裏で賄賂を贈るべきではなかったのでしょうか?

藤井又左衛門と安井彦右衛門という江戸家老は、情報収集や外交努力を怠り、吉良上野介に対して十数年前の一回目の饗応役の時と同程度の進物しか贈っていなかったようです。

(2)側近の助言不足

吉良上野介がまともな指南をしないことが分かったのであれば、浅野内匠頭の側近が、前回饗応役を務めた大名の側近など他に詳しい人を探して教示を受けて、主君に助言すべきではなかったのでしょうか?

それとも、吉良上野介以外には分からないほど饗応役の職務は複雑なものだったのでしょうか?

(3)浅野内匠頭の自制力不足

前回は無事に饗応役を勤め上げているところを見ると、今回の吉良上野介の滅茶苦茶な指南があっても、適当にこなせたのではないかと不思議な気がします。それとも今回は神経質に細かいことに拘り過ぎたのでしょうか?

それと、持病の影響もあったかもしれませんが、短気を起こさずあと一日辛抱した上で、後で「吉良上野介の指南が無茶苦茶で、指南役の職務怠慢も甚だしいこと」を幕閣に訴えて、吉良上野介に対する処分を求めればよかったのではないでしょうか?

3.「松の廊下刃傷事件」の被害者

戦時中、「初年兵いじめ」に耐えかねた初年兵がいじめた上官を撲殺した事件がありましたし、現代でも、いじめを受けたサラリーマンがいじめた上司を殺害する事件がありました。

この場合は、いじめた本人は被害者ではありますが自業自得という面もあります。それ以上にいじめられた人の両親や家族が悲しむことになります。

しかし「松の廊下刃傷事件」の場合は、直接の被害者は吉良上野介ですが、間接的かつ最大の被害者は多数の赤穂藩士とその家族です。

彼らは短慮な主君を持ったばかりに、浪人となり、困窮した生活に追い込まれました。何か商売を始めたり、別の仕官の道を探す「就職活動」をするにも、腕に覚えのある剣士や若年者ならまだしも、中高年の藩士とその家族は悲惨な状況に追い込まれたのではないでしょうか?

余談ですが、会社の経営者も、一国の指導者も同様です。多くの社員や国民の生活がかかっているのですから、経営の失敗によって会社を倒産させたり安易にリストラに走る無能な経営者や、軍事独裁国家で特権階級以外の大多数の国民を窮乏生活に陥れる独裁者の罪は大変重いものです。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする