「かいぼり」で井の頭公園の水質が浄化され、モネの睡蓮の絵のような池に変身!

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井の頭公園

1.井の頭公園の水質浄化作戦

(1)井の頭恩賜公園100周年実行委員会

三鷹市と武蔵野市にまたがる東京都立井の頭公園は、2017年に開園100周年を迎えました。その記念事業として「井の頭恩賜公園100周年実行委員会」の「水と緑部会」で、井の頭池の水を一旦抜いて天日干しし、水質浄化と在来種の保護および外来魚の駆除を目的とする「かいぼり」の水抜き作業を実施しました。

(2)かいぼり

「かいぼり」は2014年から2017年にかけて、3回行われました。巨大ポンプで水を吸引し、神田川へ流出させました。池の底からは大量の自転車やバイクなど不法投棄された粗大ゴミが出て来ました。また、ブルーギルやブラックバス、ソウギョなどの外来魚も多数捕獲されました。最初は9割が外来種だったそうです。

3回のかいぼりでは、回を追うごとに徐々に外来魚の捕獲が少なくなり、在来種が増えていることが確認できたそうです。

(3)ツツイトモ

そして現在では、絶滅危惧種に指定されている水草「ツツイトモ(筒糸藻)」が大繁殖しているそうです。このツツイトモは、2007年には皇居の堀で大量繁殖していることも確認されていますので、絶滅の恐れはなさそうです。

ツツイトモは、全体が沈んでいる「沈水植物」で、緑色の葉は線状で細く、先端はとがり、5~7ミリほどの小さくて黄色い花が水面上で上下2段に分かれて咲きます。「バイカモ(梅花藻)」は白い花ですが、感じがよく似ていますね。

(4)モネの睡蓮の絵のような池

かいぼりが何度も繰り返され、底の泥の中で眠っていた種が目覚めたようです。水質が改善されて透明度も上がり、SNSでは、「印象派のモネの睡蓮の絵のようだ」と評判になっています。

2.緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦

「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳と「ココリコ」の田中直樹がMCを務めるテレビ東京(テレビ大阪)の番組に「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」というのがあります。

危険生物に悩まされる「近隣住民のSOS」を受けて出動するという設定で、外来種が大量発生し困っている池の水を全部抜き、底には何が潜んでいるのかを「大調査」するという趣向です。

以前から、農地のため池や城の堀の水を全部抜くことは、各地で行われていて、主(ぬし)のような大きな鯉が出て来たとテレビで報道されたこともあります。

池の水を抜くと、「外来種の魚」が大量に捕獲されるほか、大量の大型ごみ(自転車や家電製品など)が出て来ることもよくあります。

3.「かいぼり」のメリットとデメリット

「かいぼり」(掻い掘り)は、「換え堀り」「換え乾し」「池干し」「泥流し」などとも呼ばれます。農業用のため池を維持するために行われてきた日本の伝統的な管理方法です。

稲作が終わる晩秋から早春にかけての農閑期に、池の水を抜いて天日に干し、堆積したヘドロや土砂を取り除いて肥料にし、獲った魚を利用して来ました。

(1)メリット

「水質改善」「外来魚の駆除」「在来種の保護」などの効果が期待できます。

(2)デメリット

テレビ番組の「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」で、主催者および番組側の不手際で、「在来魚が大量死」する事態が起きたことがあります。

これは2018年2月に、岐阜県笠松町で行われたかいぼりで起こったことで、現場で捕獲した魚を一時的に保管しておく容器が不足していたため、酸欠などで死ぬ魚が続出したそうです。

また、「外来魚か在来魚かの識別作業」を素人の「一般参加者」が行うというお粗末な状態だったそうです。

4.都市河川や住宅地の水路のヘドロやゴミの除去

池のかいぼりがテレビ番組などで話題になっていますが、もっと身近な都市河川や住宅地の水路についても、ヘドロや粗大ゴミが投棄されているケースがあります。

このようなヘドロやゴミの除去は、個人では不可能です。地方自治体や国(国土交通省)などによる作業が必要になります。一定期間、一部区間の水を堰き止めてヘドロを天日干しして重機を使って除去する作業が必須です。地味な作業だとは思いますが、順次計画的に推進してほしいものです。