迷信にまつわる面白い話

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泥棒除けのおまじない

昔の人は迷信を信じる人が多かったようです。私の親の世代までは「迷信」などに拘っていましたが、私のような団塊世代は、そういう迷信や因習を嫌う世代だと思います。「丙午(ひのえうま)」の女性との縁組を嫌うのも迷信の一つです。

明治時代に活躍した啓蒙思想家・教育者で「学問のすゝめ」で有名な福沢諭吉(1835年~1901年)は、徹底して迷信を疑い、排除した合理的な考え方をした人物です。

福翁自伝か何かの本に、少年時代の次のようなエピソードがありました。

仏像に小便をひっかけたり、神社のお札を踏んで便所に捨てても「天罰が当たらない」ことを確認したり、地域の人が信仰している祠の中のご神体の石を、その辺に落ちている石ころとすり替える悪戯をして、相変わらず大人たちがその祠を拝み続けているのを見て笑ったりしたそうです。

ところで、私は両親からいろいろな迷信の話を聞かされました。そこで今回はその中から面白い話をいくつかご紹介します。

1.面白い迷信の話

(1)「十二月十二日」の逆さ札

京都発祥で関西で広く行われていた風習に、12月12日になると「十二月十二日」という小さな紙を家の玄関の内側に貼るというのがあります。大阪府高槻市の私の家でも、子供の頃住んでいた古い家では必ず貼っていました。

これは「泥棒除けの迷信」です。「天下の大泥棒であった石川五右衛門(?~1594年)が京都三条河原で釜茹でにされた『命日』が12月12日で、それを屋根から侵入する泥棒に見せるため」というのが一般的な説明です。

しかし、史実によれば彼が刑死したのは文禄3年8月24日(新暦で1594年10月8日)で、旧暦でも新暦でも12月12日とは違います。

もう一つの伝承は、「彼の誕生日が永禄元年12月12日(新暦で1559年1月20日)なので、それを逆さにして『命日』を意味している」というものです。

(2)北枕はいけない

北枕

これは、亡くなった人は北枕で寝かせるため、「北枕は死を意味するので縁起が悪い」というわけです。

北は涅槃の方角で、釈迦が北に頭を向けて入滅(にゅうめつ)したため、亡くなった人を北枕にして寝かせる風習が始まったそうです。

ただ一方で、「北枕は地球の北のN極から南のS極に流れている磁力線に沿って寝ることになるので、血行が良くなり疲労回復の効果もある」という説もあります。また、「風水」では「北枕は縁起が良い」とされています。

(3)夜に口笛を吹いてはいけない

夜に口笛を吹くと「泥棒が来る」とよく言われました。「蛇が来る」「人さらいが来る」という言い伝えもあるそうです。

昔、泥棒や人さらいが悪事を働く時の合図が「口笛」であったことからの連想のようです。また、インドの蛇使いが笛を使って蛇を操ることから、口笛を吹くと蛇が集まって来る、あるいは「邪(じゃ)」が出るという連想だと思われます。

(5)夜に爪を切ってはいけない

夜に爪を切ると「親の死に目に会えない」とよく言われました。

これは、「夜・爪」が「世・詰め」に通じて「世を詰める」ということになり、早死にすると言われたことに由来するようです。

(4)離れの屋根の高さは母屋の高さを超えてはいけない

離れ(別宅)の屋根の高さが母屋(本宅)の高さを超えると、その家が不幸になると言われています。

私も離れを建てる時、ハウスメーカーに「私は特に気にしません」と言ったのですが、「離れは母屋より絶対に低くしてください。私たちも必ずそうしています」と逆に言われて、意外に思った経験があります。

建築業者の長年の経験から、そういう不幸になる事例が結構あったのかもしれません。現代でもこの「迷信」は根強く残っているようです。

(5)葬式から帰ったら玄関を入る前に必ず塩を撒く

葬儀・告別式に参列して自宅に帰った時、「清めの塩」を撒く習慣があります。

もともと「清めの塩」は穢れである死を清めて家に持ち込まないという「神道」の考えで、「浄土真宗」をはじめとする「仏教」では、「死は穢れではない」という考えなので、清めの塩は不要としているようです。

なお、「清めの塩」は「他人の葬式」に参列して来た場合だけで、身内の場合は行いません。

(6)家を建てる時の「方除け(ほうよけ)」

家を建てたり、リフォームしたりする場合、「方除け」の神社にお参りする習慣があります。

我が家の場合は、京都市伏見区にある「方除の大社」の「城南宮」で「方除けの砂」や「方除けのお札」を貰って来ました。

「方除け」とは、「日々の暮らしの中で、知らずに悪い方位に行くことや、家の間取りがよくないことがあるので、方位の障(さわ)りや家相の心配がないように祈願すること」です。

平安時代から行われてきた「方違え(かたたがえ)」も「陰陽道(おんみょうどう)」に基づいて方角の吉凶を占うもので、「方忌み(かたいみ)」とも呼ばれています。

2.迷信とは

「迷信」(superstition)とは、「人々に信じられていることのうちで、合理的な根拠を欠いているもの」のことです。一般的には社会生活を営むのに実害があり、道徳に反するような知識や俗信などをこう呼んでいます。

「迷信」の反対語は「正信(しょうしん/せいしん)」で、正しい信仰のことです。