私が中学生のころ、最初にレコードプレーヤーで音楽を聞いたのはペラペラの「ソノシート」という薄いビニール製のレコードでした。
その後、普通の「ドーナツ盤」のシングルレコードを聞くようになり、やがて大きなセパレート型ステレオでLPレコードを聞くようになりました。さらに小型のカセットデッキでカセットテープの音楽も聞いたりするようになりました。CDはずっと後の話です。
最近は、テレビの「歌番組」が少なくなり、ラジオも全くと言っていいほど聞かないため、音楽といえば、昔買ったカーペンターズやエルビス・プレスリーなどのCDを聞くか、パソコンのインターネットでYouTubeから流れる歌をブログを書きながらBGMのように聞くぐらいになりました。
他人事ながら、「CD業界」には大変なアゲンストの風が吹いているように思います。昭和時代は、「レコード」や「CD」で「百万枚の大ヒット」と言われる「ミリオンセラー」が数多く出たように思いますが、今はAKB48や乃木坂46、欅坂46のようなアイドル系を除いてはほとんど無理なのではないでしょうか?これらも「握手券付きCD」なのか「CD付き握手券」なのかわからない気もします。
1.小山田圭吾さんが平成の30年間の音楽を振り返る
先日、ミュージシャンの小山田圭吾さんへのインタビュー記事で、彼が平成の30年間を音楽を通して振り返る話が出ていましたが、その中で彼が「音楽は空気の振動に戻りつつある」と述べていたのが印象的でした。
彼は平成元年にフリッパーズ・ギターでデビューし、「渋谷系」と評されて「ポップアイコン」(ポップの世界における象徴)のようになったかと思えば、ギタリストとしてYMOやオノ・ヨーコさんらとバンドを組むなど海外でも高い人気を誇ったミュージシャンです。
彼は「音楽が原初に近い形に戻って来た」と述べています。
かつての「レコード」や「CD」が衰退し、代わってスマホやパソコンを使って、YouTube配信などでBGMのように気ままに手軽に音楽を聞く人が多くなってきました。
一方、ライブ会場に足を運んで生の歌声を聞きたいという熱心なファンも増えて来ました。
中世ヨーロッパの「吟遊詩人」や日本の平安時代に現れた琵琶法師、あるいは昭和時代に見られた「酒場の流しの演歌師」は、「瞬間芸術」としての音楽の担い手であり、「記録媒体」や「著作権」などとは無関係で、「空気を震わせて歌い、歌い終われば跡形も何も無くなる音楽」です。江戸時代までの「能」や「歌舞伎」、「落語」「講談」「浪曲」などの「芸能」も同様です。
小山田圭吾さんが「音楽は空気の振動に戻りつつある」とか「音楽が原初に近い形に戻って来た」と言っているのは、こういうことではないかと私は思っています。
2.平成の30年間の音楽を取り巻く環境の変遷
1998年までの最初の10年間は、CDのミリオンセラーが続出する時代でした。1998年に6075億円とピークを記録したCDなどの音楽ソフトは、翌年以降毎年約5%ずつ減少を続け、2008年には3618億円となり、10年間で40%以上も減少しました。
2003年には、iTunes Music Store(現iTunes Store)で「有料音楽配信」が始まり、2005年には音楽や動画をアップロードできるYouTubeが始まりました。
さらに2008年にはiPhoneが登場しますが、このスマートフォンの普及(2013年には「世帯普及率」が62.6%)で、MP3などの音源ファイルを再生する形から、「ストリーミング」で音楽を楽しむ層が増えました。
一方、ライブ公演は増加し、2017年には公演数が3万本を突破し、3448億円規模となっています。
最近の「モノ消費」から「コト消費」へ、「所有」から「使用」への大きな時代の流れが、「音楽」の楽しみ方にも表れているように感じます。
3.ストリーミングとは
「ストリーミング」とは、「通信ネットワークを介して、動画や音声などを受信して再生する際に、データを受信しながら同時に再生を行う方式」のことです。「サブスク消費」の一種です。
従来は、データ全体の受信(ダウンロード)を完了してから、再生するのが一般的だったのですが、ストリーミングではデータをある程度受信した時点で再生を開始し、受信処理と再生処理を並行して進めることにより、利用者は短い待ち時間で視聴を開始することができるようになりました。
このストリーミングによって、「ダウンロード型」では実現が難しかった「始まりや終わりが決まっていない放送局型の配信サービス」も可能となりました。
テレビやラジオの生放送や生中継のように、撮影や録音を行いながら同時に配信・視聴できる配信方式のことは「ライブストリーミング」(live streaming)と呼ばれています。