「黒子」と「二人羽織」と「傀儡」

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文楽の黒子

今回は「黒子」と「二人羽織」「傀儡」にまつわる面白い話をご紹介したいと思います。

1.黒子

「黒子(くろご、くろこ)」とは、「歌舞伎や文楽で、黒装束に黒頭巾を着用し、役者の介添えや舞台装置を操作する人のこと」です。また、比喩的に「自分は表に出ないで、地味な仕事をする人のこと」を言います。「縁の下の力持ち」のようなものです。

私が派遣社員として従事した仕事も「黒子」と言えると思います。

2007年12月に船場吉兆の女将湯木佐知子氏が、「食材の使い回し」「賞味期限切れ」「産地偽装」などの不祥事の「謝罪会見」の席で、同席した長男の喜久郎氏の横から「頭が真っ白になったと」「責任逃れの発言をしてしまいました」「ないです」「知らんと言え」などと「ささやき声で指示する声」がマイクにはっきり入ったことから「ささやき女将」とのニックネームを奉られました。

これは「黒子」のつもりが表に出てしまった失敗例です。

桜田元五輪担当大臣の答弁の時も、本来「黒子」であるべき官僚が、「通訳(?)」あるいは「実質答弁者」のような格好になっている場面が多くありました。滑稽というか情けないというか、腹立たしくて怒りたくなるような光景でした。

2.二人羽織

二人羽織

「二人羽織(ににんばおり)」とは、「2人が同じ向きで前後になるように座り、後ろになった者が羽織の袖から手だけを出し、前になった方が顔だけ出して羽織を着る。一方は手が使えるが前が見えず、もう一方は前が見えるが手が使えない。この状態から、物を食べるなどの芸を行うこと」です。

私が若手のサラリーマンの頃は、社員旅行の余興でよく演じられた「宴会芸」です。うまく食べられなくて爆笑したものです。

3.傀儡

「傀儡(かいらい)」の代表的な人物に第9代将軍徳川家重がいます。NHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」で吉宗(西田敏行)の愚息の家重役を中村梅雀が熱演していました。

言語障害があったと言われる将軍家重の話す不明瞭な言葉を聞き取れるのは、近習の頃からの側近だった者に限られたため、そのうちの一人である大岡忠光が「御側御用人」に登用されました。この「側用人」制度は、第8代将軍徳川吉宗の時に廃止されたのですが、これを復活させたのです。この結果、大岡忠光は異例の出世を遂げ、2万石の武蔵岩槻藩主に封じられています。将軍家重は「傀儡」のようなものだったと思われます。

NHK大河ドラマ「篤姫」で、天璋院篤姫(宮﨑あおい)の夫の第13代将軍徳川家定役を堺雅人がうまく演じていましたが、彼もとぼけた発言や数々の奇行から「暗愚」と見られていました。

このほかにも、側近が暗愚な将軍を「傀儡」として操った例もあったのではないかと思います。

また側近たちが表立った「クーデター」に代えて、「傀儡」として自分たちの言うことを唯々諾々と聞く人物に将軍をすり替えるということもあったかもしれません。

歴史に「if」はありませんが、過去の歴史についてこのように様々な想像を巡らすのも楽しく、面白いものです。

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