半沢直樹の人気の秘密は何か?江戸っ子の啖呵の痛快さと歌舞伎調の大仰さなど

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半沢直樹

「やられたらやり返す、倍返しだ!!」や「クソ上司め、覚えていやがれ!」という決めゼリフ(名セリフ)で大人気の「半沢直樹」は久々の大ヒットドラマです。

そこで今回は、この「半沢直樹」の人気の秘密を探ってみたいと思います。

1.「半沢直樹」の人気の秘密

(1)「一心太助」ばりの江戸っ子の啖呵の痛快さ

前の記事で紹介しましたが、落語の「たがや」にも痛快な江戸っ子の啖呵が出て来ます。

また、講談の「侠勇一心太助」にも痛快なセリフがあります。

一心太助が天下の一大事だとわめきながら、天秤棒を引っ担いで駿河台の大久保彦左衛門の屋敷へ疾風のごとく駆け込んでくる場面で、玄関に突っ立って大声を張り上げて怒鳴ります。

「おーい、いるか、いねえのか、死に絶えたか親玉、親分、雷親爺、逆螢!」(ちなみに「逆螢(ぎゃくぼたる)」とは「禿げ頭」「光頭」のこと)

(2)歌舞伎の「睨(にら)み」や「見得(みえ)を切る」ような大仰さ

普通のテレビドラマと違って、このドラマには歌舞伎の「睨み」や「見得を切る」ような大仰さがあります。これも現代の日本人にとっては新鮮に映じたのでしょう。「スーツ歌舞伎」と言われる所以(ゆえん)です。大袈裟な「顔芸」が随所で見られます

(3)「判官びいき」の日本人に受けるストーリー

「忠臣蔵」や「源義経」のように、日本人には昔から「判官びいき」の国民性があります。そういう意味で、このドラマは多くの日本人に受けるストーリーになっています。

(4)日本の現状に対する鬱積した不満を代わって発散させてくれる

「恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす」という都都逸があります。日本人には自制心の強い抑制のきいた国民性があります。

恋愛においてもそうですが、社会生活においても欧米人のように権利を声高に尖鋭に主張することが少なく、被虐的に抑圧を受忍する傾向があります。

しかし、江戸時代の農民ではありませんが、じっと我慢しているのにも限度があります。現代の日本社会では「一揆」や「打ちこわし」のような暴動に代わる「ガス抜き」として、このようなドラマが歓迎されるのではないかと思います。

コロナ禍による自粛の鬱憤晴らしになっているのかもしれません。

また、「忖度なしの倍返し」で「ロスジェネ世代へのエール」となっています。

(5)勧善懲悪の現代ドラマ化

「勧善懲悪」と言えば、聖徳太子の「十七条の憲法」第6条に「懲悪勧善、古之良典」とあるように古臭い話と思われますが、日本人の国民性に合っています。それを見事に現代ドラマ化しているのも魅力です。

フジテレビ系の「痛快テレビスカッとジャパン」も似たモチーフです。

(6)時事的な事件や事象を取り入れている

バブルや氷河期世代の時代背景のファンダメンタルズや、平成時代の日本の病巣をニュースになった事件なども取り入れながらドラマチックに描いた経済ドラマになっています。

2.「半沢直樹」とは

(1)原作

元銀行員(旧三菱銀行)の池井戸潤(1963年~ )の小説「半沢直樹シリーズ」が原作です。

(2)テレビドラマ

TBS系「日曜劇場」で、2013年7月7日から9月22日まで、「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」をベースとした前後編二部構成で全10話が放送されました。

2020年7月19日からは、同じく「日曜劇場」で「ロスジェネの逆襲」と「銀翼のイカロス」をベースとした続編が放送されています。

(3)視聴率トップ

「平成民放ドラマ1位」(最終回42.2%)に続き、2020/8/16に放送された第5話は25.5%で、現在のところ「令和ドラマ1位」にもなりそうな勢いです。