江戸時代の笑い話と怖い話(その20)。屁文学の最高峰、平賀源内の「放屁論」

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平賀源内の肖像

子供はうんこやおしりの話になると決まって喜びます。これに目を付けたのが「うんこドリル」シリーズで、なかなかの人気教材だそうです。

鎌倉時代以前に描かれた「勝絵(かちえ)」という古い絵巻物があります。前半は陽物比べで、後半は放屁合戦に打ち興ずる裸の男たちを描いた戯画です。

1.「昔語り花咲き男」と名乗る放屁芸人

今でもお笑い芸人で、小島よしお・とにかく明るい安村・アキラ100%などきわどい芸を披露する「裸芸人」がいますが、日本神話に登場する女神「アメノウズメ」(古事記では天宇受賣命、日本書紀では天鈿女命と表記)が裸芸人のルーツとも言えます。

アメノウズメ

アメノウズメは、「岩戸隠れ」の伝説などに登場する芸能の女神であり、日本最古の踊り子と言えます。

江戸時代にも放屁を芸とするユニークな芸人がいました。

安永3年(1774年)、江戸両国橋に「昔語り花咲き男」と名乗る放屁芸人が現れ、大評判となりました。

2.平賀源内の『放屁論』

放屁論昔語り花咲き男

この件をいち早く取り上げたのが「エレキテル」で有名な平賀源内です。

彼の戯作の代表作である『放屁論』は、本邦屁文学の最高峰と言われています。本書の書名は「ほうひろん」ではなく「へっぴりろん」と読みます。

本編安永3年(1774年)、後編安永6年(1777年)の刊で、安永9年(1780年)には彼の他の戯作4編と合わせて《風来六部集》として刊行されました。本編では放屁を見せ物にして人気のあった江戸両国橋の芸人を素材にして、また後編ではエレキテルを発明した浪人貧家銭内の口を通じて、創造性のない停滞した身分制社会の諸側面を鋭く批判しています。短編ながら彼の代表作の一つです。

著者風来山人こと平賀源内とおぼしき主人公が、評判を聞きつけて芸を見に行きます。舞台に現れたのは中肉で色白の男です。口上は爽やかで嫌みがなく、囃子に合わせて三番叟屁(さんばそうべ)「トッパヒョロヒョロピッピッピ」や鶏屁(にわとりべ)「ブッブブーブー」などの曲屁を次々と放ってみせたそうです。

見終わって、友人の家に集まり、一座で論評します。主人公はこの芸を「我が日本のみならず、唐土(もろこし)・朝鮮をはじめ、天竺(てんじく)・オランダ、諸々の国々にもあるまじ。ああ思い付きたり、よく放(ひ)ったり」と独創性を絶賛します。

フランスのパリ、ムーラン・ルージュの「おなら男」が一世を風靡するのは一世紀以上も後のことですから、確かに独創性がある大した芸人です。

そして、「この放屁芸人に比べて、世の中の学者は先人の模倣に甘んじ、自分の工夫才覚がない」と痛罵しています。

実は本書には、才能をなかなか認められない源内自身の苦い思いが込められているのです。

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