私はたまたま1週間ほど前に、NHKテレビ番組の予告で8月26日(水)午後10時50分から11時20分まで放送の「植物に学ぶ生存戦略4話す人・山田孝之」というEテレ番組を知り、録画予約をして翌日見ました。
私は以前から植物特に「雑草」の生存競争と植物の知恵には興味があり、前に「植物の生育分野拡大戦術」という記事も書きました。植物の「無言の勢力争い」も熾烈なものです。
1.ネットで「ジャンベさん」が話題になっていて驚き
番組視聴後に、内容の再確認のためにネットを開いて驚いたのですが、「ジャンベさんは安倍首相を揶揄したものではないか?」「NHKが安倍政権批判か?」といった記事がたくさんあったことです。
確かに「オンリーワン」のたとえ話に新庄剛志さん(白い歯)・武田久美子さん(貝の水着)・安倍首相(アベノマスク)の3人が出て来ましたが、上の話はちょっと穿(うが)ちすぎのように感じます。
この番組は1年に1回か2回放送される不定期番組のようで、第1回は2018/9/27、第2回は2019/5/2、第3回2020/1/30だったそうです。
俳優・山田孝之が植物の生存戦略について語り、NHKアナウンサー・林田理沙が聞く人となって二人の「掛け合い」で番組が進行します。
2.番組の構成・進め方についての感想
(1)シュールなコント仕立て
話す人・山田孝之と聞く人・林田理沙とのシュールなコントのような掛け合いがユニークで斬新で、異色でマニアックです。しかし「瞬きもせず無表情で話す、しかし何か下心のありそうな宇宙人のような山田孝之」と「大胆な擬人化」に違和感を覚える人もいたかもしれません。
(2)内容はいたって真面目で正確な解説
しかし内容はいたって真面目で、植物が種を保存するための長年の知恵で巧妙に進化した涙ぐましい「生存戦略」を正確にわかりやすく解説しています。
植物は4億年以上も命をつなぎ、地球上のあらゆる環境で生き抜いてきました。我々人間の知らない危険や困難を乗り越えて来た多様な生き方があるのです。
三部構成で、それぞれ1種の植物について10分ずつの解説となっています。
(3)子供向けでなく大人向けの教養番組
Eテレと言えば「子供向けの教育番組」という印象ですが、これは「大人向け」の教養番組です。
3.番組の内容についての私の真面目な感想
(1)オオバコ(大葉子/車前草)
オオバコは昔はどこにでも生えていましたが、最近はあまり見かけませんね。道路がことごとくアスファルト舗装されて、土の道が減ったためかもしれません。
道の真ん中に生えているため踏まれることを甘んじて受け入れ、踏まれてもすぐ立ち直るのがオオバコです。独自の道を歩む孤高の植物。それは異端の美学で競争相手はいない。
道に落ちた種は雨に濡れると粘りけを持ち、靴の裏について遠くまで運ばれ、子孫を増やします。
(2)シロツメクサ(白詰草)
シロツメクサも昔は原っぱにたくさん生えていましたが、最近は原っぱが少なくなったからか、外来植物に押されたのかあまり見かけませんね。
「四葉のクローバー」の幸せ伝説を持つこの白い花もしたたかな生存戦略を持っています。たくさんある花びらは一気に開花せず時間差で開いて、蜂をおびき寄せて花粉を運ばせる期間を長くしています。
そして蜂を花房の中へ中へと潜り込ませて甘い蜜を吸わせて、多くの花粉を付けさせます。
また根には「根粒菌(こんりゅうきん)」という窒素を溜め込む性質を持った菌が付いています。この菌から窒素を受け取って、代わりに糖質を与える「相利共生(そうりきょうせい)」(ウィンウィン)の関係です。窒素は肥料の重要な要素です。つまり自分で窒素を作って肥料にしているので、繁殖力も大変強いのです。そしてあまり窒素を作らない根粒菌には糖質もあまり与えません。
「同じようなメンバーで固めて、失敗したら首をすげ替える。根粒菌のような『えらくない人々』をコントロールして養分を吸い上げる。ミツバチのような優秀な人材には甘い蜜を吸わせる。」というたとえ話が、安倍首相へのあてこすりと見られたようです。
(3)ハラン(葉蘭)
ハラン(「バラン」とも言います)は、私が子供の頃住んでいた古い家に植わっていたのでよく知っています。母が山形にギザギザを入れた葉を弁当箱の仕切りとしてよく入れてくれました。今はビニールの代用品がほとんどですが・・・
前に「松の花」の記事を書きましたが、私はハランの花については、この番組で初めて知りました。ハランの花粉を媒介するのは「キノコバエ」のため、ハランの花は根元の目立たない所に咲きます。そのようにしてキノコに擬態しているのです。そしてキノコによく似た匂いを出してキノコバエをおびき寄せるのだそうです。
「妖しく誘惑する日陰の植物、長年の謎が明らかに!花をキノコに擬態させた日陰植物の愛の口説き術」というわけです。
昔はカタツムリやナメクジが受粉を助けているという仮説が信じられていました。私も自宅の庭のハランの根元にたくさんのカタツムリがいたので、昔の人がそう信じたのも無理がないような気がします。
しかし、長年謎であった「ハランの花粉の媒介者」ですが、現在はキノコバエが受粉を担っているという説が有力になっているのです。
なお、この番組では紹介されませんでしたが、「西部劇の定番イメージ」となっている「回転草(tumble weed)」も、植物の逞しい生存戦略を示すものです。
これは「枯れた後に根から離れ、種をまきながら転がる草」です。これは「オカヒジキ(陸鹿尾菜)属」の植物で、中国では「転蓬(てんぽう)」と呼ばれています。