柳田国男の遠野物語に出て来る「座敷童子」にまつわる面白い話をご紹介します

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座敷童子

1.座敷童子(ざしきわらし)とは

座敷童子とは、主に岩手県の旧家に住むと信じられている「家神」で精霊的存在です。座敷とか蔵に住むと言われ、小児の形をしていて顔が赤く、髪を垂れているといいます。

家人に「枕返し」などの悪戯を働くものの、座敷童子の住む家には富がもたらされ、座敷童子を見た者には幸運が訪れ、座敷童子が居なくなるとその家は衰えるとの伝承があります。

ちなみに「枕返し」とは、「夜中に枕元にやって来て、枕をひっくり返す、または頭と足の向きを変えるとされる妖怪」のことですが、東北地方では、枕返しは座敷童子の悪戯と言われることが多いそうです。

2.遠野物語の中の座敷童子の話

土淵村の山口という所にある山口孫左衛門の家には、女の座敷童子が二人住んでいると言われ、古くから栄えた大きな家でした。

ある日のこと、町へ使いに出ていた男が帰り道、村境の橋の向こうから女の子が二人歩いてくるのを見ました。この辺では見かけない娘なので不思議に思って声を掛けると、「山口の孫左衛門の所から来た」と答えました。

男が「孫左衛門の所から?・・・それでこれからどこへ行くんだい?」と聞くと、「どこそこの村の某という者の家に行く」と答え、二人は橋を渡って村を出て行きました。

それからしばらく後、孫左衛門の家の庭の梨の木に見慣れないキノコがたくさん生えて来ました。それを見つけた若い下男が「得体の知れない物は食べてはいけない」と言う主人の制止にもかかわらず「大丈夫だ」と言い張ったので、皆それを信じて食べてしまいました。

しかし、そのキノコの食中毒で主従20人あまりが、苦しんでのたうち回り全員死亡しました。

孫左衛門が亡くなって家主が不在となった家には、見たこともない遠い親戚がたくさん現れ、「生前にあれをもらう約束をしていた」「これをもらう約束だった」などと言って、一切合切の家財を持ち去ってしまいました。

この一連の凶事には前兆があって、秣(まぐさ)の下から現れた大きな蛇を主人が止めるのも聞かずに若い下男が殺してしまいました。するとその跡から、たくさんの蛇が湧いて出てきましたが、それらの蛇も全て殺してしまったそうです。

このことが座敷童子がこの家を去った原因だったようです。

3.座敷童子にまつわる面白い話

(1)座敷童子伝説の宿

岩手県二戸(にのへ)市にある金田一温泉郷の「緑風荘」という旅館は、座敷童子が出ることで有名な旅館です。緑風荘のホームページには、「座敷童子伝説」について次のような由来が紹介されています。

 およそ670年くらい前の南北朝時代。
当家の先祖である藤原朝臣藤房(万里小路藤房)は、南朝の後醍醐天皇に仕えていました。
しかし、南北朝戦争において南朝は敗北し、北朝の足利軍に追われ現在の東京都あきる野市に身を隠しました。
その後、さらに北上を続け、現在の岩手県二戸市にたどり着きました。 道中、二人連れていた子供の内、当時6歳だった兄の亀麿が病で倒れ幼き生涯を閉じました。 その際『末代まで家を守り続ける』と言って息を引き取ったそうです。
その後、守り神<座敷わらし>として奥座敷の「槐の間(えんじゅのま)」に 現れるようになったと言い伝えられています。
その姿を見たり、不思議な体験をした人は大変な幸運(男=出世 女=玉の輿)に恵まれると伝えられ、実際座敷わらしに出会った人には必ず良い事があったそうです。

またひとたび座敷わらしに気に入られると、どこであろうと座敷わらしが会いに来てくれるそうです。

座敷わらしとして現れる「亀麿」は昔から多くの著名人も目撃し、 また、現在も多くの宿泊者に不思議な現象を起こし沢山の体験談で語り継がれております。

(2)NHKの朝ドラ「どんど晴れ」

平成19年のNHKの朝ドラ「どんど晴れ」は、民話の郷・岩手を舞台に、名門老舗旅館に飛び込んだ都会育ちのヒロイン・夏美が、伝統と格式の前に孤軍奮闘しながら成長していく様子を爽やかに描く笑いと涙の「女将奮戦記」でした。

印象的だったのは、草笛光子演じる大女将が比嘉愛未演じる若女将に、その旅館に代々伝わる「玉手箱」のようなものを渡すシーンです。これを渡すことは、大女将が若女将を認める儀式のようなものですが、「家訓」とか「おもてなしの奥義・秘伝」が入っているのかと思いきや、若女将が箱を開いてみると中には空っぽで何も入っていません。

「おもてなしの心は形のないもの」との教えのようでした。

目に見えるものしか価値を見出さなくなった現代人ですが、このドラマはそんな現代人に欠けている「見えないものを信じる勇気と力」を描いています。

愛・絆・夢・・・、その土地はヒロインに見えない力を信じさせてくれる民話の郷でした。

ちなみにタイトルの「どんど晴れ」というのは、民話の最後に使う「どんどはれ」(「めでたしめでたし」という意味)から取ったものです。


どんど晴れ スペシャル

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