「人日(じんじつ)」(七草の節句)の起源・由来とは?

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七草粥

「五節句」のうち、前に「桃の節句」「端午の節句」「七夕」「重陽の節句」をご紹介しましたので、今回は最後に「人日(じんじつ)」(七草の節句)をご紹介したいと思います。

1.「節句」とは

「節句」は古代中国の「陰陽五行説」を由来として日本に定着した暦で、伝統的な年中行事を行う節目となる日です。

この日には日本の宮中において、「節会(せちえ)」と呼ばれる宴会が開かれました。年間のさまざまな節会の中から、江戸幕府は5つを「五節句」として公的な行事・祝日として定めました。

余談ですが、「怠け者の節句働き」(なまけもののせっくばたらき)という慣用句があります。

これは「普段働かない者にかぎって、節句のような皆が休む時に働くこと」で、皆が休んでいる時に限って張り切っている者を嘲(あざけ)る表現です。

2.「人日」とは

人日の浮世絵人日浮世絵

「五節句」の最初に来るのが1月7日の「人日」です。節句料理として「七草粥(ななくさがゆ)」を食べることから「七草の節句」とも呼ばれます。「若菜の節句」「七日正月」「霊辰(れいしん)」「元七(がんしち)」「人勝節(じんしょうせつ)」という別名もあります。

古来中国では、正月の1日を「鶏の日」、2日を狗(犬)の日、3日を猪(豚)の日、4日を羊の日、5日を牛の日、6日を馬の日とし、それぞれの日にはその動物を殺さないようにしていました。

そして7日目を「人の日」(人日)として、犯罪者に対する刑罰を行わないことにしていました。

この日には、一年の無病息災を願って、また正月の祝膳や祝酒で弱った胃を休めるために、7種類の野菜(七草)を入れた羹(あつもの)を食べる習慣があり、これが日本に伝わって「七草粥」となりました。日本では平安時代から始められ、江戸時代から一般に定着しました。

この1月7日は「旧暦」であり、「新暦」では2月ごろです。確かに新暦の1月7日では、まだどの七草も芽生えていませんからね。

なお、この日は「新年になって初めて爪を切る日」ともされ、「七草を浸した水に爪をつけて、柔らかくしてから切ると、その年は風邪をひかない」という迷信もあるそうです。

3.「旧正月」とは

春節

ところで、中国では「旧正月」を「春節」と言って、多くの人が故郷へ帰省したり旅行などで移動する季節ですが、この「旧正月」は、「旧暦の1月1日」とイコールではありません。

旧正月」とは、「旧暦の正月(年初)」のことで、「旧暦元日(旧暦1月1日)、またはそれから始まる数日間」のことです。

「旧暦1月1日」は、通常「雨水(うすい)」の直前の「朔日」であり、1月21日ごろから2月20日ごろまでを毎年移動します。

ちなみに2021年の旧正月は2月12日(金)で、中国の「春節」は、2月11日(木)~2月17日(水)までの7連休でした。

「春節」の際には、家々に「福」の字を書いた赤色の紙が上下逆さまに貼られます。これは「倒福(とうふく)」と呼ばれ、「福が到るように」との願いが込められています。

倒福

4.「七草の節句」を詠んだ俳句

「七草(七種)」は俳句で「新年(春)」の季語です。

「子季語」「関連季語」には、「七草粥(七種粥)」「七日粥」「薺粥(なずながゆ)」などがあります。

・七草や はかまの紐の 片結び(与謝蕪村

・七日客 七種粥の 残りなど(高浜虚子)

・七種の はじめの芹ぞ めでたけれ(高野素十)

・七種や 跡にうかるゝ 朝がらす(宝井其角)

・七種籠 土をこぼして かなしけれ(石田波郷)

・七種籠 子なき夫婦の 声は似て(瀬戸内寂聴)

・庭水辺 摘む七草の 芹紅に(山口青邨)

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