「折句」「沓冠」「回転折句」という面白い言葉遊びをご紹介します!

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折句伊勢物語

前に「いろは歌の謎」と言う記事を書きましたが、その中で「いろは歌には暗号が隠されている」という話をご紹介しました。この「暗号」は言葉遊びの一種である「折句」です。

今回は、「折句(おりく)」「沓冠(くつかぶり)」「回転折句(かいてんおりく)」についてご紹介したいと思います。

1.折句とは

折句(acrostic)とは、「ある一つの文章や詩の中に、別の意味を持つ言葉を織り込む言葉遊びの一種」です。「句頭」を利用したものがほとんどですが、「句頭」と「句尾」を利用したものは「沓冠折句」または単に「沓冠」と呼ばれます。

日本で和歌に「折句」が行われるようになったのは、平安時代初期からです。

具体的な例を見た方がわかりやすいと思いますので、いくつかご紹介します。

①「蛙飛ぶ池はふかみの折句なり」(柳多留・六)

この古川柳は、松尾芭蕉の有名な「古池や 蛙飛びこむ 水の音」の句頭が下の通りふかみとなっていること詠んだものです。もちろん芭蕉は折句のつもりで詠んだものではないと思います。あくまでも面白いものを発見したという「洒落」というか「言葉遊び」です。

るいけや はづとびこむ づのおと

②「から衣きつつなれにし妻しあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」(伊勢物語・東下りの段)

らころも つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞおもふ

頭文字をとると、「かきつはた」(カキツバタ)という花の名前が折り込まれていることがわかりますね。

この和歌は、在原業平が三河国の八橋(愛知県知立市)のカキツバタ(杜若)の咲く沢で、「かきつばたといふ五文字を句の上に据ゑて旅の心を詠め」と言われて作ったものだそうです。

③「三めぐりの雨はゆたかの折句なり」(柳多留・五)

これは、芭蕉の弟子の宝井其角が江戸向島の三囲(みめぐり)神社で詠んだ「夕立や 田をみめぐりの 神ならば」という雨乞いの句の折句です。

ふだちや をみめぐりの みならば

④「言の葉も常盤なるをば頼まなむ松を見よかし経ては散るやは」(小野小町)とこれに対する返歌「言の葉は常(とこ)懐かしき花折るとなべての人し知らすなよゆめ」

とのはも きはなるをば のまなむ つをみよかし てはちるやは

とのはは こなつかしき なおると べてのひとし らすなよゆめ

平安時代の歌論「新撰和歌髄脳」にある小野小町の折句の和歌と折句の返歌です。

小野小町は「琴たまへ」(琴を貸してください)と頼んだのに、相手は「琴は無し」と断ったものです。

⑤谷川俊太郎(1931年~ )の詩

現代でも谷川俊太郎が次のような面白い折句(「愛してます」を折り込んである)の詩を作っています。

くびがでるわ やけがさすわ にたいくらい んでたいくつ ぬけなあなた べってころべ」

⑥「オアシス運動」の標語

「オアシス運動」という挨拶運動があります。この標語も折句と言えます。

はようございます(または「お疲れ様でした」)

りがとうございます

つれいします(または「しつれいしました」)

みません(または「すみませんでした」)

2.沓冠とは

和歌の折句の一種で、「意味のある10文字の語句を各句の始めと終わりに1字ずつ詠み込んだもの」を「沓冠折句」「折句沓冠」または単に「沓冠」と呼びます。

①「逢坂もはては往来(ゆきき)の関もゐず尋ねて訪ひこ来なば帰さじ」(栄花物語)

これは村上天皇が寵愛する女御たち全員に送った和歌です。意味は「男女の間を隔てる逢坂の関。その逢坂の関の関守も今夜はいません。訪ねて来てください。来たら今夜は帰しませんよ」ということです。

ほとんどの女御は心を込めた歌を返しましたが、広幡の御息所という女御だけは、「合わせ薫物(あわせたきもの)」を差し上げました。「合わせ薫物」とは、色々な香料を蜜で練り固めたものです。一人の女御は着飾っていそいそと帝の元へ参上したそうです。

ふさか てはゆきき きもゐ ずねてとひ なばかへさ

広幡の御息所だけはが、帝の「合わせ薫物少し(ください)」という「沓冠」の意図を読み取れたわけです。

着飾って帝の元へ参上した女御は、気の毒なことにその後、帝の寵愛が薄れたそうです。

②「夜も涼し寝ざめのかりほ手枕(たまくら)も真袖(まそで)も秋に隔てなき風」(兼好法師)とそれに対する返歌「夜も憂しねたく我が夫こはては来ずなほざりにだにしばし訪ひませ」(頓阿法師)

もすず ざめのかり まくら そでもあき だてなきか

るもう たくわがせ てはこ ほざりにだ ばしとひま

徒然草で有名な兼好法師から、「和歌四天王」の一人である頓阿法師に送った沓冠とその返歌です。

兼好法師は「よねたまへ」(米をください)「ぜにもすこし」(お金も少しください)と頼んだのに対して、頓阿法師は、「よねはなし」(米は無い)「ぜにすこし」(お金なら少しある)と返事したわけです。

3.回転折句

漢字の共有部首を利用した回転折句というのもあります。京都龍安寺の蹲(つくばい)に刻まれた次のような例があります。

  五
矢 口 隹 – 左回りに「唯吾知足」(口を共有)



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