身近な植物やよく知られている植物でも、その生態についての誤った常識があったり、意外と知られていない驚きの生態も多いものです。
１．ヒマワリ（向日葵）の花は太陽に向けて移動するのか？
「ヒマワリは太陽を追って向きを変える」と言われています。
英語で「サンフラワー（sunflower）」と呼ばれ、日本語でも「ヒマワリ（日回り）」、漢字でも「向日葵」と書きますので、太陽と深いかかわりがあることはよくわかります。
しかし、上の右の画像を見ると花の向きはバラバラで、反対方向を向いている花もあります。
実はヒマワリが太陽を追って向きを変えるのは、つぼみができ始める頃までの若いヒマワリで、開花済みのヒマワリは決してそうではありません。北を向いている花は少ないですが、東・南・西などバラバラな方向に向いて咲いています。
どんな植物も一般的に、成長している時は茎や葉などが太陽の刺激を受けて、日の当たる方に向かって屈曲する性質があります。これを「向日性（こうじつせい）」と言います。
日光を浴びようと「オーキシン」という物質が生成され、このオーキシンが日光の当たらない方の成長を促進させるのです。午前中、オーキシンは日の当たらない西側の成長を促進させることで西側の葉や茎が伸び、東側へ傾きます。午後はこれとは逆のことが起き、西側へ傾きます。
このオーキシンが生成されるのはつぼみをつけるまでで、花が咲いた後はそれほど太陽の光が必要でないため、太陽の方を向くことはないというわけです。
ダリアやヒャクニチソウなども若い茎は太陽の方を向きます。ただヒマワリはほかの花に比べて大きいために目立ってしまい、特別にヒマワリだけが太陽を追いかけるように思われたのでしょう。
私は自宅の庭にあるアガパンサスのつぼみをつけた茎が、朝に比べて昼には太陽に向かって大きく曲がっていく様子を見たことがあります。
余談ですが、私はヒマワリと言えば、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ主演のイタリア映画「ひまわり（Girasoli）」（1970年公開）のエンディングに出てきた画面一面のヒマワリ畑が目に焼き付いています。
２．スイレン（睡蓮）の花は眠るって本当か？
スイレンは英語で水中の百合を意味する「ウォーターリリー（water lily）」と言います。しかし日本語では、漢字で「睡（ねむ）る蓮」と書きますね。
はたしてスイレンは本当に眠るのでしょうか？
実はスイレンは日中に花を咲かせ、夜になると閉じる行動を3日間繰り返し、4日目には水没する植物なのです。そのため「睡蓮」という名前が付けられました。
スイレンとよく似た花に「ハス（蓮）」がありますが、この二つは全く別の植物です。ちなみに、ハスは英語で「ロータス（lotus）」と言います。
スイレンはスイレン科スイレン属の水生多年草で、ハスはハス科の多年生水生植物です。
ハスの葉はまん丸いですが、スイレンの葉には切れ込みがあります。ハスの葉や花は水面より高い位置にあり、「抽水植物（ちゅうすいしょくぶつ）」と呼ばれますが、スイレンの葉や花は水面に浮いており、「浮葉植物（ふようしょくぶつ）」と呼ばれます。
ハスの根のように見える地下茎（レンコン）には、大きな穴が開いていますが、スイレンの地下茎はワサビのような形をしていて、穴は開いていません。
ハスの花は夜に閉じることはなく、花が咲き終わると花びらが散って、後に「果托（かたく）」ができます。この果托が「ハチの巣」に似ていることから「ハチス」と呼ばれるようになり、やがて「ハス」に転じました。
３．キャベツ（甘藍）は収穫せずに放置するとどうなるのか？
畑で育てたキャベツを収穫せずに放置しておくとどうなるかご存知でしょうか？
答えは「成長して菜の花に似た黄色い花が咲く」です。
実はキャベツはアブラナ科アブラナ属の多年草なので、アブラナと同じような「黄色い菜の花」が咲くのです。
春の風物詩と言えば「菜の花」ですが、「ナノハナ」という名前の花はありません。私たちがふだん目にして「菜の花」と呼んでいるのは、「アブラナ」「セイヨウアブラナ」「カラシナ」の3種類の植物です。
これは、正月に門松に添える飾り物として使われるキャベツとよく似た「ハボタン（葉牡丹）」もほとんど同じです。「ハボタン」もアブラナ科アブラナ属の多年草だからです。
ちなみに、「ハクサイ（白菜）」もアブラナ科アブラナ属の二年性植物で、同じように黄色い「菜の花」が咲きます。
このほか、アブラナ科アブラナ属の多年草である「ブロッコリー」も同様の黄色い花を咲かせます。
アブラナ科ダイコン属の「ダイコン」は菜の花によく似た白い花を咲かせます。
「菜の花」ですから「多くの野菜の花」だということですね。
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