気候・風土とその土地に住む人々の気質との関連は?遺伝・歴史・社会構造の影響は?

フォローする



和辻哲郎

(和辻哲郎)

日本人は、勤勉で礼儀正しく、謙虚で親切といった美徳が国民性として一般に知られています。一方、イタリア人はラテン民族特有の陽気で恋愛好きといった国民性があります。

このような「国民性」や「民族性」は「気候」や「風土」とどのような関連性があるのでしょうか?またそのような国民性や民族特有の気質は「DNA」によって遺伝するものなのでしょうか?

今回はこれについて考えてみたいと思います。

1.和辻哲郎の「風土」

最近は読む人が少なくなったと思いますが、私が学生時代のころまでは、小林秀雄(1902年~1983年)や亀井勝一郎(1907年~1966年)と並んで和辻哲郎(1889年~1960年)の本が推奨されていました。

彼は哲学者・倫理学者・文化史家で「古寺巡礼」が有名ですが、「風土」という本も書いています。彼は夏目漱石の「木曜会」に参加した漱石門下生の一人でもあります。

彼は「風土」の中で、東アジアなどの「モンスーン気候」、モンゴル高原やアラビアなどの「乾燥気候(砂漠型)」、ヨーロッパの「牧場型」の3つの類型を示しています。

①モンスーン型:自然は時に猛威を振るうが、普段はおとなしく作物も豊かであり、それゆえに人間は自然を受容し、忍従的になる

②乾燥型:自然は敵対的であり、その住人同士も敵対的であるから、常に戦いを意識せざるを得ず、服従的かつ戦闘的という二面性を持つ

③牧場型:夏の乾燥と冬の湿潤が規則的に入れ替わり、理性的で自然を制御しようとする思想を生む

2.国民性と気候・風土との関係

各国民の独自の気質や性格は、歴史や社会構造のほか、気候・風土とも密接な関係があると考えられています。

(1)アメリカの戦争政策上の研究

学問的領域として確立したのは第二次世界大戦中のアメリカで、敵国である日本人の国民性を研究したルース・ベネディクト(1887年~1948年)の「菊と刀」は、この分野での古典的名著です。

ルース・ベネディクト

アメリカは第二次世界大戦中の政策決定や戦後の占領政策に関して、敵国・同盟国、さらには自国の国民の行動を科学的に理解し、予測する必要があったからです。その手法として「文化人類学」が注目されたのです。

日本は琉球民族とアイヌ民族もいますが、ほぼ大和民族の単一民族国家です。しかし欧米諸国や中近東諸国などは歴史的に見て多民族が闘争し、融合して出来た国家ですので、今でも民族間の対立や紛争が絶えません。イギリスやフランスでも百年戦争(1337年~1453年)後に「国家」としての愛国心や国民性が生まれたのではないかと思います。「国民国家」が確立するのは17世紀のイギリスの市民革命(1642年のピューリタン革命と1688年の名誉革命)、18世紀のフランス革命(1789年~1799年)以降になります。

(2)イギリス人の「暑い国・寒い国の国民性」についての見方

イギリス在住の日本人(ハンドルネーム:アルノさん)が「暑い国」と「寒い国」の国民性や性格、行動パターンの違いをイギリス人から教えてもらったという話をブログに載せていました。学術的な調査・研究結果ではありませんが、「なるほど」と思う部分も多いのでご紹介します。

この話で「寒い国代表」はイギリス人、ロシア人で、「暑い国代表」はイタリア人、バングラデシュ人、イラン人です。

①意見:「寒い国」はしっかり一つの意見を持っており、単刀直入に意見します。「暑い国」はいろんな意見があってよいと考え、複雑で自分の意見も様々に変わります。

②人生のスタイル:「寒い国」は個人主義。「暑い国」は全体の和、周りとの協調を重要視します。

③時間厳守:「寒い国」は基本的に時間厳守で、遅れたら連絡するか謝ります。「暑い国」は約束の時間通りには来ません。

④他人との接触:「寒い国」は小さなグループと個人的な接触を試みます。「暑い国」は自由自在にあらゆる人物と縦横無尽に接触します。

⑤怒ったら:「寒い国」は怒ったら顔に出ます。「暑い国」は顔に出しません。

⑥列の並び方:「寒い国」はきちんと列を作って並びます。「暑い国」は自分の好きな場所にいて並びません。

⑦自分:「寒い国」は自分を主張します。「暑い国」は自分を主張することは苦手です。

⑧日曜の道の込み具合:「寒い国」は日曜は出かけずに家にいることを好むので人出はまばらです。「暑い国」は。日曜はどこへ行っても人出が多く混んでいます。

⑨パーティーでは:「寒い国」は一人もしくは4人以下の小さなグループでパーティーを楽しみます。「暑い国」はパーティーに参加している全員で一緒に楽しみます。

⑩レストランでは:「寒い国」は小さい声で静かに食事を楽しみます。「暑い国」は大音量の音楽や、人の話し声(大声)で常にレストランの中は賑わいます。

⑪もし胃が痛くなったら:「寒い国」は冷たいもの(コーラやトニックウォーター)を飲みます。「暑い国」は温かい白湯やお茶でお腹を温めます。

⑫旅行:「寒い国」は旅に出たら、自分の目で実際に見ることが大事だと考えます。「暑い国」はカメラで撮影して、旅の思い出にします。

⑬もし問題にぶつかったら:「寒い国」は問題に突き進みます。「暑い国」はなんとか回避しようとします。

⑭一日の食事:「寒い国」は朝食は冷たいもの、昼食は温かいもの、夕食は冷たいものを食べる傾向があります。「暑い国」は三食すべて温かいものを食べます。

⑮年配者の一日の生活:「寒い国」は自分の時間が大切で、犬と散歩するのが好きです。「暑い国」は家族と過ごし、よく孫の世話をします。

⑯シャワーのタイミング:「寒い国」は朝にシャワーを浴びます。「暑い国」は夜にシャワーを浴びます。

⑰天気によるムード:「寒い国」は晴れるとハッピー!ですが、天気が悪いと気持ちが沈みます。「暑い国」は晴れても天気が悪くてもいつでもハッピー!で、天気によってその日の気分は左右されません。

⑱上司の影響:「寒い国」はボスもスタッフの一員です。「暑い国」はボスは強大な権力を持っています。

⑲子供は:「寒い国」は子供は家族の中の一人です。「暑い国」は子供は家族の中心です。

⑳経済の発展:「寒い国」は比較的経済の発展している国が多いです。「暑い国」は発展途上国と言われる国が多いです。

さて、日本人はどちらに入るのでしょうか?気候的には両方の中間だからか、項目によって「寒い国」に入ったり、「暑い国」に入ったりしますね。

(3)民族性と気候・風土との関係

各民族の独自の気質や性格は、DNAの遺伝によるところが大きいと思いますが、国民性と同様に、気候・風土とも密接な関係があると考えられます。

19世紀にドイツのヴァイツが「未開民族の人類学」(1858年~1871年)を、同じくドイツのバスティアンが「歴史上の人類」(1860年)を書いて、「知能や人間が持つ心理の基本・単位・要素などは、地球上のすべての民族に共通して同じで、環境の相違が心性の相違を生む」と説きました。

1898年にケンブリッジ大学調査隊(人類学者ハッドン団長)がオーストラリア北方のトレス海峡の島々の住民に対して、器具を用いた五感・知覚・握力などの調査した結果、「知覚・知能に現れる違いは、生物学的な理由によるものではなく、環境に起因する」と結論付けました。

和辻哲郎は、ドイツの哲学者ハイデッガー(1889年~1976年)の「有と時間」の影響と外国滞在の経験から「風土」を著し、日本文化の特質を決めている要因として、「モンスーン気候」という風土の重要性を説きました。

祖父江孝男は「文化人類学入門」の中で、「民族性を形作る要因として重要なものは、風土と歴史である」と説いています。

(4)研究論文

2017年11月に「ネイチャー」に掲載された「自然と人間の行動」という論文の中で「地域の周囲温度は人間の性格と関連している(気候が人間の性格に大きな影響を与える)」という調査結果が示されました。

人間の性格が、その人たちが住む地理的な場所によって異なる傾向があるということは、研究結果を待つまでもなく、多くの人が感じていることだと思います。

この論文によれば、アメリカと中国で大規模な調査を行った結果、気温が22°C前後の温暖な地域に住む人たちは、社会性や安定性、自己成長、柔軟性などが高い傾向にあったということです。その理由として、極端な気候の地域では人々が家にこもりがちになり、社会活動が限定されるからではないかと推測しています。

この研究に対しては、「単に文化の違いが性格に影響しているだけではないか」という指摘や、「快適な気候は22°Cという数値だけでは決まらない」という指摘も出ているそうです。

個々の人間の性格については、「クレッチマーの体型による性格判断や血液型性格判断」などがあり、どの国民や民族にもそれぞれの性格がありますが、国民や民族を全体として見ると確かに独自の性格があると思います。

このように見てくると、国民や民族の独自の性格は、DNAの遺伝、歴史や社会構造のほか、気候・風土とも密接な関係があることは疑いの余地がなさそうです。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする