花色変化・花蜜量調整・花序複雑化等の進化で、受粉を助ける昆虫を制御する植物

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ハコネウツギ・花色変化

花にやって来る送粉者(訪花者)である昆虫たちは、自分自身(またはその家族)のために花を訪れるのであって、植物のために花を訪れているわけではありません。

ですから、いつも植物にとって都合のよい行動をしてくれるとは限りません。

そこで、自由に動き回ることができない植物は、送粉者の行動をある程度、植物にとって都合よく操作できるように進化しているものがあります。

人間以外の動物もそうですが、植物が「自分たちはこういう目的で進化して来た」としゃべるわけはありません。あくまでも「植物学者の観察や実証研究に基づく推理」です。

1.花色変化で古い花を知らせる植物

皆さんは同じ木に色の違う花を咲かせている花木をご覧になったことはありませんか?

「スイフヨウ(酔芙蓉)」(下の画像)は庭木として植えられていることも多いため、よく知られています。ただし、このスイフヨウはアサガオ(朝顔)やムクゲ(木槿)と同じ「一日花」で夕方にかけて白色からピンク色に徐々に変化していくものです。

酔芙蓉スイフヨウ拡大写真

スイフヨウ(酔芙蓉)の花色が変化する理由は、お酒に酔ったからではなく、「アントシアニンの合成」によるものです。日照によってアントシアニンを合成する酵素が増え、花弁部分に蓄積されて赤みを増していきます。気温が低いとアントシアニンの合成は進まず、25度以下では色の変化はそれほど見られません。曇りの日や、日の当たりにくい奥まったところでは白い花が部分的に、あるいは色を変えないまま残っています。

スイフヨウのほかにも、「咲いている最中に、花全体、または花の一部の色が変化するもの」があります。

東北地方と北海道の亜高山帯から高山帯にかけて生育する「ウコンウツギ(鬱金空木)」(下の画像)は、花弁の模様である「蜜標(ネクターガイド)」の色が、黄色から赤色にはっきりと変化します。

ウコンウツギ

また同じ「スイカズラ(吸葛)科」で、庭園樹としても植栽されることのある「ハコネウツギ(箱根空木)」(冒頭の画像)は、花全体の色が白色から赤紫色に変化します。

こうした花色変化は、送粉と受粉を終えた古い花で起こります。そのような古い花をわざわざ花色を変えて維持しているのは、「花序」(枝につく花の配列状態)や株全体を目立つようにしつつ、古い花に送粉者が行かないようにしている戦略だと考えられています。

2.花蜜量を調整する植物

花蜜は多くの送粉者にとって、花を訪れる目的そのものです。このため、花蜜の分泌量や株内における花蜜の分布パターン(株の中のどの花に花蜜が多く、どの花に少ないのか)は、その株を訪れた送粉者の行動に大きく影響します。

そのため植物は、花蜜の分泌量を調整することで、送粉者の行動を自身に都合のよいように操作できるのではないかと考えられています。

3.大きくて目立つ花を咲かせる植物

大きくて目立つ花は、よりたくさんの送粉者を惹きつけることができます。それだけでなく、送粉者を株から早く立ち去らせ、「隣花受粉」(「自家受粉」の一種)のリスクを軽減する機能もあるようです。

「自家受粉」のデメリットは、遺伝的な組み合わせの多様性が失われることです。つまり、環境の変化に適応できず個体ごとの種の生存が危ぶまれる、ということを指します。同じ遺伝子が繰り返されることで種の力が弱まる傾向が強くなる(近交弱勢)デメリットもあります。

大きく目立つ花は、人気があって送粉者間の競争が激しいため、個々の花の中に残っている花蜜の量が少ない状態になります。そのため、送粉者が早く立ち去る結果となるのです。

4.複雑な花

アキギリキバナアキギリ

「アキギリ」(上の画像左)や「キバナアキギリ」(上の画像右)の花には面白い仕掛けがあります。

長い花筒の奥に花蜜を隠し持っているのですが、花筒の入り口が仮雄しべ(花粉のない雄しべ)で塞がれているのです。

花にやって来た送粉者(主にマルハナバチ)は、仮雄しべを押さないと、花蜜を吸うために花筒の中に入って行くことができません。

実はこの仮雄しべは、花粉を持つ雄しべと繋がっています。このため送粉者が仮雄しべを押すと、上側の花弁に隠れていた雄しべが下の方に降りてきます。この時、送粉者の背中に花粉がこすりつけられるのです。

この仕掛けは、花粉のある雄しべを花弁の目立たないところに隠しておくことで、花粉を食べられてしまうのを防ぎ、かつ送粉者の体の決まった場所に花粉をこすりつけるのを可能にする仕組みとして進化して来たと考えられています。

5.花序の構造を調整する植物

ネジバナ2ネジバナネジバナ3

「ネジバナ(捩花」は捻じれた花序を持つラン科の植物で、公園の芝生などでもよく見かけます。

このネジバナは、ほとんど捻じれていない花序から、捻じれが強すぎてかえって捻じれているのがわかりにくい花序まであります。

捻じれ具合の弱い花序ほど、多くの送粉者(ハナバチ)を集めることができますが、この場合は花序内での「連続訪花数」が増加し、「隣花受粉」(「自家受粉」の一種)のリスクが増えます。

一方、捻じれが強い花序では、花がバラバラの方向を向いているため、送粉者から目立ちにくく、いくつかの花をスキップして上の花に到達し、そのまま他の花序へと飛び立ってしまうようです。その結果、「隣花受粉」を減らせるようです。



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