冒頭の画像は、葛飾北斎が描いた「北斎漫画・鰻登り」の絵です。
鯉が滝を登って行く「鯉の滝登り」や龍が天に昇って行く「昇竜」は、画題としてよく用いられますが、「鰻登り」を画題にするのは珍しいのではないかと思います。
1.「鰻登り」という言葉の由来
(1)「鰻登り」とは
1.気温・物価・評価などが見る間に上がったり、物事の件数・回数が急激に増えたりすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「鰻上り/鰻登り」
2.物事の程度・段階が、驚くほど急激な勢いで上がること
出典:新明解国語辞典(三省堂)「鰻登り」
うなぎのぼり(鰻上り、鰻登り)は、物価や株の相場などが、何かをきっかけに急速に上昇して行く場合等に、その急速さを比喩するのに使用する慣用句です。主に、副詞の形で使います。
第一次世界大戦後に莫大な賠償金を課せられたドイツの「ハイパーインフレ」による物価の急上昇がその典型的な例です。
第一次世界大戦の敗戦国ドイツは「1918年から1923年までの約5年間で物価は1兆倍」になりました。
日本も、太平洋戦争の敗戦後、「準ハイパーインフレ」とも呼ぶべき猛烈なインフレに見舞われ、インフレが鎮静化した1955年の物価は開戦当初に比べて約180倍に高騰していました。
(2)「鰻登り」という言葉の由来
ウナギは海で産卵し、稚魚が川に入り、上流をめざします。そのような魚の例は他にいくらでもありますが、「登る」という能力において、ウナギは飛び抜けています。
多くの魚は流れに沿って上流へと向かうだけで、途中に滝があれば、大抵の魚はそれ以上登ることができませんが、ウナギは滝を登ることもできます。
急流をさかのぼる遊泳力はないものの、長い体で石の間に入り、あるいは濡れた石の面を這うようにして上流へと移動します。日光中禅寺湖に生息するウナギは、華厳滝を遡って来たものと推定されています。(華厳の滝は、一高生藤村操が投身自殺したことでも有名です。)
さらに雨が降ったときには陸に登り、草の間を這い進むこともあります。従って、ウナギは河川の上流域水流でつながっていない池にも侵入します。かつて天然ウナギがまだ多数生息していた頃には、雨の後には水田に大物ウナギが見つかることもあったと伝えられています。
「鰻登り」という言葉の由来については、上記のような躍動的なうなぎの生態から、ウナギが川を登るがごとき勢いで上昇していく様子を「うなぎのぼり」と呼ぶようになったという説があります。
ウナギは滝のようなところでも水の少ないところでも身をくねらせながら登ることができるからとする説もあります。
また、ウナギはぬるぬるしていて、手で捕まえようとしても上へ上へと逃れて限りがないからとする説もあります。
2.ウナギと「金運」にまつわる面白い話
(1)ウナギと「金運」の関係
経済や売り上げが「鰻登り」というように、うなぎという言葉は上昇を表します。うなぎ登りの成果が出るということから、うなぎは金運の意味を持ちます。
さらに、うなぎは皆さんご存知のように長い生き物です。こういった長い食材は、よく縁起物とされます。身近なところでは、蕎麦やうどんですね。
同様に、うなぎ、あなご、太刀魚なども縁起の良い食べ物とされています。
風水で言うと長い食べ物は「四緑木星」で、「四緑木星」は、誰からも好かれ、縁をつなぎ、私たちに運んでくれる特徴を持っているそうです。
つまり、長いうなぎは「金運招福」という意味があるのです。
(2)「鰻登り」 葛飾北斎 ドライ Tシャツ
北斎漫画の「鰻登り」にあやかった「相場上昇 金運 開運 株 グッズ 」として「葛飾北斎 ドライ Tシャツ」が、楽天市場などで販売されています。
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3.「北斎漫画・鰻登り」の絵の誤りの箇所
「大五うなぎ工房」さんのブログに、「北斎漫画・鰻登り」の絵の誤りの箇所についての面白い記事がありましたので、ご紹介します。
北斎漫画は全十五編が発行され、人物、風俗、動植物、妖怪変化まで約4000図が描かれています。
上は有名な「鰻登り」の図です。実にリアルですが、この鰻の絵には間違っている箇所があります。
それは、赤丸で示した部分「腹びれ」です。本当のうなぎには腹びれはありません。
もしかしたら、当の北斎はそんなことは百も承知の上で、「蛇足」にひっかけたシャレで書き加えたのかもしれません。