ロシアによるウクライナ侵略が続く中、多くのウクライナ人が隣国ポーランドをはじめヨーロッパ各国に避難していますが、日本在住のウクライナ人家族を頼って日本に避難してきた人もいます。
ウクライナから母親を呼び寄せた娘が、母親の心の傷を癒そうと上野公園の桜見物に連れ出したというテレビ報道もありました。
最近は「花のデリバリー」の検索数が倍増しているそうです。余儀なく変化する日常を前に、癒しの効果がある花の力を人々は求めているのでしょう。
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写真家の奥山由之氏は、「花とは人生、愛情そして祖母との失われた時間を象徴するものだ」と語っています。彼の祖母はいつも部屋に花を飾っていて、その習慣を今は彼が受け継いでいるそうです。彼は花が持つ無機質な魅力を写真に捉え、祖母との記憶と思い出を重ねています。
花には、見ている人を笑顔にする力があります。なんだか落ち込んでしまった日でも、花を部屋に飾るとそんな気分を吹き飛ばしてくれる気がします。
おうち時間が増えたコロナ禍の影響で、花や観葉植物を部屋に飾り始めた方も多いのではないでしょうか?
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音楽もそうですが、花も、人の心に優しさを取り戻させたり、心の傷を癒したり、慰め励ましたりする力を持っています。
花を使った心理療法「フラワーセラピー」というのもありますね。花がもたらす幸せ効果は「五感へのアプローチ」によります。
- 視覚…花の色によるカラーセラピー効果や美しさによる癒し効果
- 嗅覚…花の香りによるアロマテラピー効果やリラックス効果
- 触覚…花の触り心地による刺激
- 味覚…ハーブティーやエディブルフラワーで味わう刺激やリラックス効果
- 聴覚…葉や草が優しく揺れる音などによる心地よい刺激
多くの人は花を見て、ただ美しいと思うだけかもしれませんが、心に刻んだり、瞼に焼き付ける人もいます。中には写真を撮ったり、絵に描いたりする人もいます。
最近、奈良県明日香村の「岡寺」や京都府長岡京市の「楊谷寺」、京都市の「勝林寺」などの寺や神社で「花手水(はなちょうず)」(下の画像)というものが行われており、遊び心があふれていて綺麗だと人気です。私の住む高槻市にある野見神社でも「花手水」を始めており、「フォトコンテスト」も開催されています。
歌人や俳人は、その感動や花に託した思いを短歌や俳句に詠んでいます。
そこで今回は、花を詠んだ俳句をいくつかご紹介したいと思います。
冒頭の画像にある俳句についてご説明します。
・しら露もこぼさぬ萩のうねり哉(松尾芭蕉)
意味:白露をいっぱい溜めた萩の花。風に吹かれて大きくうねっても、その露を落とさずに揺らめいている
1693年(元禄6年)秋、芭蕉が杉山杉風の別邸採茶庵に咲く萩を見て詠んだ句だと言われています。「白露」も季語ですが、この句では「萩」が主役なので、「萩」が季語です。
松尾芭蕉は1694年に亡くなっていますので、晩年の作品となります。
季語になっている「萩」は、マメ科の落葉低木です。山野に自生し、初秋には白や紅紫色の蝶のかたちをした小さな花をたくさんつけます。秋の七草の1つです。
1695年(元禄8年)刊『こがらし』では、「白露をこぼさぬ萩のうねりかな」と詠まれ、1812年(文化9年)刊『栞集』では、「白露もこぼれぬ萩のうねり哉」と詠まれています。
以下、春・夏・秋・冬に分けて花の俳句を、花の画像とともにご紹介します。
1.春の花の俳句
・落椿(おちつばき)夜めにもしろきあはれかな(久保田万太郎)
・踏みて直(す)ぐデージーの花起き上る(高浜虚子)
(注)「デージー」は、和名「雛菊(ひなぎく)」のことです。ちなみに「デージー」は英語の「day’s eye(デイズ アイ)」が由来と言われています。お日さまが照っている日中に花を開き、形も太陽に似ていますね。
・山路(やまじ)来て何やらゆかしすみれ草(松尾芭蕉)
・はこべらや焦土の色の雀ども(石田波郷)
(注)「はこべら」(繁縷)は「はこべ」とも言い、「春の七草」の一つです。
・しら梅の明る夜ばかりとなりにけり(与謝蕪村)
・まんさくに滝のねむりのさめにけり(加藤楸邨)
(注)「まんさく」は、漢字で「満作、万作、金縷梅」と書き、銀縷梅(ぎんろばい)とも言います。早春のまだ寒い時期に、ほかの花に先駆けて咲くので「まず咲く」が語源とされています。また黄金色の花が多数咲くと豊作になるといわれることから「万年豊作」に由来するとも言われています。
・猫柳(ねこやなぎ)高嶺(たかね)は雪をあらたにす(山口誓子)
(注)「猫柳」という名前は、やわらかいビロードのような銀白色の毛に覆われた花穂が猫の尻尾を思わせることに由来します。
・いぬふぐり星のまたたく如くなり(高浜虚子)
(注)「いぬふぐり」という名前は、果実の形状が雄犬の「フグリ(陰嚢)」に似ていることに由来します。
・山峡(さんきょう)をバスゆき去りぬ蕗の薹(ふきのとう)(三好達治)
・片栗(かたくり)の一つの花の花盛り(高野素十)
・影は滝空は花なり糸桜(加賀千代女)
(注)「糸桜(いとざくら)」とは、「枝垂桜(しだれざくら)」の異称です。
・大空に莟(つぼみ)を張りし辛夷(こぶし)哉(松本たかし)
(注)「辛夷」という名前の由来には、つぼみの形が赤子の拳(こぶし)に似ているからという説と、秋になる赤い実のごつごつとしている感じが拳の形に似ているためという説があります。
・行き過ぎて尚連翹(れんぎょう)の花明かり(中村汀女)
・木蓮(もくれん)の風のなげきはただ高く(中村草田男)
・命二つの中に生きたる桜かな(松尾芭蕉)
・奈良七重(ななえ)七堂伽藍(しちどうがらん)八重桜(やえざくら)(松尾芭蕉)
・海棠(かいどう)の日陰育ちも赤きかな(小林一茶)
・来し方や馬酔木(あしび)咲く野の日のひかり(水原秋櫻子)
(注)房状の美しい花ですが、花・樹皮・葉には毒がある植物です。「馬酔木」という名前は、「馬が葉を食べると毒に当たり、酔った如くにふらつくようになる木」というところから付けられました。
・野に出れば人みなやさし桃の花(高野素十)
・勿忘草(わすれなぐさ)わかものの墓標ばかりなり(石田波郷)
・敷く雪の中に春置くヒヤシンス(水原秋櫻子)
・世をいとふ心薊(あざみ)を愛すかな(正岡子規)
2.夏の花の俳句
・牡丹散ってうちかさなりぬニ三片(与謝蕪村)
・つる薔薇や若きリルケの住みし家(有馬朗人)
・泰山木(たいさんぼく)天にひらきて雨を受く(山口青邨)
・桐咲いて雲はひかりの中に入る(飯田龍太)
・風塵のアカシヤ飛ぶよ房のまま(阿波野青畝)
・一八(いちはつ)の白きを活(い)けて達磨(だるま)の絵(正岡子規)
(注)「いちはつ」は、「一初、鳶尾草」とも書くアヤメ科アヤメ属の多年草です。名前は、アヤメ属の中で一番先に咲くことに由来しています。
・罌粟(けし)ひらく髪の先まで寂しきとき(橋本多佳子)
・紫蘭(しらん)咲いていささかは岩もあはれなり(北原白秋)
・峠にはまだ雪消えず水芭蕉(みずばしょう)(滝井孝作)
・しやが咲いてひとづまは憶(おも)ふ古き映画(三橋鷹女)
(注)「しゃが」(Iris japonica)は、漢字で「射干、著莪、胡蝶花」などと書くアヤメ科アヤメ属の多年草です。
・しじみ蝶とまりてげんのしょうこかな(森 澄雄)
(注)「げんのしょうこ」は、下痢止めや胃腸病に効能がある薬草として有名で、名前の由来は、煎じて飲むとその効果がすぐ現れる(実際に効く証拠)ところからきており、漢字で「現(験)の証拠」と書きます。
・小(お)暗くて踊子草(おどりこそう)は木曾の花(中村明子)
・晩年の父の書やさしえごの花(関戸靖子)
(注)「えごの花」は「エゴノキ」の花のことです。つぶした実の果皮を舐めると喉が刺激されて「えぐい、えごい」感じがするので、この名が付きました。
・番傘に雨をはじきて菖蒲園(石原舟月)
・グラジオラス妻は愛憎鮮烈に(日野草城)
・驟雨(しゅうう)来て矢車草(やぐるまそう)のみなかしぐ(皆川盤水)
・原爆の地に直立のアマリリス(横山白虹)
・昼顔やレールさびたる旧線路(寺田寅彦)
・雫落ちて十薬(じゅうやく)の花またたきぬ(清崎敏郎)
(注)一般的には「ドクダミ(蕺)」の名で知られています。「十薬」はドクダミの生薬名です。
名前の由来としては、「十の薬効を持つ」「十の毒を消す」「重要な薬草(重草)」という三つの説があります。
・蛍袋(ほたるぶくろ)咲かせ兵士の墓一基(原田青児)
(注)「蛍袋」の名前の由来は、子供が虫籠代わりに釣鐘状の花に蛍を入れていたためという説と、釣鐘状の花が提灯に似ていて、提灯のことを「火垂る(ほたる)」と呼ぶためという説があります。
・咲き満ちて天の簪(かんざし)百日紅(さるすべり)(阿部みどり女)
(注)「さるすべり」は、幹の樹皮が滑らかでツルツルしており、これだと猿も滑り落ちるのではないかということからで、「百日紅(ひゃくじつこう)」は、花期が長く百日も咲き続けることからです。
・夾竹桃(きょうちくとう)燃ゆ広島も長崎も(関口比良男)
・抱かれ居る児の躍るなり凌霄花(のうぜんか)(幸田露伴)
(注)漢名の「凌霄(りょうしょう)」の「霄」は、空や雲という意味で、空を凌(しの)ぐように上へ上へと伸びていく(大きな株は高さ10m近くにまで達する)様子から名付けられました。和名の「のうぜんかずら」は、漢名の「りょうしょう」が「のうしょう」に変化し、さらに「のうぜん」に変化したとも言われています。
・花合歓(はなねむ)の夢見るによき高さかな(大串 章)
(注)「合歓(ごうかん)」は漢名で、夜に葉が重なり合うので「合歓」と書きます。和名の「ねむの木」は、夜になると葉を閉じる(就眠運動)姿が、眠っているように見えるので、古くから「ねぶ」と呼ばれ、中世から「ねむの木」と呼ばれるようになりました。
・夏椿(なつつばき)一輪が守(も)る虚子の墓(鈴木真砂女)
(注)「夏椿」という名前は、花や葉の形がツバキに似ており、夏に花が咲くことに由来します。「夏椿」は、別名「沙羅(しゃら/さら)」とも呼ばれます。これはインド北部に生えるフタバガキ科の「沙羅双樹(サラソウジュ)」(別名:シャラノキ)に似ているとされて、江戸時代中期に仏教の聖樹である沙羅双樹を夏椿にあてるようになったものです。
・ダリア切る生涯の妻足太し(清水基吉)
・睡蓮の白いま閉じる安堵かな(野津節子)
・揚羽蝶おいらん草にぶらさがる(高野素十)
・大事より小事重んじ日々草(伊丹三樹彦)
・淋しくもまた夕顔のさかりかな(夏目漱石)
・山荘の月見草恋ふ心あり(稲畑汀子)
・母の亡き夜がきて烏瓜(からすうり)の花(大木あまり)
・変哲もなし鷺草(さぎそう)も咲くまでは(福永鳴風)
・喪の席にゐて向日葵(ひまわり)を見てゐたり(保坂敏子)
3.秋の花の俳句
・鶏頭の十四五本もありぬべし(正岡子規)
・ある程の菊抛(な)げ入れよ棺の中(夏目漱石)
・ゆめにみし人のおとろへ芙蓉(ふよう)咲く(久保田万太郎)
・朝顔につるべ取られてもらひ水(加賀千代女)
・白粉花(おしろいばな)妻が好みて子も好む(宮津昭彦)
・撫子(なでしこ)につながる思ひいつも母(黒川悦子)
・ふつくりと桔梗のつぼみ角五つ(川崎展宏)
・吾亦紅(われもこう)信濃の夕日透きとほる(藤田湘子)
・露草の露千万の瞳かな(富安風生)
・母の忌に帰れず秋海棠(しゅうかいどう)を切る(大久保橙青)
・露地の空優しくなりて紫苑(しおん)咲く(古賀まり子)
・頂上や殊に野菊の吹かれ居り(原 石鼎)
・赤も亦悲しみの色曼殊沙華(まんじゅしゃげ)(中村芳子)
・木犀(もくせい)の昼はさめたる香炉かな(服部嵐雪)
4.冬の花の俳句
・山茶花(さざんか)の長き盛りのはじまりぬ(富安風生)
・茶の花に人里ちかき山路かな(松尾芭蕉)
・石蕗(つわぶき)咲いていよいよ海の紺たしか(鈴木真砂女)
・ポインセチア病窓といふ額縁に(清水衣子)
・人肌の日差(ひざし)とおもひ寒の梅(山上樹実雄)
・蠟梅(ろうばい)を無口の花と想ひけり(山田みづえ)
・水仙や寒き都のこゝかしこ(与謝蕪村)
・どの路地のどこ曲がっても花八ツ手(やつで)(菖蒲あや)