洗脳とは?マインドコントロールとどう違うのか?洗脳されやすい人の特徴とは?

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洗脳

2022年7月8日に安倍元首相が山上徹也容疑者によって狙撃され亡くなった事件が発端となって、「旧統一教会の日本人信者からの巨額寄付金受領と韓国への送金問題」や、「旧統一教会の霊感商法によって破産などの経済的破綻に追い込まれた信者やその家族を含む被害者の問題」、「自民党などの有力政治家と旧統一教会との深い関係」などが次々に明るみに出てきました。

ほかの新興宗教でもある話だと思いますが、旧統一教会による「マインドコントロール」や「洗脳」もクローズアップされてきました。

前に「旧統一教会の問題で話題になったマインドコントロールとは?」という記事を書きましたので、今回は、「洗脳」の意味についてわかりやすくご紹介したいと思います。

1.洗脳とは?洗脳とマインドコントロールとの違い

(1)洗脳とは

洗脳(せんのう)」brainwashing)は、強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせる(改造する)ことです。元々は共産主義社会における「共産主義への思想改造」を指します。

日本語の「洗脳」は英語の「brainwashing」の直訳であり、英語の「brainwashing」は中国語の「洗脑/洗腦」の直訳です。

中華人民共和国成立後、数年間にわたって旧体制の知識人など「反革命分子」とされた人々に精神的・物理的圧迫を加えて共産主義体制に適合する人間に思想改造する作業が繰り広げられましたが、こうした作業を中国外の反対者は、非難の意味を込めて洗脳(brain washing)と呼びました。

感覚遮断や賞罰の操作などの反復による学習の一つといえますが、その効果は永続的でない場合が多いといわれます。

その後、この言葉は、共産主義社会における強制的な政治的社会化を意味する用語として西側諸国に定着しました。第二次世界大戦後、ソ連の捕虜収容所に抑留されていた日本軍兵士の洗脳(「共産主義信奉」や「スターリン礼賛」など)が話題となったこともあります。

アメリカCIAが朝鮮戦争の捕虜収容所で行われた思想改造について報告書を提出したことをきっかけとして、またその後にジャーナリストのエドワード・ハンターが中国共産党の洗脳技法についての著書を著したことで広く知られるようになりました。

(2)マインドコントロールとの違い

マインドコントロール」(Mind control)は、操作者からの影響や強制を気づかれないうちに、他者の精神過程や行動、精神状態を操作して、操作者の都合に合わせた特定の意思決定・行動へと誘導すること・技術・概念のことです。

不法行為に当たるほどの暴力や強い精神的圧力といった強制的手法を用いない、またはほとんど用いない点で、「洗脳」とは異なります。

2.中華人民共和国における洗脳

朝鮮戦争で中国人民志願軍の捕虜となったアメリカ兵士が収容所で共産主義を信奉するようになったという報告がなされ、1951年には中国共産党による「洗脳」がエドワード・ハンターによってBrain-washing in Red China: the calculated destruction of men’s minds(直訳:中国共産党における洗脳:人間の精神の計画的な破壊。福田実による邦題は『洗脳 中共の心理戦争を解剖する』)が刊行されました。

エドワード・ハンターは、日本人捕虜や朝鮮戦争でのアメリカ人捕虜に対する中国共産党の「思想改造」における洗脳手法について、「勉強会」での「学習」、集団学習会での自己批判、巧妙な賞罰(犯罪を告白したものを賞賛し、告白しないものには同調圧力を加える)、罪の意識(罪悪感)を植え付けるなどの特徴を指摘しています。ハンターによれば、

(中国共産党による洗脳)は戦争である。心理戦ともいわれるが、「脳の戦争」と呼ぶ方が適切である。武器は身体に対して行われ、対象者を無能力にし、破壊する。一方で、精神に対する工作では、(それまでに持っていた)信念を転覆させてコントロールする。脳の戦争においては、対象者の考え方や、感情、気持ちを征服することが、最終的な勝利となる。— Hunter, Edward,BRAINWASHING: The Story of the Men Who Defied it,p.47

共産党は、教育、パブリック・リレーションズ、説得、または、誤解されている用語であるが、精神改革、再教育などの手法によって洗脳を行う。— Hunter, Edward,BRAINWASHING: The Story of the Men Who Defied it,p.5

毎日常に行われる勉強会では、「生徒」たちは、告白(認罪)作業を行います。広い部屋に収容されたグループは常に議論や、自己批判、告白を行うために集まることができるようにしています。

議論や討論は「民主的討論」と呼ばれ、満場一致が繰り返し求められるため、まだ告白を済ませていないものは疲弊し、次第に自分自身が行ったかのように思い込みます。

集団作業では、各人のそれまでの考え方をあらゆる点において点検させ、疲弊した心に、それらが明白に間違っていることを認めさせます。

「生徒」たちは、ただ一つの善と、それ以外の全ての悪とを分離し、理論的に説明され、転倒した段階において各人は「解放」されます。

洗脳の長期的目標は、改造を受けた「転向者」が、いつでもどこにいても、自立して反応するように仕向けることです。

個人の自由意思を野蛮であるとして非難します。そして、反対意見や事実を聞くことができなくなります。

洗脳は二段階で行われます。第一段階はコントロールを目的とした条件づけであり、抵抗力を弱めさせます。第二段階は、改心(転向)を目的として強化し、説得します。

学習と告白を引き出すための方法は、福音伝道や精神医学、科学から借用されたものです

学習と告白によって作られた服従は、洗脳の短期的目標であり、この段階ではまだ真の「生徒」ではありません。

真実のもので、透明なものとされる「学習」とは、中国共産党側の政治的教育のことです。「告白」(認罪)は、儀礼的統合です。

中国共産党による改造では、学習会の出席者は、個人の自我を保持することは、統制された全体の合意によって危険なものとされました。

朝鮮戦争は、アメリカの「かわいそうな朝鮮や中国」に対する戦争であると宣伝され、中国にいる人々は、その蛮行の目撃者であると思いこむようになりました。

ハンターは1958年3月13日の下院非米活動委員会で中国共産党の心理戦について報告しました

3.リフトンの研究

1954年~1955年に、香港で行った調査を基に、心理学者であるロバート・J・リフトン(ニューヨーク市立大学教授)は著書『思想改造の心理』の中で精神医学的観点から「洗脳」と言われる過程の分析を試み、中国共産党による「改造」(思想改造)「洗脳」を全体主義社会における心理として最も効果的な手段を持ったとしました。

リフトンによると、洗脳のテクニックには8つの要素があります。

  1. 環境のコントロール
  2. 密かな操作
  3. 告白儀式
  4. 純粋性の要求
  5. 「聖なる科学」
  6. 教義の優先
  7. 特殊用語の詰め込み
  8. 存在権の配分

しかし、洗脳の効果についてリフトンは、帰国後、元捕虜が共産主義者として活動したのは一部であることなどから、洗脳プログラムは失敗である、としました。

4.撫順戦犯管理所における日本人捕虜の「改造」

第二次世界大戦が終了した1945年、日本人捕虜の一部はソ連の極東シベリア(ハバロフスク)地区捕虜収容所に監禁されました。

シベリアで日本人捕虜は、厳寒のなか強制労働、飢餓、取り調べ、旧日本軍の民主化運動で批判されるなど苦しみました

1950年7月には、前年に成立した中華人民共和国の撫順戦犯管理所に日本人捕虜が移管されました。手厚い対応を行い、十分な食事が与えられ、強制労働もありませんでした。

「正しい思想を正しい方法で教育すれば人間は変わる」という毛沢東の「改造」政策によって、捕虜は毎日、学習や運動をして過ごしました。

日本人戦犯の「改造」教育課程は、三段階となっており、

  1. 反省学習(マルクス主義や毛沢東思想の学習)
  2. 罪行告白(坦白(たんぱい))
  3. 尋問

となっていました。

1956年には瀋陽の最高人民法院特別軍事法廷で起訴され、被告全員が罪を認め謝罪し、翌1957年に帰国してから日本で中国帰還者連絡会を創立し、加害証言活動と謝罪活動を行いました

秦郁彦は、日本人捕虜の「認罪」過程を洗脳として供述書の信憑性に注意すべきであるとしました。また、小林よしのりは、中国側の「思想改造教育」を自己啓発セミナーやカルト宗教の洗脳システムそのものと批判しました。

一方、ジャーナリスト新井利男は「天皇崇拝思想・軍国主義思想に洗脳されていた戦犯たちが、自らそのマインドコントロールを解き放ち、精神の自由を取り戻して罪を告白」したと評価しています。

『週刊金曜日』は撫順戦犯管理所での認罪を「『人類の解放』という理想を体現した世界でも希有な歴史的事実」と絶賛しました。

古海忠之と城野宏の対談『獄中の人間学』で城野は「もともと洗脳などされるわけもないし、実際にやられてもいない。中国共産党もそれほど馬鹿じゃありませんよね(笑)」「ぼくも帰国したときに、新聞記者たちに洗脳されたのではないかという質問を受けましたよ。だから、洗脳とはどういう意味だ、シャンプーで頭髪を洗うことかと言ったら、思想を矯正して共産党員にすることだと言う。答えてやりましたよ、それは実に簡単なことで中国で矯正されて共産党員になるくらいなら、日本の警察で矯正を受ければ、すぐにハイ、やめます、と言うことになるだろう。そんな馬鹿なことをやる毛沢東だったら、おれは戦争に負けておらん(笑)。そう言ってやった」[72-73ページ]と記載されています。当事者の弁です。

5.新疆ウイグル再教育キャンプにおける「人格改造」

2010年代から中華人民共和国は新疆ウイグル自治区の強制収容所(新疆ウイグル再教育キャンプ)で何十万人もの人間に対して組織的な「洗脳」「人格改造」を行っていると報じられています

2019年11月に国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公開した中国政府の文書とされるチャイナ・ケーブルによれば、監視カメラや携帯電話などから個人情報を収集してアルゴリズム解析する「一体化統合作戦プラットフォーム」(IJOP)による人工知能(AI)と機械学習を利用したプレディクティブ・ポリシングでウイグル人を選別して予防拘禁し、

  • 徹底的な生活行動の管理と脱走の防止
  • 悔悛と自白の強要
  • 言語の矯正
  • 点数による賞罰

などが収容所では指示されています。

また、薬物を投与して囚人をコントロールする試みも行っているという証言もあります。

世界ウイグル会議の顧問弁護士ベン・エマーソンは「ひとつの民族全体を対象とする巨大な集団洗脳計画以外の何かだとみなすのは、非常に難しい」と述べています。

6.洗脳されやすい人の特徴

(1)自分が洗脳されている自覚がない

洗脳されている人は、自分が洗脳されていると自覚がないケースが多いです。

もし洗脳されていることを誰かから心配されても、「自分は洗脳なんてされていない」と認めないでしょう。

さらに、指摘してきた相手の方が洗脳されていると思う人もいるかもしれません。

自分が正しいことをしていると思い込んでいるので、洗脳を疑わないのでしょう。

(2)全てを信用しきっている

洗脳されている人は、何も疑うことなく全てを信用しています。

よく言えば「お人好し」とでも言えるのかもしれませんが、他人を疑うことを知らない人は相手の演技に素直に騙されてしまう可能性が高いです。

自分のこともよく知らないのにいつも親切にしてくれる人というのは、何か目的があるケースもあるのです。

恋愛で言えば好意があるということになりますが、今回のテーマで言えば、商品を売りつけたいとか宗教に勧誘したいとか、そういう目的があって近づいてきていると考えることができます。

全てを信用している人というのは、他人を疑うことが悪いことであると思っている傾向にあります。

確かに不必要に他人を疑う必要はないのかもしれませんが、自分の身を守るために周囲を警戒し、近づいてきた人に対して警戒心を抱くのは、決して悪いことではありません。

ですから、自分に調子よく近づいてくる人がいた場合、親しく話をするのは構いませんが、ある程度の距離は置きつつ、しっかり様子をうかがってから近づくクセをつけたいものですね。

(3)ストレスを抱えている

洗脳されている人は、日常にストレスをたくさん抱えている場合があります。

なぜなら、ストレスがかかると人の心はどんどん弱くなっていってしまいます。

この弱った状態の時こそ洗脳されやすいのです。

これは、肉体的にも精神的にも同じですが、どちらも疲労すると脳が正常に機能しなくなります。

ですから、洗脳しようと思っている人は、どんどんとその人を疲労させようとしてくると言われています。

可能な限り一緒にいて他の人と会う時間を減らしたり、寝不足にさせられたりするのです。

そうすると、だんだん脳が正常に機能しなくなり、その人の言うことを簡単に信じてしまうようになります。

ですから、ストレスを抱えたまま解消出来ずに日々を過ごしている人は、洗脳する側からしてみれば、洗脳しやすい格好の獲物になってしまうのです。

(4)危機感がない

洗脳されている人は危機感が足りないことが多いです。

なぜ危機感がないのかというと、社会経験が少なかったり、世間知らずなことも原因になりえます。

例えば、オレオレ詐欺が流行った頃を振り返るとよくわかります。

オレオレ詐欺がニュースになる前は、かなりたくさんの高齢者が騙され、お金を取られていました。

しかし、ニュースで頻繁に放送するようになってからは、「もしもし、俺だけど」のセリフに警戒心をみんなが抱くようになり、引っかかる人は減少傾向になりました。

しかし、それでもまだ高額なお金をだまし取られる人もいたのです。

その人たちはなぜ全く同じ手口で騙されてしまったのかというと「ニュースを見ていなくて、こんな詐欺があると知らなかった」からなのです。

知らないということは、自分も騙されるのではないかという危機感すらないということです。

社会経験が少ない、持っている情報が少ない人は、一般的に見て「絶対詐欺でしょ」と普通の人なら警戒するところを、警戒心を抱くことが出来ない場合が多いです。

「これは危険だぞ」というアンテナが非常に低いのですね。

ですから、明らかに引っかけようとする言い回しをしていても、相手に言われるがままに行動してしまうのです。

自分を守るためには、それなりに情報収集しようという心がけが大切です。

(5)自分は大丈夫と思っている

洗脳されている人は、自分だけは大丈夫と思っています。

まさか自分が騙されるわけないと思っていると、いざ騙す人が近づいてきた時に怪しい雰囲気を察知することが出来ません

日々ニュースで流れている事件と自分のご近所付近は別次元のものであると思い込んでいるのでしょう。

自分のためだけにあっさりと人を騙したり裏切ったりする人が世の中にいることは知っていても、それが自分の身近にいる可能性があることは考えていません。

むしろ何の根拠もないのですが、絶対に自分の周りにはいないと思い込んでいます。

(6)神秘的なものを信じている

洗脳されている人は、霊の存在やオーラ、守護霊、ご先祖様などの神秘的なことを信じている場合が多いです。

もちろん、信じていけないというわけではありませんし、ご先祖様は大事にしなければいけません。

しかし、こういう神秘的な内容は、何でもありの状態に陥ってしまうため洗脳されやすくなってしまいます。

世の中のことや、自分の身の周りに起きた出来事を全て運命や霊の仕業にしてしまうことが出来るので、洗脳する側から見たら、その話題さえ出せば、簡単に高額商品を買ってくれる良いお客様になってしまいます。

また、自分自身に不満や弱さがある場合でも、自己で解決しようとは思えなくなり、代わりに念のこもったアクセサリーを身につけるだとか集団で集まってお祈りをするだとかという常識的ではない方向に傾倒していきがちです。

(7)自分の軸がない

洗脳されている人は、自分の考えを持たず、常に人の意見を参考にしている傾向にあります。

自分の軸(プリンシプル)がないとは、自分の考えがないこと、自分で物事を判断することが出来ないということになります。

そのため、流されやすく誰かに頼った生活が当たり前になっている人も多いです。

もしその頼りにしている人があなたを洗脳しようとしてきた場合、もうそこから抜け出すことは難しいでしょう。

しかし、自分の意思をちゃんと持っていれば、「なんか変だぞ」と思った段階で抜け出すことができます。

人が良いと言えば自分も良いと思ってやる。人がダメだと言ったら自分もすぐにやめる。

これではどんどんと騙す人に引きずり込まれて洗脳されてしまいます。

人に意見を求める前に、自分はどうしたいのか、自分が正しいと思うことはどんなことかということを、少しでいいので考えてから人に相談するように日頃から練習していかないといけませんね。



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