私は外国語学習としては英語とドイツ語を習いましたが、必ずしも上達したとは言えません。
欧米欧米人には今でもアジア系民族への人種差別意識が根強くありますが、彼らから英語で揶揄されても岡倉天心のように、当意即妙に英語で応酬することは私にはできません。
語学の天才か帰国子女でもない限り、英語の微妙なニュアンスまで体得することは至難の業です。
我々日本人としてはそんな無理なことに挑戦するよりも、俳句の季語のような豊かで細やかな日本語、美しい日本語をもっと深く知るほうがよほど易しいし、気持ちを豊かにしてくれると思います。
これまでにも、「四季の季節感を表す美しい言葉(その1「春」)」「四季の季節感を表す美しい言葉(その2「夏」)」「四季の季節感を表す美しい言葉(その3「秋」)」「四季の季節感を表す美しい言葉(その4「冬」)」などで多くの季語をご紹介して来ましたが、まだまだ美しい季語があります。
五回目は「冬」の季語をご紹介します。
・初霜(はつしも)
冬になってはじめて降りた霜のことです。庭や畑に初霜を見つけた時には、冬の到来を強く感じます。
<例句>初霜に負けて倒れし菊の花(正岡子規)
・十日夜(とおかんや)/亥の子(いのこ)
「十日夜」は主に東日本で行われる収穫祭の一つです。陰暦10月10日に、子供らが歌を歌いながら藁鉄砲で地面を打ち回ります。
「亥の子」も収穫祭で、主に西日本で行われます。陰暦10月の亥の日に餅つきをして「亥の子餅」を作り祝います
この日に田の神が山へ帰るとされ、新米で作った餅などを供えたり、子供たちが藁束で地面をたたいて村中を回ったりしたのです。
<例句>十日夜星殖え子らに藁鉄砲(大野林火)
・帰り花(かえりばな)
初冬、小春日のころに返り咲く花を言います。桜・桃・梨・山吹・つつじなどに多く見られる現象です。思いがけなく、ニ・三輪咲いた健気(けなげ)な花に、やがて来る厳しい冬を思いやるのです。
<子季語>返り花、帰咲、二度咲、忘花、狂花、狂咲
<例句>かへり花暁の月にちりつくす(与謝蕪村)
・朴落葉(ほおおちば)
冬になり錆び色に枯れて落ちた朴の葉のことです。朴の葉は大きく、その落ち葉も迫力があります。山などで、壊れずにきれいに落ちたものを見かけると、まるでオブジェのようです。踏むと、大きな音が冬の山に響きます。
<子季語>朴散る
<例句>朴落葉して洞然と御空かな(川端茅舎)
・焼藷(やきいも)
焼藷(焼芋)は、サツマイモを焼いた食べ物です。寒くなれば、よく焼藷が売れるようになります。サツマイモは、琉球から薩摩に1705年に伝わりました。
<子季語>焼芋屋、石焼芋、壺焼芋
<例句>ふところの焼芋のあたたかさである(尾崎放哉)
・懐炉(かいろ)
外出の際などに懐に入れて体を温める携帯器具です。昔は熱した石を布に包んだ温石や、懐炉灰や揮発油を用いるタイプがしたが、今は振ると熱くなる「使い捨てカイロ」が主流です。長時間、直接肌に当てると、低温火傷を引き起こすので注意が必要です。
<子季語>懐炉灰、懐炉焼、紙懐炉
<例句>三十にして我老いし懐炉かな(正岡子規)
・角巻(かくまき)
雪国の女性の外出時に着用する防寒着です。大形の四角い毛布を三角に二つ折りにしてマントのように羽織り、上半身をすっぽりと包みます。
<例句>角巻のもたれあひつゝ二人行く(阿波野青畝)
小柳ルミ子のヒット曲「雪明りの町」にも出てきましたね。