コロナ禍で運動不足になるのを解消するために、毎日30~40分ほど散歩するようになりました。晴れた日は燦燦と降り注ぐ太陽の光を浴びて、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」を感じながら気持ちよく歩きます。また青空も、嫌なことを忘れさせてくれて大変爽快な気分になります。また、朝焼けや夕焼けも美しいものです。
「青空」や「朝焼け・夕焼け」については、「空はなぜ青色なのか? 空の色の不思議(その1)」「日の出や日没の空はなぜ赤色に見えるのか?空の色の不思議(その2)」という記事を書きましたので、ぜひご覧ください。
ところで、皆さんは「薄明(はくめい)」という不思議なグラデーションの空の色になる時間帯のことをご存知でしょうか?
また薄明に見られる「焼け空」や「ブルーモーメント」「ビーナスベルト」という空の色をご存知でしょうか?
今回はこれについてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.「薄明」「マジックアワー」とは
「薄明(はくめい)」とは、日の出前や、日の入り後の、空がうっすら明るい時間のことです。魔法のように美しい空が見られることから「マジックアワー」とも呼ばれます。
この時間帯は、太陽が地平線の下に隠れていて影がなくなるため、幻想的な空の写真が撮れます。
2.「薄明」の三分類
薄明は太陽の高さによって「天文薄明」「航海薄明」「市民薄明」の3つに分類されています。
朝は「天文薄明」→「航海薄明」→「市民薄明」の順にやってきて、日の出を迎えます。
夕方は日の入り後に「市民薄明」→「航海薄明」→「天文薄明」の順にやって来ます。
(1)「天文薄明」
太陽が地平線からマイナス18度からマイナス12度までの位置にある時間帯です。
「天文薄明」は、肉眼で6等星(*)が見えないくらいの明るさです。
(*)6等星とは、暗い夜空でようやく見える星のことです。
(2)「航海薄明」
太陽が地平線からマイナス12度からマイナス6度までの位置にある時間帯です。
「航海薄明」は、海と空の境目を確認できるくらいの明るさです。
(3)「市民薄明」
太陽が地平線からマイナス6度から0度までの位置にある時間帯です。
「市民薄明」は、我々が照明なしに外で活動できるくらいの明るさです。
3.薄明の「焼け空」「ブルーモーメント」と「ビーナスベルト」
(1)夕焼け空の変化
薄明の時間にはきれいな「焼け空」が見られます。下は夕焼けをとった写真ですが、わずか10分くらいでこんなに色が変わりました。
日が沈むと空は赤くなりますが、これは光の散乱のしかたが、昼間と夕方で変わるからです。
朝や夕方の太陽は低いところにあって、大気中を通る太陽光の距離が昼間より長くなります。そうすると、青い光は途中で散乱しきって、散乱しにくい赤・オレンジ・黄の光が目立ってくるわけです。
雲がある方がよく空が焼けるのは、雲の中で光が散乱すると、光が我々の目に届くまでの距離が、直接届く時よりも長くなり、距離が長くなるほど、散乱しにくい赤い光だけが残っていくからです。
(2)ピンク色・紫色の焼け空
太陽の方向にうすい雲がかかっていたりすると、ピンク色や紫色の焼け空が見られることもあります(上の写真)。
太陽が沈むと、空は赤くなりますが、空の高いところでは、まだ生き残っている青い光が散乱しているので、青くなっています(下の写真)。
確かに空が青い部分と赤い部分に分かれています。ここにうすい雲がかかると、雲の中で光が散乱して色が混ざるのです。
つまり、赤い光と青い光が混ざって、ピンク色や紫色になるのです。ちょうど「すりガラス」を通して見たときのように、色が混ざって見えます(下の写真)。
(3)ブルーモーメント
「市民薄明」と「航海薄明」をまたぐ時間には、「ブルーモーメント」という深い青色の空が見られることもあります(下の写真)。
これは「群青色(ぐんじょういろ)」(ウルトラマリン)と言うのでしょうか、昼間の空よりも黒っぽい深い青色ですね。昼間の空は、青以外の光も散乱しているため白っぽい青色(スカイブルーやライトブルー)に見えます。
一方ブルーモーメントは、地平線の下に隠れている太陽の光が空の高いところにあたっていて、そこでは散乱しやすい青い光くらいしか散乱していないため、深い青色になるのです。
この色が見えるのは5分か10分くらいで、ブルーモーメントの色も時間とともに変化していきます。
(4)ビーナスベルト
晴れた日の「市民薄明」の時間に、太陽と反対側の空を見ると、下の写真のような空が見えることもあります。
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ピンク色の空があり、その上には青い空があって、ピンク色の部分が帯のように見えることから「ビーナスベルト」と呼ばれています。下に見える濃い青は「地球の影」です。
太陽の光がとどいていない地平線に近い空に地球の影ができるのです。これは遠くのほうの夜の色です。遠くの夜の空が見えるなんて、ワクワクしますね。
ところで、その上にピンク色の帯ができるのはどうしてかというと、朝焼け・夕焼けが赤くなるのと同じで、大気中を通る太陽光の距離が長いため、空に赤い光だけが残るのです。
ではなぜ赤い空にならないのかというと、赤い空の後ろには地球の影があり、それより上の高い空では青い光が散乱して青っぽい色になっているため、混ざってピンク色に見えるというわけです。
赤と青がまざるのは、前に紹介したピンク色や紫色の焼け空と似ていますね。
ビーナスベルトの色には雲は関係ないのかというと、ビーナスベルトは、雲がないほうがはっきり色が分かれて見えやすいです。
太平洋側なら特に冬が狙い目です。空が乾燥していて水蒸気が少なく、雲が出にくいからです。しかし季節を問わず、晴れている日に見通しの良いところならどの地域でも見えます。
「薄明」(マジックアワー)は「ほんのひとときの魔法のような時間」です。
たまにはゆっくり空を見上げて、不思議な色の空を楽しんでみてはいかがでしょうか?