1.ハンミョウ
「道をしへ跳ね跳ね昭和永きかな」(平畑靜塔)「草の戸を立出づるより道をしへ」(高野素十)
「斑猫」と書いても、「まだらねこ」「ぶちねこ」のことではありません。ハンミョウは、おさむし(筬虫)科に属する甲虫で、「道教え」とも呼ばれています。
季節外れの話題で恐縮ですが、昆虫好きの私の夏の日の思い出話です。
夏休みのある暑い日の昼下がり、入道雲がもくもくと大きくなったので、よく見ようと裏庭へ出ると、水たまりに見たこともない光沢のある小さな虫がいました。それがハンミョウとの最初の出会いです。綺麗な虫だなという印象でした。
その後、父と一緒に摂津峡へカブトムシやクワガタムシを捕りに行った時、我々が行く山道の前をぴょんぴょんと飛び跳ねて行く虫がいました。父が「あれは道教えや」と教えてくれました。確かに道案内するように、我々が少し進むとまた先に進みます。昔の人は斑猫を「道教え」と呼んだのですが、この虫の習性・特徴をよく表していると感心しました。
2.カミキリムシ
「髪切蟲逆髪立てて風に飛ぶ」(山口誓子)「きりきりと髪切蟲の晝(ひる)ふかし(加藤楸邨)「くらがりに捨てし髪切蟲が啼く」(橋本多佳子)
「カミキリムシ(髪切虫)」を「噛み切り虫」とか「紙切り虫」と勘違いしている方が多いかも知れませんが、間違いです。カミキリムシは「鉄砲虫」とも呼ばれ、木に穴を開けて卵を産み、その木を枯らしてしまうこともある害虫なので、嫌われ者かも知れません。よく「松くい虫」の被害で松の木が枯れたという話を聞きますが、「松枯れ」の原因は「マツノザイセンチュウ(松材線虫)」という線虫が原因の伝染病ですが、それを媒介するのが「マツノマダラカミキリ(松斑天牛)」です。カミキリムシは「天牛」とも書きますが、これは長い触角を牛の角になぞらえたものです。
私が最初に出会ったカミキリムシは、校庭の柳の根方にいた「ゴマダラカミキリ(胡麻斑髪切)」です。捕まえると「キーッ、キーッ」と悲しげな鳴き声を出します。口の左右に鋭い歯がありますので、噛まれると痛いです。ですから、口に髪の毛や小さな枝を持って行くと、噛み切ってしまう訳です。
例によってカブトムシやクワガタムシを捕りに摂津峡へ行った時、櫟の木の上の方に黄土色をした虫がいたので捕まえて見ると、「ミヤマカミキリ(深山髪切)」でした。
これはゴマダラカミキリよりも大型ですが、あまり面白みがないので、すぐ放してやりました。
他に「シロスジカミキリ(白筋髪切)」を見つけたこともあります。これは図鑑で見ると確かに白色の斑点があるのですが、生きている実物は黄色の斑点でした。しかし、死んでしまうと斑点が白く変色しました。シロスジカミキリは正面から見ると、複眼が異様に大きく、その後テレビで放映されていた「仮面ライダー」の顔にも似ていました。
3.昆虫採集ブームの復活を願う
大の昆虫好きで知られる香川照之さんが「カマキリ先生」(カマキリの着ぐるみをかぶって登場)としてMCを務めるNHK教育テレビ「香川照之の昆虫すごいぜ!」という番組(不定期の放送)があります。このような番組をきっかけにして昆虫好きの子供が増えればいいなと思っています。
昆虫と触れ合うことは、自然に親しむという意味でとても意義のあることです。業者によるオオクワガタの乱獲は問題ですが、子供が昆虫採集をする程度では、昆虫が絶滅しないかと心配する必要は全くないと私は思います。
小学生のお孫さんやお子さんをお持ちの方は、来年の夏、ご一緒に昆虫採集に出掛けられてはいかがでしょうか?ご自分の少年時代の体験をお話されるのも良いかも知れませんね。
今回もとりとめもない思い出話でしたが、昆虫に少しでも興味をお持ちの方には何か参考になるのではないかと思い、書いてみました。